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17.決闘
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夕刻。すでに日が沈み始め、夕日の色に染められた城内に長い影が落ちている。
噴水のある広い中庭には、話を聞きつけたメイドや執事、兵士たち、多くの観客で賑わっていた。吹き抜ける冷たい風とは裏腹に、中庭は異様ともいえる熱気に包まれていた。
その中心では、二つの人影が対峙している。
「空腹以外の言い訳は考えてきましたか」
静かに佇み皮肉を言うシーナに、ルーチェはにやりと笑った。
「あんたも、無様な負けを披露しても側近の面目が保てるよう、毎日真面目に働いてるんだろうな」
ルーチェは剣を構える。魔王討伐のために装備していた封魔の剣ではない。この城を守る兵士が使っている普通の剣だ。
対等に戦える舞台をあつらえてもらえたのは好都合だ。魔王の右腕であるシーナを倒せば、今自分が置かれている立場も変わるはず。単に、歯がゆい思いを感じ、焦っていた現状や苛立ちを発散したいだけかもしれないが関係ない。
ルーチェは柄を握る手に力を込めた。
「相手から一本取ったほうが勝ちだ」
二人の間で右手を掲げ、ソティラスが言う。
「相手に降参だと言わせてもいい。殺しはするな。それ以外、特にルールはない。周りに被害が及ばぬよう、魔法で防壁を張っているから存分にやりあうといい。攻撃方法も自由だ。それでいいな?」
最終確認に、ルーチェ、シーナ、共に頷く。ソティラスも頷き、掲げた右手を振り下ろした。
「始め!」
声と同時にルーチェはすばやくシーナとの距離を詰めた。詠唱する暇を与えないためだ。
シーナは外部との連絡に強力な魔法を用いていたことから魔道師なのだろうとルーチェは見ていた。
(接近戦に持ち込めば、詠唱が必要な魔道師相手には有利だ。このまま一気にケリをつける!)
ルーチェはシーナの右肩に剣を振り下ろす。痛めつける必要はない、降参だと言わせればいい。口を塞いで詠唱できないように封じ込め、戦闘続行不可能の状態に持ち込めば終わりだ。
相手の肩を切りつけるルーチェの刀身だったはずだが、しかし甲高い金属音が響いた。いつの間に取り出したのか、シーナの右手には短剣が握られていた。かすり傷すらつけられなかったものの、体勢が僅かに崩れている。
ルーチェはその隙を見逃さなかった。攻撃の手を緩めない。鋭い一振りを与えるたび、シーナは短剣の切っ先でぎりぎりを交わしていく。
激しい攻防に観客が沸いた。側近が押されていることに対する悲鳴も混ざっている。が、ルーチェにはそんなこと関係ない。
(このまま押し切れる……! 魔王の側近を倒し、魔王討伐の足がかりにするんだ)
頭部への鋭い一線を寸でのところで躱すシーナ。帽子が落ち、獣の耳が露になる。
(っ、いける。魔族相手だといっても、一対一なら負けてねえ!)
じりじりと追い詰めていく感覚に、ルーチェは手ごたえを感じた。
やはりシーナは魔道師で物理攻撃は得意ではない。ルーチェが詠唱を封じてくるとは読んでいたものの、接近戦での実力差は埋まらず、斬撃を防ぐので精一杯なのだ。
勝利を確信し始めたルーチェは、焦りや悔しさで顔をゆがませるシーナを見ようとしたが、違和感に気付く。
(なんだ……、なんで、変わってないんだ……?)
