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一
しおりを挟む行為中に、夫にこんなことを言われた。
「お前さ、抱きごこちが悪いんだよな…」
こんなことを言われたのは初めてだ。私は公爵令嬢の末っ子であり、長身な姉に比べ、小さな身長でこの世に生を受けた。すなわち、それが私の欠点となる。
そして、同じく小さい頃から酷く痩せていて、いくら食事をとろうと、なかなか太ることが出来なかった。それは、女性として一見良さげだが、抱かれるときは、少し太っている方がいいと、本を読んだ。
確かに、父上や周りからも、「サナ、お前は確かに可愛く、自慢の娘ではあるが、もう少し、体型を意識してほしい」「サナは可愛いけど、胸とか尻とかもっと肉体的に欲しいよな」とか、さんざん言われ続けている身であった。
今の私の夫は、公爵令息のミント・クルーザー。ミントは、私を「可愛い」「美しい」とずっと褒めてくれていたものの、今、行為にいたり、欠点があらわになってしまった。
「もういいや。気分が乗らない。やめようか。このまま続けても、お互いに気持ちよくない。」
私は、仕方ない気持ちと、謝罪したい気持ちでウンと頷き、服を着始めた。
(どう説明するべきか。この体型は、生まれつきのもので、どうかこんな身体で許してほしいと許しを乞うべきか。)
しかし、ミントは私を「ただただ性欲を満たすための存在」と扱っているのか。そんなに抱きごこちが悪いことが悪いことなのか。まるで、後悔したような言動に少し悲しみも覚えた。
<顔は可愛いけど、イマイチ興奮しねぇな>
今、そうボソッと呟いたのが、明らかに聞こえた。だが、それに対して怒ったり、謝ったりすることもなく、ただ呆然と服を着ていた。
⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛
「抱きごこちが悪い」と夫に言われたことを、姉に打ち明けると、姉は怒ってくれた。
「そんなことはないわよ!良い?抱きごこちで女の良し悪しを決めるのは最低な男なのよ。それはもう離婚も考えた方が良いわ。その後の相手の態度しだいで!」
なるほど。やはり、これは体型が元々悪い私より、断然に彼の方が悪いのか。
「あなたには悪いかもしれないけど、離婚っていうのも、必ずしも悪いことではないわ。逆に、嫌な人と離婚せず、耐えて人生を送るのならば、それは逆に損するだけよ。第一、これはあなたに原因なんか無いんだから。全部相手のせいなんだから。」
姉は、私を支持してくれている。
「お姉さんの体型が羨ましいよ。長身で、胸は大きくて、尻も大きくて、痩せ過ぎてないし。」
「そうね。少し最近食べ過ぎちゃったのもあるわね。」
姉は本当に理想的な女性の身体をしている。そして、顔も美人だ。(なんなら私よりも)
別に姉を非難するわけでは無いが、姉は私の気持ちを分かっているのだろうか。と思ってしまう。姉は、こんな気持ちになったことがないだろう。自分の欠点を取り上げられたあげく、そのことについて相手に指摘されることを。
その後、姉とは別れ家に帰った。そこには、夫の姿があった。
「あれぇ?早いわね。どうしてこんなに?」
「は?何でも良いだろ。仕事が早く終わっただけだ…」
何か、彼が隠し事をしているように感じる。気のせいだろうか。だが、何か怪しい。
「何か隠してるの?変に慌ててるみたいな…」
「だから何でもないって!何なんだよ!最近のお前はよ!」
そう怒鳴って、部屋に行ってしまった。何をそんなに怒る必要があるのか。それと、最近のお前とは、どういうことだろうか。最近、私は彼に対してしつこくしたり、怒ったり、嫌がらせをしたりした覚えはない。
「ん?なぁに、これ…?」
私は、一枚の紙切れを拾った。
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