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第8話 切っ掛けは部室で(3)
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「皆さん、これがわたしが所持していた理由です。納得していただけたでしょうか?」
「うん。あたしは、納得したよ」
「ワタシも。加藤さんは、そういう人だもんね」
部員達は次々に顎を引き、疑惑の目は一つまた一つと消えてゆきます。そしてソレを入れ替わる形で、尊敬の視線が注がれるようになりました。
「百合ちゃんって、人間が出来てるよね。ウチだったら無理だよ」
「ね~。勝手に開けて読んで、みんなに回しちゃうよね」
この学校内――特に女子テニス部内では、涼子=悪という認識が強くなっていました。そのためこういった会話も発生するようになり、部室内の空気はどんどんと、百合にとって良い方向へと変わってゆきます。
「ユリ、変な目で見てゴメン。さっきはすみませんでした」
「部長さん、お気になさらないでください。客観的に見ると本当に不自然な出来事で、わたしが逆の立場だったら、絶対に同じ反応をしてしますから。お顔を上げてください」
「……ありがとね、ユリ。じゃあ、せめてもお詫び。この手紙は、あたしがリョウコに渡しておく――え……」
しかし――。百合にとって良い方向への変化は、突如ストップ。
右手で持っていた手紙を見ていた飯島早苗の動きが止まり、まるで石像のように全身が硬直しました。
「??? 部長さん?」
「な、なに? 早苗、どしたの?」
「早苗センパイっ? どうしたんですか?」
「…………ココ。封筒の裏側の、封筒を留めてる部分あるでしょ? そこ、なんだけどさ……。その隙間から何かがちょっぴりはみ出てて、引っ張ってみたら黒い髪が出てきたんだよね……」
中にある便箋が出ないよう、蓋となる部分。そこから顔を覗かせていたのは、毛先にやや癖のある長い長い黒髪。
作成者であるはずの橋本涼子とは、違う色の髪がはみ出ていたのです。
((髪の毛!? うっ、嘘……!? 留めた時には何もなかったのに!? どうして挟まったの!?))
すっかり余裕綽々となっていた百合の心は、180度回転。再び鼓動が加速し、部室内はざわつきはじめます。
「リョーコは髪が茶色がかってるし、ショートカット。こんなに、二十数センチもない……」
「で、でも……っ。中からはみ出てたってことは、書いた人ので確定です、よね……。だ、だったら……」
「これを書いたのは、別人、になっちゃいますよね……。そ、それと、この髪って……」
「「「「「うん……」」」」」
2年生部員が周囲を見回すと、仲間達は一斉に同調。一度改めて挟まっている長髪を見たあと、その目線は仲良く右斜め前へと注がれました。
「「「「「この色と、長さとクセ。これって、加藤(加藤さん)(ユリ)(百合)(百合さん)のだよね」」」」」
「うん。あたしは、納得したよ」
「ワタシも。加藤さんは、そういう人だもんね」
部員達は次々に顎を引き、疑惑の目は一つまた一つと消えてゆきます。そしてソレを入れ替わる形で、尊敬の視線が注がれるようになりました。
「百合ちゃんって、人間が出来てるよね。ウチだったら無理だよ」
「ね~。勝手に開けて読んで、みんなに回しちゃうよね」
この学校内――特に女子テニス部内では、涼子=悪という認識が強くなっていました。そのためこういった会話も発生するようになり、部室内の空気はどんどんと、百合にとって良い方向へと変わってゆきます。
「ユリ、変な目で見てゴメン。さっきはすみませんでした」
「部長さん、お気になさらないでください。客観的に見ると本当に不自然な出来事で、わたしが逆の立場だったら、絶対に同じ反応をしてしますから。お顔を上げてください」
「……ありがとね、ユリ。じゃあ、せめてもお詫び。この手紙は、あたしがリョウコに渡しておく――え……」
しかし――。百合にとって良い方向への変化は、突如ストップ。
右手で持っていた手紙を見ていた飯島早苗の動きが止まり、まるで石像のように全身が硬直しました。
「??? 部長さん?」
「な、なに? 早苗、どしたの?」
「早苗センパイっ? どうしたんですか?」
「…………ココ。封筒の裏側の、封筒を留めてる部分あるでしょ? そこ、なんだけどさ……。その隙間から何かがちょっぴりはみ出てて、引っ張ってみたら黒い髪が出てきたんだよね……」
中にある便箋が出ないよう、蓋となる部分。そこから顔を覗かせていたのは、毛先にやや癖のある長い長い黒髪。
作成者であるはずの橋本涼子とは、違う色の髪がはみ出ていたのです。
((髪の毛!? うっ、嘘……!? 留めた時には何もなかったのに!? どうして挟まったの!?))
すっかり余裕綽々となっていた百合の心は、180度回転。再び鼓動が加速し、部室内はざわつきはじめます。
「リョーコは髪が茶色がかってるし、ショートカット。こんなに、二十数センチもない……」
「で、でも……っ。中からはみ出てたってことは、書いた人ので確定です、よね……。だ、だったら……」
「これを書いたのは、別人、になっちゃいますよね……。そ、それと、この髪って……」
「「「「「うん……」」」」」
2年生部員が周囲を見回すと、仲間達は一斉に同調。一度改めて挟まっている長髪を見たあと、その目線は仲良く右斜め前へと注がれました。
「「「「「この色と、長さとクセ。これって、加藤(加藤さん)(ユリ)(百合)(百合さん)のだよね」」」」」
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