シーナの表情は普段と同じ。涼しげな表情を浮かべ、ただ淡々と仕事をこなすように、まるで訓練兵の実力を確かめているような――
「……っ」
ルーチェは動揺し、その気持ちの揺らぎで、ほんの僅か手元が狂った。シーナはその隙を見逃さなかった。ルーチェの斬撃をいなして交わすのではなく、短剣で鋭く弾いた。
「ッ!」
「――勇者様の実力がどの程度なのかと様子を見ていましたが、その程度なのですね」
シーナが眼前から消えた。――下だ。
ルーチェは反射的に反応し、もぐりこんで左脇腹を切りつける一線を、寸でのところでかわした。二手目の刺撃範囲外の左側にルーチェは避けたが、シーナは左手をルーチェに向かって振り下ろした。
「――くッ!」
右腕に熱を感じたかと思うと、地面に血が飛び散った。シーナの何もないはずの左手に握られているのは短剣だった。二刀流だ。知覚したのも束の間、獣のような素早い刺撃が左右からルーチェを襲う。目にも留まらぬ猛攻にかつてないほど観客が歓声を上げた。人間に対する鬱憤が膨張し爆発したのだ。
ルーチェは歯を食いしばり、やっとの思いで猛攻を防ぐことしかできない。
ようやく気付いた。シーナはぎりぎりでなんとか回避できていたのではない。必要最低限の動きだけで回避していただけだということに。
じりじりとルーチェが後退する。
(こんなはずじゃなかったのに。こんな奴らに――ッ)
「っくそおおぉおッ!」
ルーチェは無理やり身体をひねり短剣を弾くと、片側を切りつけられながらも剣を振りかぶった。
(こんなところで負けるわけにはいかない。俺は世界を救う勇者じゃなくてはいけないんだ。嫁として魔王に媚を売る存在じゃなく、完膚なきまでに悪を淘汰する存在じゃないと!)
勇者は、人類の平和のための、希望。
(魔王ではない、その部下に、得意でないはずの剣術で、こんなにもあっさり負けるわけにはいかないんだよッ!)
「あああああああ!」
「――それが驕りだっていうんですよ」
何も見えなかった。聞こえたのは、静かなシーナの声だけだった。
長く伸びた影が地面に落ち、重なった。
気付けばルーチェは地面に倒れ、目の前にはシーナの顔があった。
永遠のような時間の中、覆い被さるシーナの髪が肩からぱさりと落ちる。
ルーチェの喉元には短剣が突きつけられていた。
ルーチェたち一行の攻撃は波状攻撃だった。仲間との連携で形を成すものだ。勇者と呼ばれているとはいえ、ルーチェは一般人。旅の道中で鍛えられてはいるが、特別な訓練を受けているわけでなく、生まれ持って特別な力が備わっているわけでもない。魔王の元まで来られたのも、仲間の協力があってこそ、実力以上の力が出せていたのだ。
シーナの頭上で獣の耳が露になっている。人間とは違う種族の証だ。これが魔族と人間との差なのだろうか。一生適わないということなのか。
そのどれもが、無様な言い訳に過ぎなかった。言い訳にすらしてはならなかった。
勇者に求められるのは、魔王討伐の結果、ただひとつ。
そして、魔族ひとりに敗北したという事実。
(――負けた)
奥歯を噛むルーチェに、シーナは静かに言い放った。
「五十年待ちます」
短剣を引き、帽子を拾って土を払うと、シーナは耳を隠すように被った。ルーチェを振り返ることなく立ち去っていく。盛り上がっていた観客も満足げな表情で散り散りになり日常へと戻っていったが、ルーチェは未だ地面に倒れたままだ。
(五十年ってなんだ。再戦の話か。それだけ修行を積めと、五十年後に出直して来いとそういうことなのか。人間なら死んでいる時間じゃないか。お前ら魔族の寿命で考えるなっ)
罵声を浴びせた。口に出せはしなかった。悔しさを噛み締めることしかできなかった。
「……魔道士は空気中の魔法エネルギー粒子マナを力に変えているのを知っているか」
