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第10話 種明かし アンジェリク視点(2)

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「今から9日前。わたしがお屋敷を去って4日後から、ですね。不思議なことが起き始めたのを覚えていますよね?」
「……不思議なこと……。9日、前……。ブランディーヌの死神のこと、か……!?」
「そうですね。それに加え、5日後、7日後、今日の出来事もそうですよ」

 眠気に襲われお母様が階段から転げ落ちる。突然眼精疲労に酷似した頭痛に襲われ、せっかくのミュージカルが台無しになる。巨大ゴキブリ、ピエロ、死神の登場。
 それらも、該当している。

「あれらは、偶然の出来事ではありません。わたしが意図的に引き起こしたものだったのですよ」
「なんだと!?」
「ど、どういうことなの……!?」
「いなくなっていた……旅行をしてたって、言っているのに……。どういうこと、なんですの……!? どうやって、そんなことを……!?」
「皆さん、こちらに注目してください」

 わたしは袋から四つ折りの薬包紙を取り出し、広げ、中にあった白い粉末を3人に見せた。

「そいつは……?」「ソレは……?」「ソレ、は……?」
「これはとある一級薬師様が昔に開発した、風邪薬の一つです。これは非常によく効くものなのですが、一度たりとも販売が認められたことはありません。なぜだか分かりますか?」
「………………」「………………」「………………」
「回答がないみたいなので、答えを発表します。この薬は、ふくさよ――使用した時に悪い影響があるため、禁止されているのですよ」

 心身にもたらす影響は、全部で3段階。

 その1。異様に眠くなってしまう。
 その2。眼精疲労に似た強烈な痛みに襲われる。
 その3。自分が恐れているものが追いかけてくるという、幻覚症状を見る。

 服用し続けると、このような順番で悪影響が出てしまう。

「「「!! まさか……!!」」」
「はい、そのまさかですよ。あらかじめこちらを渡しておいて、食事にこっそり混ぜてもらっていました」

 そうすることで、実際に服用し続けたと同じ状況を作りだしていた。
 ちなみに報告によると、序盤はブランディーヌへの投薬を少しだけ減らすのを忘れていたみたい。
 一番最初に死神を見たと騒いだのはその1の効果が出始めていて、眠くなって夢を見たせい。ブランディーヌはお父様とお母様と違って小柄で、その分薬が効きやすい。にもかかわらず同じ量を与えてしまったために、効果が先行して出てしまっていたらしい。

「定期検査で異常がないのに異変が多発して、不思議だったことでしょうね。あれらの原因はすべて、この薬にあるのですよ」
「そういう、ことか……!! 嫌がらせをしていたのだな……!!」
「わたくし達を怖がらせたり!! 楽しみにしていたものをぐちゃぐちゃにしてっ、嘲笑っていたのね!!」
「最低!! どうしようもない下衆ですわ!!」
「…………はぁ、わたしは貴方がたとは違います。そんなくだらないことに薬を使いはしませんよ」

 もちろん、意図は別にある。
 わたしがこうしていた理由は――


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