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後日譚 エリスと蓮。二人の日常と、とある感謝(2)
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「アリ、ガトウ。アリ、ガトウ」
あの夜のようにゆらゆらとやって来た、のっぺらぼうで真っ黒な異形。しかしながら今日の負霊は、様子が180度異なります。
当時のような殺気は、一切なし。声調にも怨みの感情は全くなく、そこにあるのは喜びと安らぎでした。
「トメテ、クレテ、アリガ、トウ。ワタシ、イマ、シアワセ。タノシイ」
負霊はエリスと蓮の前まで負を進め、立ち止まるとお辞儀。あの日と同じくどこかぎこちない動作で、けれど今日は感謝を告げました。
「テニス、マタ、デキルヨウニ、ナッタ。クラス、デモ、マタ、ワラエルヨウニ、ナッタ」
「ええ、そうね。日常が戻ったわね」
「はい、そうですね。悩みは、なくなりましたね」
「ムリ、ダトオモッテ、タ。ダカラ、ウレシイ。トッテモ、ウレシイ。ユメ、ミタイ」
2人は温かく柔らかに目を細め、負霊の瞳からは水滴がぽとり。成分は水と『喜』のみという、嬉し涙が零れます。
「タスケテ、クレテ、アリガトウ。ワタシ、ハ、ワタシ、ト、イッショ。イッショニ、ユメ、ヲ、メザセル。マイニチ、ヲ、タノシメル。ココニ、イラ、レル」
「そうね。余計な物と者を気にせず、プロを目指せるわね」
「貴方様の居場所は、二度と脅かされる事はありません。御自分がやりたいように、動けます。過ごせます」
「ソレ、ガ、シアワセ。タノシイ。ウレシイ。トメテ、クレテ、アリガトウ。タスケテ、クレテ、アリガトウ。アリガトウ。アリガトウ」
負霊は更に嬉し涙を零して頭を何度も下げ、そうしていると周りの景色がぼやけ始めました。
これは、タイムリミットの合図。眠っている人間を呼び寄せる行為は、様々な理を曲げる行為。そのため接触できる時間は、本当に極僅かとなっているのです。
「残念だけれど、そろそろお別れの時間ね。お招きいただき感謝するわ」
「貴方様の幸せは、お嬢様、そして自分の幸せでございます。貴方様と同じく、この出来事は生涯忘れません」
「アリガトウ……! アリガトウ……! バイバイ……! バイバイ……! イイヒトニ、デアエテ……。ヨカッタ……!!」
この世界から去り行く2人が、最後に見た光景。それは、ラケットとボールを幸せそうに掲げる負霊の姿。
エリスと蓮は、本当に。本当に幸せそうな『もう一人の橋本涼子』に笑みを返し、夢から現(うつつ)へと戻ったのでした――。
あの夜のようにゆらゆらとやって来た、のっぺらぼうで真っ黒な異形。しかしながら今日の負霊は、様子が180度異なります。
当時のような殺気は、一切なし。声調にも怨みの感情は全くなく、そこにあるのは喜びと安らぎでした。
「トメテ、クレテ、アリガ、トウ。ワタシ、イマ、シアワセ。タノシイ」
負霊はエリスと蓮の前まで負を進め、立ち止まるとお辞儀。あの日と同じくどこかぎこちない動作で、けれど今日は感謝を告げました。
「テニス、マタ、デキルヨウニ、ナッタ。クラス、デモ、マタ、ワラエルヨウニ、ナッタ」
「ええ、そうね。日常が戻ったわね」
「はい、そうですね。悩みは、なくなりましたね」
「ムリ、ダトオモッテ、タ。ダカラ、ウレシイ。トッテモ、ウレシイ。ユメ、ミタイ」
2人は温かく柔らかに目を細め、負霊の瞳からは水滴がぽとり。成分は水と『喜』のみという、嬉し涙が零れます。
「タスケテ、クレテ、アリガトウ。ワタシ、ハ、ワタシ、ト、イッショ。イッショニ、ユメ、ヲ、メザセル。マイニチ、ヲ、タノシメル。ココニ、イラ、レル」
「そうね。余計な物と者を気にせず、プロを目指せるわね」
「貴方様の居場所は、二度と脅かされる事はありません。御自分がやりたいように、動けます。過ごせます」
「ソレ、ガ、シアワセ。タノシイ。ウレシイ。トメテ、クレテ、アリガトウ。タスケテ、クレテ、アリガトウ。アリガトウ。アリガトウ」
負霊は更に嬉し涙を零して頭を何度も下げ、そうしていると周りの景色がぼやけ始めました。
これは、タイムリミットの合図。眠っている人間を呼び寄せる行為は、様々な理を曲げる行為。そのため接触できる時間は、本当に極僅かとなっているのです。
「残念だけれど、そろそろお別れの時間ね。お招きいただき感謝するわ」
「貴方様の幸せは、お嬢様、そして自分の幸せでございます。貴方様と同じく、この出来事は生涯忘れません」
「アリガトウ……! アリガトウ……! バイバイ……! バイバイ……! イイヒトニ、デアエテ……。ヨカッタ……!!」
この世界から去り行く2人が、最後に見た光景。それは、ラケットとボールを幸せそうに掲げる負霊の姿。
エリスと蓮は、本当に。本当に幸せそうな『もう一人の橋本涼子』に笑みを返し、夢から現(うつつ)へと戻ったのでした――。
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