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第10話 種明かし アンジェリク視点(4)
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「もういい? 満足できた? いいえ。まだまだデータは集まっていませんよ」
人体を用いての確認は、まだ始まったばかり。100メートル走で例えるとまだ5メートルも進んでいないことを伝えた。
「3人分ありますが、それでも1回だけでは分からないことが沢山あります。薬が完成するまで皆さんにはお付き合いいただきますよ」
「完成するまでだって!? いっ、いつになるのだそれは!?」
「いつになったら自由になれるんですの!?」
「現段階では具体的な数字はお出しできません。それに――そちらに関する話は、おいおいするとしましょうか。とにかく、当分は『9日間』を繰り返すことになるでしょうね」
この薬に関しては、どうしても最終段階の状態が必要になる。本人達にとっては辛いでしょうが、我慢していただきましょう。
「もちろん連続させてしまうと死んでしまいますから、適切なタイミングで肉体を回復させる『空白の時間』を用意します。その際は逃走防止のために制限がある状態ではありますが、自由に過ごせますよ」
「それのどこか自由なんだ!!」
「自由なんてどこにもないわ!!」
「嫌っ!! 嫌っ!! お姉様っ!! 許して!! やめてっ!!」
「そのお願いは聞けません。わたしにとって貴方達はもう家族ではなく、『人』ですらありませんからね。遠慮はしませんよ」
ご先祖様の想いや領民の未来を無視する。それだけでも充分問題があるのに、更にはわたしが生み出したものを我が物としようとした。利益はすべて自分達のために使い、領民のためには僅かたりとも使わないつもりでいた。
こんなことを平気で行える者は人ではなくて、何をしても特に思うことはありません。
「貴方がたが横取りを企まなければ、踏み切ることはありませんでした。なにもかもご自身のせい。自業自得なのですよ」
「あっ、アンジェリクっ、許してくれ! 悪かった!! 私が悪かった!!」
「調子に乗りすぎてしまったわ!! 反省しているの!! ちゃんと反省したからっ、許して頂戴!!」
「お姉様っ、一回だけチャンスをください!! 家のために結婚もしますしっ、無駄遣いもしないと誓いますから!! チャンスをください!!」
「貴方がたのような生き物の『反省』は、口先だけ。そちらは認めませんよ」
これまでの言動を鑑みると、心にもない言葉なのだと簡単に分かる。
まったく反省していないどころか、隙を見てわたしに攻撃してくる――十中八九、殺害を目論む。そんな人達です。
流れ弾が当たる可能性が高い使用人たちの為にも、3人を解放するわけにはいきません。
「お願いだ!! アンジェリク!!」
「お願いよ!! アンジェリク!!」
「お願いします!! お姉様!!」
「……経過を観察して、そこにあるデータを取りたいの。頼めるかしら?」
この人達と話すことは、もうなくなった。
「お願いだ!! アンジェリク!!」
「お願いよ!! アンジェリク!!」
「お願いします!! お姉様!!」
そこでわたしは3人に背を向けて指示を出して、研究を進めるため久しぶりに、2階にあるメイン研究室へと向かったのだった。
人体を用いての確認は、まだ始まったばかり。100メートル走で例えるとまだ5メートルも進んでいないことを伝えた。
「3人分ありますが、それでも1回だけでは分からないことが沢山あります。薬が完成するまで皆さんにはお付き合いいただきますよ」
「完成するまでだって!? いっ、いつになるのだそれは!?」
「いつになったら自由になれるんですの!?」
「現段階では具体的な数字はお出しできません。それに――そちらに関する話は、おいおいするとしましょうか。とにかく、当分は『9日間』を繰り返すことになるでしょうね」
この薬に関しては、どうしても最終段階の状態が必要になる。本人達にとっては辛いでしょうが、我慢していただきましょう。
「もちろん連続させてしまうと死んでしまいますから、適切なタイミングで肉体を回復させる『空白の時間』を用意します。その際は逃走防止のために制限がある状態ではありますが、自由に過ごせますよ」
「それのどこか自由なんだ!!」
「自由なんてどこにもないわ!!」
「嫌っ!! 嫌っ!! お姉様っ!! 許して!! やめてっ!!」
「そのお願いは聞けません。わたしにとって貴方達はもう家族ではなく、『人』ですらありませんからね。遠慮はしませんよ」
ご先祖様の想いや領民の未来を無視する。それだけでも充分問題があるのに、更にはわたしが生み出したものを我が物としようとした。利益はすべて自分達のために使い、領民のためには僅かたりとも使わないつもりでいた。
こんなことを平気で行える者は人ではなくて、何をしても特に思うことはありません。
「貴方がたが横取りを企まなければ、踏み切ることはありませんでした。なにもかもご自身のせい。自業自得なのですよ」
「あっ、アンジェリクっ、許してくれ! 悪かった!! 私が悪かった!!」
「調子に乗りすぎてしまったわ!! 反省しているの!! ちゃんと反省したからっ、許して頂戴!!」
「お姉様っ、一回だけチャンスをください!! 家のために結婚もしますしっ、無駄遣いもしないと誓いますから!! チャンスをください!!」
「貴方がたのような生き物の『反省』は、口先だけ。そちらは認めませんよ」
これまでの言動を鑑みると、心にもない言葉なのだと簡単に分かる。
まったく反省していないどころか、隙を見てわたしに攻撃してくる――十中八九、殺害を目論む。そんな人達です。
流れ弾が当たる可能性が高い使用人たちの為にも、3人を解放するわけにはいきません。
「お願いだ!! アンジェリク!!」
「お願いよ!! アンジェリク!!」
「お願いします!! お姉様!!」
「……経過を観察して、そこにあるデータを取りたいの。頼めるかしら?」
この人達と話すことは、もうなくなった。
「お願いだ!! アンジェリク!!」
「お願いよ!! アンジェリク!!」
「お願いします!! お姉様!!」
そこでわたしは3人に背を向けて指示を出して、研究を進めるため久しぶりに、2階にあるメイン研究室へと向かったのだった。
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