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第10話 3日後 俯瞰視点(1)
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「こいつぁうめぇな! こんなん食ったの初めてだぜ!」
「肉なんて、どれも同じだと思ってた。全然違うんだな!」
『レーマッカス』という名の街、その端に建つ小さな平屋。そこでは人相の悪い5人の男達が、テーブルを囲んで歓声をあげていました。
100グラム2000バーレア以上もする、高級肉。彼らは生まれて初めて高価な肉を食べ、未経験の味に感動していたのです。
「まさかオレらがこんな肉を味わえる日が来るとはなぁ。依頼者様々だぜ」
「まったくだ。あんなババァを一匹拉致って監禁するだけで、あんなに――まだまだ金がもらえるだなんてな。最高だ!」
こちらの願いを叶えてくれたら、ここにある100万バーレアを前金として渡そう。成功した暁には1人につきさらに100万バーレアを――いや、200万バーレアを差し上げようじゃないか。
ある日突然現れたオクタヴィアンの手先にそんな話を持ち掛けられた5人。彼らにとっては100万であり200万は破格の大金でした。
まるで獲物を前にした空腹の狼の如く飛びつき、嬉々として依頼を受けたのです。
「独り暮らしをしているババアをナイフで脅して引っ張ってくるだけで、200――1人300万。こんなに楽な仕事はねぇぞ!」
「しかも成功したら、以降も似たような仕事を回してくれるんだろ? 最高じゃねぇか」
「そうだ、はっきりとそう言った。あの人ぁ神だぜ神」
200万の報酬も今後の話も、すべて嘘。ドナシアンが予想していたように、オクタヴィアンはクローデット殺害後に彼らを消すつもりでいました。
そんなことが頭に全くない5人は指笛を鳴らし、揃って万雷の拍手を送りました。
「一生足を向けて寝れねぇな。神、感謝します……!!」
「貴方様に一生ついていきます……! 今後ともごひいきにっ!」
「今後も、最高のご依頼、待ってますんでね! ドンドン持ってきてくださいや――ん? オマエ、なんか不満げだな? どうしたよ?」
「100と200でも足りないのか? 調子乗りすぎだぞお前」
「違う違う。額には満足してるっての。そうじゃなくて、ターゲットが若い女ならよかった、って思ってたんだよ」
続きの部屋の真ん中にあるイスに縛り付けられている、口を塞がれた女性――ジョルジーヌを一瞥しました。
「若い女なら、監禁中も色々楽しめただろ? ババぁ相手にゃなにもする気がおきねーよ」
「あ~な、その気持ちは分かるわ。ここなら好き放題できるもんなぁ」
「だろ? 最高のシチュなのに、ババぁのせいで台無しだぜ。次は多少報酬が安くなっててもいいから、若いヤツをターゲットにして欲しいもんだ。当然、美人のな」
「成功報酬を受け取る時に、提案してみるか。この件であっちはかなり感謝するだろうし、意外と要求は通るはず――ん? おい、なんか甘い匂いがしないか?」
下卑た笑みを浮かべていた男のひとりが、周囲を見回し始めました。
「なんつか……。飴……? 飴がちょっと焦げたような、匂いがしないか……?」
「……言われてみると、するな。誰かデザートでも用意してるのか?」
「全員ここに居るんだぞ? するワケねぇだろ。周りの家がなんか焼いてるんだろ」
「あほか、近くに家なんてねぇよ。……?? じゃあ、なんなんだ? この匂い、どっか流れてきて――ぁ……? な、ん、だ……?」
突然全員の身体から力が抜け、そこからはあっという間でした。次は意識が遠のいていき、瞬く間に目の前が真っ暗になって――
「肉なんて、どれも同じだと思ってた。全然違うんだな!」
『レーマッカス』という名の街、その端に建つ小さな平屋。そこでは人相の悪い5人の男達が、テーブルを囲んで歓声をあげていました。
100グラム2000バーレア以上もする、高級肉。彼らは生まれて初めて高価な肉を食べ、未経験の味に感動していたのです。
「まさかオレらがこんな肉を味わえる日が来るとはなぁ。依頼者様々だぜ」
「まったくだ。あんなババァを一匹拉致って監禁するだけで、あんなに――まだまだ金がもらえるだなんてな。最高だ!」
こちらの願いを叶えてくれたら、ここにある100万バーレアを前金として渡そう。成功した暁には1人につきさらに100万バーレアを――いや、200万バーレアを差し上げようじゃないか。
ある日突然現れたオクタヴィアンの手先にそんな話を持ち掛けられた5人。彼らにとっては100万であり200万は破格の大金でした。
まるで獲物を前にした空腹の狼の如く飛びつき、嬉々として依頼を受けたのです。
「独り暮らしをしているババアをナイフで脅して引っ張ってくるだけで、200――1人300万。こんなに楽な仕事はねぇぞ!」
「しかも成功したら、以降も似たような仕事を回してくれるんだろ? 最高じゃねぇか」
「そうだ、はっきりとそう言った。あの人ぁ神だぜ神」
200万の報酬も今後の話も、すべて嘘。ドナシアンが予想していたように、オクタヴィアンはクローデット殺害後に彼らを消すつもりでいました。
そんなことが頭に全くない5人は指笛を鳴らし、揃って万雷の拍手を送りました。
「一生足を向けて寝れねぇな。神、感謝します……!!」
「貴方様に一生ついていきます……! 今後ともごひいきにっ!」
「今後も、最高のご依頼、待ってますんでね! ドンドン持ってきてくださいや――ん? オマエ、なんか不満げだな? どうしたよ?」
「100と200でも足りないのか? 調子乗りすぎだぞお前」
「違う違う。額には満足してるっての。そうじゃなくて、ターゲットが若い女ならよかった、って思ってたんだよ」
続きの部屋の真ん中にあるイスに縛り付けられている、口を塞がれた女性――ジョルジーヌを一瞥しました。
「若い女なら、監禁中も色々楽しめただろ? ババぁ相手にゃなにもする気がおきねーよ」
「あ~な、その気持ちは分かるわ。ここなら好き放題できるもんなぁ」
「だろ? 最高のシチュなのに、ババぁのせいで台無しだぜ。次は多少報酬が安くなっててもいいから、若いヤツをターゲットにして欲しいもんだ。当然、美人のな」
「成功報酬を受け取る時に、提案してみるか。この件であっちはかなり感謝するだろうし、意外と要求は通るはず――ん? おい、なんか甘い匂いがしないか?」
下卑た笑みを浮かべていた男のひとりが、周囲を見回し始めました。
「なんつか……。飴……? 飴がちょっと焦げたような、匂いがしないか……?」
「……言われてみると、するな。誰かデザートでも用意してるのか?」
「全員ここに居るんだぞ? するワケねぇだろ。周りの家がなんか焼いてるんだろ」
「あほか、近くに家なんてねぇよ。……?? じゃあ、なんなんだ? この匂い、どっか流れてきて――ぁ……? な、ん、だ……?」
突然全員の身体から力が抜け、そこからはあっという間でした。次は意識が遠のいていき、瞬く間に目の前が真っ暗になって――
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