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第二章
その宝物は僕のもの
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僕が今まで触れてきたもので、彼女の声ほど、その瞳ほど、絶対的で尊いものはない。僕の呼びかけに声を弾ませ僕の視線に瞳を輝かせるその愛らしさが、僕は何よりも好きだから。
「ジル様? どうかなさいましたか?」
少し考え事をしているだけで、彼女は僕の顔を不安そうに覗き込んでくる。ああ、本当に可愛い。
「何でもないよ。ソフィアがどうしてこんなに可愛く生まれてこられたのか考えていただけだ」
ほら、僕がソフィアへの愛しさをぶつけるだけでこんなに真っ赤になる。こんな魅力的なのだもの、どうかこの先も君の色々な表情を見るのは僕だけであってほしいな。
「テソロ(僕の宝物)、これから先も、ずっと僕のそばにいるんだよ」
「もちろんです。わたしのすべてはジル様のものですから」
「……そうだね」
ソフィアはいつでも良い子で、可愛くて、一緒にいたくない日は一日だってない。でも、たまに僕の理性を試すようなことを言ってくる節があるのだけは少しだけ恨めしい。まだ十歳なのにどこでそんな煽り方を覚えたのだろう。
「ソフィア、もう今から覚悟しておいて。君が成人する日は絶対に君を逃さないから」
どこからとか、どうしてとか、詳しいことは言わずに笑って濁す。そんな僕の表情に何かを感じ取ったのか、ソフィアは照れたように俯き胸元のリボンを弄った。
「ソフィア、返事はないのかい?」
「……はい」
「良い子だ。大好きだよ、僕の大切な宝物」
彼女が貴族でなくて、そして他の家の召使いでなくてよかった。君をずっとそばに置いていられるのは、彼女が貴族ではなくこの家の、僕の付き人だからだ。将来的に彼女は沢山の男から求婚されたりするのだろう。でも、僕にはソフィアを手放すつもりはさらさらない。たとえ相手が王子であっても、彼女だけは渡さない。いや、それ以前にソフィアが僕から離れたがるとは思えない。
「ソフィア、おいで」
離れたがるとは思えないのだけどどうしても確認したくなる時はあって、そういう時は腕を広げてみせる。そうすれば彼女は眩しいくらいの笑顔を浮かべて僕に抱きついてきてくれるのだ。そして、そんな彼女を抱きしめ返し幸せに浸っている時に限ってあいつが訪ねてきたりする。
「見せつけてくれるよなあ、本当」
「アドレイ……少しは空気を読んでくれるかな」
「悪いがそれは無理だ。二人の仲睦まじい姿を見るのが俺の趣味みたいなものだからな。おはよう、ソフィア」
この男、アドレイは僕の親友で、生まれた時からと言っても過言ではないほど昔からの付き合いだ。真面目で誠実、騎士道精神を地で行くような奴なので誰よりも信用している。
そんな男ではあるがソフィアに関しては別だ。アドレイがソフィアに特別な感情を抱いていることは、ソフィアとアドレイの初対面の時から察している。それでも僕達の仲を邪魔するわけでもなく、それどころか今みたいなことを言い出したりするので追い払うわけにもいかない。いっそのこと、あからさまにソフィアに言い寄ってくれれば思い切り遠ざけられるのに。
「アドレイ、ソフィアは僕のものだからね」
明るい声音と晴れやかな笑みで僕が言うと彼は呆れたように肩をすくめ、すぐに苦笑を浮かべた。
「分かっているさ、そんなことは。だがな、お前も少しは隠さないと、いつかソフィアに嫌われるぞ」
そんなはずはないよ、アドレイ。ソフィアは僕の独占欲にも執着心にも気が付いている。だから外で同年の男に会っても、社交辞令程度の薄い笑顔しか見せない。まあ、僕のこの感情がどれほど重いかは知らないと思うけれど。
「ソフィアはそんなことで嫌わないよ。ね、ソフィア?」
ソフィアを潰しかねないほどに重い感情はベールに包んで、腕の中にいるソフィアの顔を覗き込む。彼女は一瞬キョトンとした後で、これが答えですと言わんばかりの笑顔で僕を抱きしめてきた。
「分かったよ、俺が悪かった。ところでジル、今度俺の父が主催するパーティーについて相談があるのだが、乗ってもらってもいいか?」
「へえ、君の家でパーティーかい? 珍しいね」
ソフィア以外の話ならいくらでも歓迎だ。アドレイの為ならなんだって相談に乗ってやるさ。