ソティラスが覗き込んでいる。夕日に照らされる影は漆黒で、改めて目の前にいる男は魔王なのだと思った。
「……何が言いたい」
「ここ、ゲーティア国ではハイリヒ国よりその濃度が濃い。人間界とは随分違うのだ。そのせいで人間では実力ほどの力も出せない。……ここに来て、随分疲れが溜まっているはずだが」
思い当たる節は多々あった。朝起きられないのも気だるさを感じるのも、環境の違いが原因だったのだろう。
「シーナは魔道士だが、以前は短剣を用いた素早い攻撃を得意としていた。元々身体能力に優れた種族である上、戦闘開始直後に、詠唱を破棄して身体能力を底上げしている。観衆もほぼすべてシーナの味方だった。視線に気圧されたろう」
ルーチェ自身も作戦を読み違え、油断はあった。しかし元々相手にとって有利な舞台で、能力も比べものにならないほど高く、始めから勝ち目などなかった。
しかし、
「そんなの言い訳にならないだろ!」
ルーチェは暗くなった天に向かって叫んだ。
「同情してるのか、嘲笑ってんだろッ。散々倒してやるとかほざいてたくせに、歯が立たなくてあっけなく倒されて、結局はこの様かって。……弱い人間は大人しく下につけって思ってんだろ!」
叫んだ言葉は自分に返ってくる。
全ては自分が弱かったせいであるのに。
自分に力が無いだけであるのに。
それでもルーチェは叫び続けた。
「俺を嫁にするとか言い出したのもそれが目的なんだろ! 人間界を支配して奴隷にするつもりなんだろうが!」
「そうではない!」
ソティラスが声を上げたが、すぐに我に返り、言いよどんだ。
「……シーナにも勝てないのであれば私にも剣は届かん。刃向かうな。お前はおとなしく私の嫁になればいいのだ」
目の前に手を伸ばされる。ソティラスの影が宵闇に溶ける。長く伸びた爪の、魔王の手だ。
世界の平和のためならそれもひとつの答えだろう。敵わない相手に刃向かうより、自分一人の身を捧げ、犠牲になればいいだけの話だ。
「……わかった」
やがてルーチェは言い、手を伸ばした。
「今のところは大人しくしといてやる」
触れる寸前で伸ばされたソティラスの手を弾き、自らの力で身体を起こすと、佇む宿敵を思い切り睨み、変わらぬ使命を宣言した。
「いつか必ず、魔王を倒してみせる」
噴水のある広い中庭には、話を聞きつけたメイドや執事、兵士たち、多くの観客で賑わっていた。吹き抜ける冷たい風とは裏腹に、中庭は異様ともいえる熱気に包まれていた。
その中心では、二つの人影が対峙している。
「空腹以外の言い訳は考えてきましたか」
静かに佇み皮肉を言うシーナに、ルーチェはにやりと笑った。
「あんたも、無様な負けを披露しても側近の面目が保てるよう、毎日真面目に働いてるんだろうな」
ルーチェは剣を構える。魔王討伐のために装備していた封魔の剣ではない。この城を守る兵士が使っている普通の剣だ。
対等に戦える舞台をあつらえてもらえたのは好都合だ。魔王の右腕であるシーナを倒せば、今自分が置かれている立場も変わるはず。単に、歯がゆい思いを感じ、焦っていた現状や苛立ちを発散したいだけかもしれないが関係ない。
ルーチェは柄を握る手に力を込めた。
「相手から一本取ったほうが勝ちだ」
二人の間で右手を掲げ、ソティラスが言う。
「相手に降参だと言わせてもいい。殺しはするな。それ以外、特にルールはない。周りに被害が及ばぬよう、魔法で防壁を張っているから存分にやりあうといい。攻撃方法も自由だ。それでいいな?」
最終確認に、ルーチェ、シーナ、共に頷く。ソティラスも頷き、掲げた右手を振り下ろした。
「始め!」
声と同時にルーチェはすばやくシーナとの距離を詰めた。詠唱する暇を与えないためだ。
シーナは外部との連絡に強力な魔法を用いていたことから魔道師なのだろうとルーチェは見ていた。
(接近戦に持ち込めば、詠唱が必要な魔道師相手には有利だ。このまま一気にケリをつける!)
