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第1話 お誘い(2)

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「こう見えて僕は、場数は相当に踏んでいます。リードはお任せください」
「は、はい。お願い、致します」

 そんな配慮のお言葉と微笑みを合図にして始まった、3年ぶりで2度目のダンス。それはまるで、自分が自分ではないようでした。

((嘘、みたいです……。体が勝手に、動いてくれます……っ))

 デビュタントのために毎日レッスンを行ってきましたが、こうなってからは――3年間1度も、ダンスレッスンを受けたことはありませんでした。なのに当時よりも上手にステップを踏め、上手に踊れているのです。

((今でも、覚えています……。これは昔苦手で、初めての時は何度もミスをしてしまった動作なのに。上手く、完璧に、動けています……っ))

 こんな奇跡のようなことが起きている理由は、パートナーがブロンシュ様だから。この方が動かれると自然と私の体も移動を始めて、ついていくことができるんです。

((ブロンシュ様が、引っ張ってくださっている。でも、なのに、不思議。ちゃんと、ダンスをしている感覚はあります))

 実際には、パートナーに操ってもらっているんです。けれど『自分が踊ってる』という感覚もあって。……楽しい。
 自分の中にあるもの――ポテンシャルを引き出してもらっている感覚があって、すごく楽しい。この時間が永遠に続けばいいのに……っ。
 私はそう感じながらターンを行い、本当にあっという間――。気が付くと曲が終わっていて、

「……………………」
「……………………」
「……………………」

 私達は、メラニー様達――他の参加者様達の、呆然唖然とした視線の的となっていました。

「お見事。久し振りとは思えない動きでしたよ」
「ブロンシュ様のおかげでございます。…………こんなダンスができるなんて、あるなんて。知りませんでした」
「ふふ。それはハレミット様とだから、可能となった事ですよ。……僕も非常に良い時間を過ごせて、あまりに楽しく少々動き過ぎてしまいました。あちらでお話しでもしながら休憩しませんか?」

 それはきっと、優しい嘘。久し振りのダンスで疲れている私のために、隅を指さして微笑んでくださいました。

「ありがとうございます。私も、ブロンシュ様にお聞きしたことがありました。ぜひ、ごいっしょ――」
「あのっ、ブロンシュ様っ。次はわたくしと踊ってくださいましっ!」
「クーレル様、先約がありますので。申し訳ございません」

 大急ぎで飛んできたメラニー様に即お断りを入れられて、っっ! ブロンシュ様は私をお姫様抱っこ抱えてくださり、まるで貴重品を扱うようにして。優しく丁寧に、その場所まで運んでくださったのでした。

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