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第三話
しおりを挟む堂々と、勇ましいようなお祖母ちゃんが発した言葉は、とてもカッコ良かった。
(きっと、沢山の人生の苦労を乗り越えて、今に至るんだろうな。)
「それでは…ご馳走さまでした。」
「うん。ありがとね。何かあったら来ていいからね。」
お母さんのようなその優しい声は、森下の胸をギュッと掴むようであった。
ーガラガラガラガラ…
店を出ると、すっかり夕方であった。
「わぁ!もう夕方?そうか、日照時間が短いとか何とか…」
夕陽に照らされながら、田舎道を歩く。つい昨日までは、夜中もギラギラと光が照らされた狭い部屋で、一台の画面に目を離さず、ひたすらにボタンを押していた。
「トンボだ…」
田んぼの近くに舞う赤トンボ。都会には、全く見れるものではなかった。
「子供の頃は良く見てたな…戻りたいな…子供の頃に。」
田舎に足を運ぶことで、疲れのマヒになった都会生活の呪縛から解かれたようなものであった。
「住みたいなぁ…こんな所に。」
そして、近くに適当な宿を探し、夕食を食べた後はすぐに眠ってしまった。五時間程度の睡眠ですぐに復活するようなショートスリーパーな私は、何処かへ行ってしまったようだ。
ーーーーーーー
田舎に魅了された私は、さらに3日程休み、すっかり田舎を満喫した。旅行最後の日、帰りの電車でおにぎりを食べようと、おにぎり横丁へ向かったが、定休日のため開いていなかった。
ーカタンカタン…
帰りの電車…5日間の田舎旅行を経たものの、やはり帰りとなると少し寂しく、心の端からまだいたい…何て欲望も生まれてくる。しかし、仕事も私の人生、ずっと逃げてはいられない。
「また来よう。いつか来よう。」
私の心の中はそういう気持ちでいっぱいになっている。
ーーーーーーー
「よし、行こう。」
朝は四時起き。素早く着替え等の準備を終える。朝食はコンビニのおにぎりと野菜ジュース。バッグにはパソコン、朝食用のウィーダーゼリー何かを入れ、駅へ向かう。
ーコツンコツンコツンコツン
駅にはスーツを着て、ネクタイを装着した老若男女(子供を除く)が駅のホームへと入っていく。
表情は皆、真顔だ。緩みを一切ださない。
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