ルーチェはシーナの右肩に剣を振り下ろす。痛めつける必要はない、降参だと言わせればいい。口を塞いで詠唱できないように封じ込め、戦闘続行不可能の状態に持ち込めば終わりだ。
相手の肩を切りつけるルーチェの刀身だったはずだが、しかし甲高い金属音が響いた。いつの間に取り出したのか、シーナの右手には短剣が握られていた。かすり傷すらつけられなかったものの、体勢が僅かに崩れている。
ルーチェはその隙を見逃さなかった。攻撃の手を緩めない。鋭い一振りを与えるたび、シーナは短剣の切っ先でぎりぎりを交わしていく。
激しい攻防に観客が沸いた。側近が押されていることに対する悲鳴も混ざっている。が、ルーチェにはそんなこと関係ない。
(このまま押し切れる……! 魔王の側近を倒し、魔王討伐の足がかりにするんだ)
頭部への鋭い一線を寸でのところで躱すシーナ。帽子が落ち、獣の耳が露になる。
(っ、いける。魔族相手だといっても、一対一なら負けてねえ!)
じりじりと追い詰めていく感覚に、ルーチェは手ごたえを感じた。
やはりシーナは魔道師で物理攻撃は得意ではない。ルーチェが詠唱を封じてくるとは読んでいたものの、接近戦での実力差は埋まらず、斬撃を防ぐので精一杯なのだ。
勝利を確信し始めたルーチェは、焦りや悔しさで顔をゆがませるシーナを見ようとしたが、違和感に気付く。
(なんだ……、なんで、変わってないんだ……?)
シーナの表情は普段と同じ。涼しげな表情を浮かべ、ただ淡々と仕事をこなすように、まるで訓練兵の実力を確かめているような――
「……っ」
ルーチェは動揺し、その気持ちの揺らぎで、ほんの僅か手元が狂った。シーナはその隙を見逃さなかった。ルーチェの斬撃をいなして交わすのではなく、短剣で鋭く弾いた。
「ッ!」
「――勇者様の実力がどの程度なのかと様子を見ていましたが、その程度なのですね」
シーナが眼前から消えた。――下だ。
ルーチェは反射的に反応し、もぐりこんで左脇腹を切りつける一線を、寸でのところでかわした。二手目の刺撃範囲外の左側にルーチェは避けたが、シーナは左手をルーチェに向かって振り下ろした。
「――くッ!」
右腕に熱を感じたかと思うと、地面に血が飛び散った。シーナの何もないはずの左手に握られているのは短剣だった。二刀流だ。知覚したのも束の間、獣のような素早い刺撃が左右からルーチェを襲う。目にも留まらぬ猛攻にかつてないほど観客が歓声を上げた。人間に対する鬱憤が膨張し爆発したのだ。
ルーチェは歯を食いしばり、やっとの思いで猛攻を防ぐことしかできない。
ようやく気付いた。シーナはぎりぎりでなんとか回避できていたのではない。必要最低限の動きだけで回避していただけだということに。
じりじりとルーチェが後退する。
(こんなはずじゃなかったのに。こんな奴らに――ッ)
「っくそおおぉおッ!」
ルーチェは無理やり身体をひねり短剣を弾くと、片側を切りつけられながらも剣を振りかぶった。
(こんなところで負けるわけにはいかない。俺は世界を救う勇者じゃなくてはいけないんだ。嫁として魔王に媚を売る存在じゃなく、完膚なきまでに悪を淘汰する存在じゃないと!)
勇者は、人類の平和のための、希望。
(魔王ではない、その部下に、得意でないはずの剣術で、こんなにもあっさり負けるわけにはいかないんだよッ!)
