おにぎり横丁

天災

文字の大きさ
上 下
3 / 4

第三話

しおりを挟む

 堂々と、勇ましいようなお祖母ちゃんが発した言葉は、とてもカッコ良かった。

 (きっと、沢山の人生の苦労を乗り越えて、今に至るんだろうな。)

 「それでは…ご馳走さまでした。」
 「うん。ありがとね。何かあったら来ていいからね。」

 お母さんのようなその優しい声は、森下の胸をギュッと掴むようであった。

 ーガラガラガラガラ…

 店を出ると、すっかり夕方であった。

 「わぁ!もう夕方?そうか、日照時間が短いとか何とか…」

 夕陽に照らされながら、田舎道を歩く。つい昨日までは、夜中もギラギラと光が照らされた狭い部屋で、一台の画面に目を離さず、ひたすらにボタンを押していた。

 「トンボだ…」

 田んぼの近くに舞う赤トンボ。都会には、全く見れるものではなかった。

 「子供の頃は良く見てたな…戻りたいな…子供の頃に。」

 田舎に足を運ぶことで、疲れのマヒになった都会生活の呪縛から解かれたようなものであった。

 「住みたいなぁ…こんな所に。」

 そして、近くに適当な宿を探し、夕食を食べた後はすぐに眠ってしまった。五時間程度の睡眠ですぐに復活するようなショートスリーパーな私は、何処かへ行ってしまったようだ。

 ーーーーーーー

 田舎に魅了された私は、さらに3日程休み、すっかり田舎を満喫した。旅行最後の日、帰りの電車でおにぎりを食べようと、おにぎり横丁へ向かったが、定休日のため開いていなかった。

 ーカタンカタン…

 帰りの電車…5日間の田舎旅行を経たものの、やはり帰りとなると少し寂しく、心の端からまだいたい…何て欲望も生まれてくる。しかし、仕事も私の人生、ずっと逃げてはいられない。

 「また来よう。いつか来よう。」

 私の心の中はそういう気持ちでいっぱいになっている。

 ーーーーーーー

 「よし、行こう。」

 朝は四時起き。素早く着替え等の準備を終える。朝食はコンビニのおにぎりと野菜ジュース。バッグにはパソコン、朝食用のウィーダーゼリー何かを入れ、駅へ向かう。

 ーコツンコツンコツンコツン

 駅にはスーツを着て、ネクタイを装着した老若男女(子供を除く)が駅のホームへと入っていく。
 表情は皆、真顔だ。緩みを一切ださない。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

固い蕾が綻ぶ時、紅く咲くのは恋の華

冴月希衣@商業BL販売中
キャラ文芸
勝ち気なツンデレ美少女と妖猫のハートフルストーリー。『妖(あや)し瞳の、艶姿』番外編。(本編はBLです) ◆◆時は、平安時代。先代の藤典侍(とうのないしのすけ)の娘、藤原篤子(ふじわらのあつこ)は、勝ち気で活発、自由奔放。跳ねっ返りで、わがままで、とっても足の速い十七歳。  好きな相手に素直に好意を表せない、ツンが勝ちすぎてる厄介な気性の美少女に、ある日、運命の出会いが――。  勝ち気なツンデレ少女と妖猫とのハートフル内裏ストーリー。 ☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆ 素敵な表紙は奈倉まゆみさん作画です。 ◆本文・画像の無断転載禁止◆ No reproduction or republication without written permission.

声劇台本置き場

ツムギ
キャラ文芸
望本(もちもと)ツムギが作成したフリーの声劇台本を投稿する場所になります。使用報告は要りませんが、使用の際には、作者の名前を出して頂けたら嬉しいです。 台本は人数ごとで分けました。比率は男:女の順で記載しています。キャラクターの性別を変更しなければ、演じる方の声は男女問いません。詳細は本編内の上部に記載しており、登場人物、上演時間、あらすじなどを記載してあります。 詳しい注意事項に付きましては、【ご利用の際について】を一読して頂ければと思います。(書いてる内容は正直変わりません)

下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは
キャラ文芸
※※※※※ 下宿屋を営み、趣味は料理と酒と言う変わり者の主。 毎日の夕餉を楽しみに下宿屋を営むも、千年祭の祭りで無事に鳥居を飛んだ冬弥。 しかし、飛んで仙になるだけだと思っていた冬弥はさらなる試練を受けるべく、空高く舞い上がったまま消えてしまった。 下宿屋は一体どうなるのか! そして必ず戻ってくると信じて待っている、残された雪翔の高校生活は___ ※※※※※ 下宿屋東風荘 第二弾。

下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆ 四つの巻物と本の解読で段々と力を身につけだした雪翔。 狐の国で保護されながら、五つ目の巻物を持つ九堂の居所をつかみ、自身を鍵とする場所に辿り着けるのか! 四社の狐に天狐が大集結。 第七弾始動! ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆ 表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

俺がママになるんだよ!!~母親のJK時代にタイムリープした少年の話~

美作美琴
キャラ文芸
高校生の早乙女有紀(さおとめゆき)は名前にコンプレックスのある高校生男子だ。 母親の真紀はシングルマザーで有紀を育て、彼は父親を知らないまま成長する。 しかし真紀は急逝し、葬儀が終わった晩に眠ってしまった有紀は目覚めるとそこは授業中の教室、しかも姿は真紀になり彼女の高校時代に来てしまった。 「あなたの父さんを探しなさい」という真紀の遺言を実行するため、有紀は母の親友の美沙と共に自分の父親捜しを始めるのだった。 果たして有紀は無事父親を探し出し元の身体に戻ることが出来るのだろうか?

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愛着メモタルフォーゼ(10/6更新)

狂言巡
キャラ文芸
平凡な女性ヲタク『藤野ヒカル』に厄介な恋心を抱く人達の話。ヤンデレ要素のある物は題名に表記してありますので苦手な方は閲覧をお控え願います。

処理中です...