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第19話 一年後 俯瞰視点(2)
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「なんだ? どうしたのだレオン」
「………………………………」
「? レオン? ねえレオン? 聞こえているの?」
「??? 兄上……?」
「お、おーい。ど、どうしちゃったのっ? 何か言ってよっ」
「………………………………その様子だと、みんなには聞こえていない……。やっぱり、俺だけなのか……」
突然周囲を見回し始め、頭を押さえていたレオン。彼は家族を見て、不安げに息を吐き出しました。
「……嘘みたいな話なんだが、事実だ。実は急に、どこからか――最初は気付かなかったが、こいつは恐らく頭に直接響いてきている。低い男の声が、聞こえてきたんだよ」
「なんだと……!? その声は、今も聞こえているのか……?」
「いいや……。『我(われ)の声が聞こえるな?』と響いてきたきりで、それからは何も聞こえ――また聞こえてきました!」
《聞こえているようだな。ならいい。お前たち5人に話がある》
頭の中に響いている言葉を、そのまま家族に伝えました。
「まっ、また聞こえて来た。『訳あって、全員に念を送れぬ。さりとて声の共有は出来る故、全員で手を繋ぐがいい』と言っている……。『お前達にとって最高に良いことが聞けるぞ』とも、言っていて……。ど、どうします……?」
「良いこと、というものが気になる。言う通りにしてみようじゃないか」
「そうね」「そうですね」「そうだね」
満場一致。順番に手を繋いでゆき、5人の円を作りました。
《これでお前達全員に我の声が聞けるようになった。早速だが――》
「待ちたまえ! 先に確認しておきたい。お主は誰だ!? なぜこんな異様な芸当をできるのだ!? なんのために話しかけているのだ!?」
《…………はあ。我は声を遮られることが特に嫌いでな、本来なら八つ裂きにしてやるところだが――今日は特別だ。不問に付そう》
激しい苛立ちを嘆息で吐き出し、謎の声は続けます。
《我は、そうだな。お前達が理解しやすい名を名乗るとするならば、『邪神』だ》
「「「「「邪神!? 邪神って、あの邪神!?」」」」」
《ああ、その邪神だ。この国に呪いを振り撒いている存在、その精神体だ》
かつてこの国に危機をもたらし、今も呪いを発生させ続けている邪神。彼は285年前に勇者よって討たれたことで肉体を失っており、精神だけの状態となっているのです。
285年前からずっと、ヒッソリと潜伏し続けていたのでした。
「………………………………」
「? レオン? ねえレオン? 聞こえているの?」
「??? 兄上……?」
「お、おーい。ど、どうしちゃったのっ? 何か言ってよっ」
「………………………………その様子だと、みんなには聞こえていない……。やっぱり、俺だけなのか……」
突然周囲を見回し始め、頭を押さえていたレオン。彼は家族を見て、不安げに息を吐き出しました。
「……嘘みたいな話なんだが、事実だ。実は急に、どこからか――最初は気付かなかったが、こいつは恐らく頭に直接響いてきている。低い男の声が、聞こえてきたんだよ」
「なんだと……!? その声は、今も聞こえているのか……?」
「いいや……。『我(われ)の声が聞こえるな?』と響いてきたきりで、それからは何も聞こえ――また聞こえてきました!」
《聞こえているようだな。ならいい。お前たち5人に話がある》
頭の中に響いている言葉を、そのまま家族に伝えました。
「まっ、また聞こえて来た。『訳あって、全員に念を送れぬ。さりとて声の共有は出来る故、全員で手を繋ぐがいい』と言っている……。『お前達にとって最高に良いことが聞けるぞ』とも、言っていて……。ど、どうします……?」
「良いこと、というものが気になる。言う通りにしてみようじゃないか」
「そうね」「そうですね」「そうだね」
満場一致。順番に手を繋いでゆき、5人の円を作りました。
《これでお前達全員に我の声が聞けるようになった。早速だが――》
「待ちたまえ! 先に確認しておきたい。お主は誰だ!? なぜこんな異様な芸当をできるのだ!? なんのために話しかけているのだ!?」
《…………はあ。我は声を遮られることが特に嫌いでな、本来なら八つ裂きにしてやるところだが――今日は特別だ。不問に付そう》
激しい苛立ちを嘆息で吐き出し、謎の声は続けます。
《我は、そうだな。お前達が理解しやすい名を名乗るとするならば、『邪神』だ》
「「「「「邪神!? 邪神って、あの邪神!?」」」」」
《ああ、その邪神だ。この国に呪いを振り撒いている存在、その精神体だ》
かつてこの国に危機をもたらし、今も呪いを発生させ続けている邪神。彼は285年前に勇者よって討たれたことで肉体を失っており、精神だけの状態となっているのです。
285年前からずっと、ヒッソリと潜伏し続けていたのでした。
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