アドレイにソファーに座るよう促し、僕とソフィアは反対側に腰掛ける。そこからは極めて平和で、親友同士らしい時間を過ごしたのだった。
ねえソフィア、君はどこにいたって、ずっと僕の宝物だよ。
「ジル様? どうかなさいましたか?」
少し考え事をしているだけで、彼女は僕の顔を不安そうに覗き込んでくる。ああ、本当に可愛い。
「何でもないよ。ソフィアがどうしてこんなに可愛く生まれてこられたのか考えていただけだ」
ほら、僕がソフィアへの愛しさをぶつけるだけでこんなに真っ赤になる。こんな魅力的なのだもの、どうかこの先も君の色々な表情を見るのは僕だけであってほしいな。
「テソロ(僕の宝物)、これから先も、ずっと僕のそばにいるんだよ」
「もちろんです。わたしのすべてはジル様のものですから」
「……そうだね」
ソフィアはいつでも良い子で、可愛くて、一緒にいたくない日は一日だってない。でも、たまに僕の理性を試すようなことを言ってくる節があるのだけは少しだけ恨めしい。まだ十歳なのにどこでそんな煽り方を覚えたのだろう。
「ソフィア、もう今から覚悟しておいて。君が成人する日は絶対に君を逃さないから」
どこからとか、どうしてとか、詳しいことは言わずに笑って濁す。そんな僕の表情に何かを感じ取ったのか、ソフィアは照れたように俯き胸元のリボンを弄った。
「ソフィア、返事はないのかい?」
「……はい」
「良い子だ。大好きだよ、僕の大切な宝物」
彼女が貴族でなくて、そして他の家の召使いでなくてよかった。君をずっとそばに置いていられるのは、彼女が貴族ではなくこの家の、僕の付き人だからだ。将来的に彼女は沢山の男から求婚されたりするのだろう。でも、僕にはソフィアを手放すつもりはさらさらない。たとえ相手が王子であっても、彼女だけは渡さない。いや、それ以前にソフィアが僕から離れたがるとは思えない。
「ソフィア、おいで」
離れたがるとは思えないのだけどどうしても確認したくなる時はあって、そういう時は腕を広げてみせる。そうすれば彼女は眩しいくらいの笑顔を浮かべて僕に抱きついてきてくれるのだ。そして、そんな彼女を抱きしめ返し幸せに浸っている時に限ってあいつが訪ねてきたりする。
「見せつけてくれるよなあ、本当」
「アドレイ……少しは空気を読んでくれるかな」
「悪いがそれは無理だ。二人の仲睦まじい姿を見るのが俺の趣味みたいなものだからな。おはよう、ソフィア」
この男、アドレイは僕の親友で、生まれた時からと言っても過言ではないほど昔からの付き合いだ。真面目で誠実、騎士道精神を地で行くような奴なので誰よりも信用している。
そんな男ではあるがソフィアに関しては別だ。アドレイがソフィアに特別な感情を抱いていることは、ソフィアとアドレイの初対面の時から察している。それでも僕達の仲を邪魔するわけでもなく、それどころか今みたいなことを言い出したりするので追い払うわけにもいかない。いっそのこと、あからさまにソフィアに言い寄ってくれれば思い切り遠ざけられるのに。
「アドレイ、ソフィアは僕のものだからね」
明るい声音と晴れやかな笑みで僕が言うと彼は呆れたように肩をすくめ、すぐに苦笑を浮かべた。
「分かっているさ、そんなことは。だがな、お前も少しは隠さないと、いつかソフィアに嫌われるぞ」
そんなはずはないよ、アドレイ。ソフィアは僕の独占欲にも執着心にも気が付いている。だから外で同年の男に会っても、社交辞令程度の薄い笑顔しか見せない。まあ、僕のこの感情がどれほど重いかは知らないと思うけれど。
「ソフィアはそんなことで嫌わないよ。ね、ソフィア?」
ソフィアを潰しかねないほどに重い感情はベールに包んで、腕の中にいるソフィアの顔を覗き込む。彼女は一瞬キョトンとした後で、これが答えですと言わんばかりの笑顔で僕を抱きしめてきた。
「分かったよ、俺が悪かった。ところでジル、今度俺の父が主催するパーティーについて相談があるのだが、乗ってもらってもいいか?」
「へえ、君の家でパーティーかい? 珍しいね」
ソフィア以外の話ならいくらでも歓迎だ。アドレイの為ならなんだって相談に乗ってやるさ。
アドレイにソファーに座るよう促し、僕とソフィアは反対側に腰掛ける。そこからは極めて平和で、親友同士らしい時間を過ごしたのだった。
ねえソフィア、君はどこにいたって、ずっと僕の宝物だよ。
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