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プロローグ ドナシアン・エリオルツ視点(2)
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――クローデットの事故死は、偶然ではない。計画されたものだった――。
そんな恐ろしい事実を知る切っ掛けとなったのは、クローデットの元婚約者であるヴァンダエワ子爵令息ナゼ―ルの自白だった。
「クローデットの事故は…………意図的に引き起こされたものなんだ……。あの日僕が、父上が不在のタイミングでクローデットを屋敷に呼んで……。密かに招き入れた者達に、クローデットが乗って来た馬車が横転するように細工をさせた……」
「偶然の事故に見せかけられるようになった、から……。あとは……運転の際に細工をした部分に負荷をかけて事故を引き起こして……その拍子に上手く死ねば、御の字……。死ななかったら同乗者が……同乗者は実は、全員が『こっち側』の人間で……。頭を打って死んだように見せかける、計画だったんだ……」
あの日……クローデットの遺体を見て涙していた……。『自分がお嬢様の代わりに死んで、お嬢様が自分の代わりに軽傷だったらよかった……!!』『自分だけ生きているなんて……!!』『どうして、こんな……!!』と絶句していた者達は、買収されていて……。
あの場に居た人間――御者ミオン、護衛ミラン、護衛兼侍女であるミノンが……。主従でありながらもクローデットと兄妹のような関係を築いていた3人が……。裏切っていたのだった……。
「……なぜ、だ……。なぜ、クローデットがそんな目に……。目的はなんだ……!? お前はなぜそんなことをした……!!」
「…………エメリーヌとオクタヴィアン、に……。貴方の姪と、貴方の実弟に……。話を持ち掛けられたから……。ふたりと取り引きを、したんだ……」
エメリーヌは様々な理由でクローデットを妬み、クローデットの人生を滅茶苦茶にしてやりたいと思っていた……。オクタヴィアンは内心ずっと『当主』を渇望し、私を邪魔者と思っていた……。
そのためエメリーヌは常々、クローデットを消したいと思っていて……。オクタヴィアンは常々、私を排除したいと思っていて……。その両方を達成できる、クローデット殺害計画をずっと前から練っていた……。
だが私が居なくなると、『立て直し』ができなくなる。そんな理由で実行できずにいたが、そうとは知らずに軌道に乗せてしまった――私が居なくてもやっていける状況が出来上がってしまったため、嬉々として実行していた……。
「……お前は今、取り引き、と言ったな……? なにを得た……? なにと引き換えに、あの子を殺したんだ……!?」
「……まだ、なにも、受け取ってはいない……。クローデットの死後、エメリーヌと結婚できる……。そういう約束で、引き受け、たんだ……」
「なんだと!? 貴様っ、貴様とクローデットくんは相思相愛だったはずだ!! わたしや次男達に何度も『愛している』と言っていたではないか!? エメリーヌという女とは、ほぼ面識がないのに……。どうなっているのだ!?」
3年前に結ばれた2人の婚約は政治的なものだったが、それでもクローデットとナゼ―ルは本当の恋に落ちた。引き換えエメリーヌとは挨拶や食事会などの際に数回会っただけで、間違いなく恋仲にはなっていなかった。
なのにここまで深く協力した、その理由は――
「上手くクローデットが死ねば……。結婚後に、相応のポジションを――クローデットと結婚するよりも、遥かに良い思いをさせてくれることに、なっていたんだ……。よい高い地位と沢山の金が手に入るから……。クローデットとするより、何倍も楽しい未来がやってくるから……。クローデットには悪いと思ったけど…………クローデットを、売ったんだ……」
――私利私欲。
この男はクローデットを心から愛していたにも、かかわらず……。金や地位に目が眩み、最愛の人を裏切っていたのだった……!
しかも……!!
しかも、ナゼ―ルは――
そんな恐ろしい事実を知る切っ掛けとなったのは、クローデットの元婚約者であるヴァンダエワ子爵令息ナゼ―ルの自白だった。
「クローデットの事故は…………意図的に引き起こされたものなんだ……。あの日僕が、父上が不在のタイミングでクローデットを屋敷に呼んで……。密かに招き入れた者達に、クローデットが乗って来た馬車が横転するように細工をさせた……」
「偶然の事故に見せかけられるようになった、から……。あとは……運転の際に細工をした部分に負荷をかけて事故を引き起こして……その拍子に上手く死ねば、御の字……。死ななかったら同乗者が……同乗者は実は、全員が『こっち側』の人間で……。頭を打って死んだように見せかける、計画だったんだ……」
あの日……クローデットの遺体を見て涙していた……。『自分がお嬢様の代わりに死んで、お嬢様が自分の代わりに軽傷だったらよかった……!!』『自分だけ生きているなんて……!!』『どうして、こんな……!!』と絶句していた者達は、買収されていて……。
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「…………エメリーヌとオクタヴィアン、に……。貴方の姪と、貴方の実弟に……。話を持ち掛けられたから……。ふたりと取り引きを、したんだ……」
エメリーヌは様々な理由でクローデットを妬み、クローデットの人生を滅茶苦茶にしてやりたいと思っていた……。オクタヴィアンは内心ずっと『当主』を渇望し、私を邪魔者と思っていた……。
そのためエメリーヌは常々、クローデットを消したいと思っていて……。オクタヴィアンは常々、私を排除したいと思っていて……。その両方を達成できる、クローデット殺害計画をずっと前から練っていた……。
だが私が居なくなると、『立て直し』ができなくなる。そんな理由で実行できずにいたが、そうとは知らずに軌道に乗せてしまった――私が居なくてもやっていける状況が出来上がってしまったため、嬉々として実行していた……。
「……お前は今、取り引き、と言ったな……? なにを得た……? なにと引き換えに、あの子を殺したんだ……!?」
「……まだ、なにも、受け取ってはいない……。クローデットの死後、エメリーヌと結婚できる……。そういう約束で、引き受け、たんだ……」
「なんだと!? 貴様っ、貴様とクローデットくんは相思相愛だったはずだ!! わたしや次男達に何度も『愛している』と言っていたではないか!? エメリーヌという女とは、ほぼ面識がないのに……。どうなっているのだ!?」
3年前に結ばれた2人の婚約は政治的なものだったが、それでもクローデットとナゼ―ルは本当の恋に落ちた。引き換えエメリーヌとは挨拶や食事会などの際に数回会っただけで、間違いなく恋仲にはなっていなかった。
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――私利私欲。
この男はクローデットを心から愛していたにも、かかわらず……。金や地位に目が眩み、最愛の人を裏切っていたのだった……!
しかも……!!
しかも、ナゼ―ルは――
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