「あああああああ!」
「――それが驕りだっていうんですよ」
何も見えなかった。聞こえたのは、静かなシーナの声だけだった。
長く伸びた影が地面に落ち、重なった。
気付けばルーチェは地面に倒れ、目の前にはシーナの顔があった。
永遠のような時間の中、覆い被さるシーナの髪が肩からぱさりと落ちる。
ルーチェの喉元には短剣が突きつけられていた。
ルーチェたち一行の攻撃は波状攻撃だった。仲間との連携で形を成すものだ。勇者と呼ばれているとはいえ、ルーチェは一般人。旅の道中で鍛えられてはいるが、特別な訓練を受けているわけでなく、生まれ持って特別な力が備わっているわけでもない。魔王の元まで来られたのも、仲間の協力があってこそ、実力以上の力が出せていたのだ。
シーナの頭上で獣の耳が露になっている。人間とは違う種族の証だ。これが魔族と人間との差なのだろうか。一生適わないということなのか。
そのどれもが、無様な言い訳に過ぎなかった。言い訳にすらしてはならなかった。
勇者に求められるのは、魔王討伐の結果、ただひとつ。
そして、魔族ひとりに敗北したという事実。
(――負けた)
奥歯を噛むルーチェに、シーナは静かに言い放った。
「五十年待ちます」
短剣を引き、帽子を拾って土を払うと、シーナは耳を隠すように被った。ルーチェを振り返ることなく立ち去っていく。盛り上がっていた観客も満足げな表情で散り散りになり日常へと戻っていったが、ルーチェは未だ地面に倒れたままだ。
(五十年ってなんだ。再戦の話か。それだけ修行を積めと、五十年後に出直して来いとそういうことなのか。人間なら死んでいる時間じゃないか。お前ら魔族の寿命で考えるなっ)
罵声を浴びせた。口に出せはしなかった。悔しさを噛み締めることしかできなかった。
「……魔道士は空気中の魔法エネルギー粒子マナを力に変えているのを知っているか」
ソティラスが覗き込んでいる。夕日に照らされる影は漆黒で、改めて目の前にいる男は魔王なのだと思った。
「……何が言いたい」
「ここ、ゲーティア国ではハイリヒ国よりその濃度が濃い。人間界とは随分違うのだ。そのせいで人間では実力ほどの力も出せない。……ここに来て、随分疲れが溜まっているはずだが」
思い当たる節は多々あった。朝起きられないのも気だるさを感じるのも、環境の違いが原因だったのだろう。
「シーナは魔道士だが、以前は短剣を用いた素早い攻撃を得意としていた。元々身体能力に優れた種族である上、戦闘開始直後に、詠唱を破棄して身体能力を底上げしている。観衆もほぼすべてシーナの味方だった。視線に気圧されたろう」
ルーチェ自身も作戦を読み違え、油断はあった。しかし元々相手にとって有利な舞台で、能力も比べものにならないほど高く、始めから勝ち目などなかった。
しかし、
「そんなの言い訳にならないだろ!」
ルーチェは暗くなった天に向かって叫んだ。
「同情してるのか、嘲笑ってんだろッ。散々倒してやるとかほざいてたくせに、歯が立たなくてあっけなく倒されて、結局はこの様かって。……弱い人間は大人しく下につけって思ってんだろ!」
叫んだ言葉は自分に返ってくる。
全ては自分が弱かったせいであるのに。
自分に力が無いだけであるのに。
それでもルーチェは叫び続けた。
「俺を嫁にするとか言い出したのもそれが目的なんだろ! 人間界を支配して奴隷にするつもりなんだろうが!」
「そうではない!」
ソティラスが声を上げたが、すぐに我に返り、言いよどんだ。
「……シーナにも勝てないのであれば私にも剣は届かん。刃向かうな。お前はおとなしく私の嫁になればいいのだ」
目の前に手を伸ばされる。ソティラスの影が宵闇に溶ける。長く伸びた爪の、魔王の手だ。
世界の平和のためならそれもひとつの答えだろう。敵わない相手に刃向かうより、自分一人の身を捧げ、犠牲になればいいだけの話だ。
「……わかった」
やがてルーチェは言い、手を伸ばした。
「今のところは大人しくしといてやる」
触れる寸前で伸ばされたソティラスの手を弾き、自らの力で身体を起こすと、佇む宿敵を思い切り睨み、変わらぬ使命を宣言した。
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