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第11話 もう一つの断罪(4)

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「う、うそでしょ……? うそ、だよね……?」

 たまらず乾いた笑いを浮かべるミントですが、見間違いではありません。じわじわと迫っている2つの顔は――黒い煙の奥でうっすらと見えている顔は、間違いなく2人のものでした。

「「※※※※※※※※※※※※※!!」」
「じゃ、じゃあ……。も、もしかして……。もしかして……っ。コイツらは――」
「うむ、そうだ。その化け物は、貴様が求めていた者達だ」

 邸内に突如声が響き、ミントの傍に長身の美男が現れました。彼は、魔王アルド・カーチス。
 今宵の『余興』の、演出家です。

「会いたかった者たちと、再会できてよかったな? 折角どちらも目と鼻の先にいるのだ。心ゆくまで触れ合うがよい」
「「※※※※※※※※※※※※※!!」」
「いやっ!! いやぁぁっ!! こんなのっ、パパとママじゃない!! 止めてっ! お願いっ! コイツらをとめぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 今のミントは、家族の安否なんてどうでもいい。自分が助かれば、それでいい。
 左右の手で異形の顔を押し、必死に遠ざけようとします。

「なんでもっ、言うことを聞くからっ! 欲しいものはなんでもあげるからっ! 止めてっ! このままじゃっっ、何かされるぅからぁっ!! とめぇぇぇつ!!」
「ふっ、実にゲスらしい反応だ。……この悪心は、よい『土台』となりそうだな」

 アルドは不気味に口元を緩め、ぱちん。右の指を軽く鳴らすと、異形の動きは止まりました。

「「…………………………」」
「う、動かない!? もう動かないの!? ほんとうに!? うそじゃない!? じゃないっ!?」
「「…………………………」」
「う、動かない! 大丈夫!! はあ、はあ、はあ、はあ……っ! よ、よかった……。たす、かった……」

 止まった異形は直立不動のままなため、ミントは大の字になって安堵の涙と息を零します。
 これが、余興の終わり――即ち、絶望の始まりだとは知らずに。

「『よかった』?、否。誰が助けると言った? 貴様に待つは、こやつらと同じ道。終焉と再誕だ」
「お、同じ……。それって……」

 こんな風に、なる。
 異形を見上げたミントは、石像の如く固まりました。
 これは、アルドの魔術ではありません。尋常ではない衝撃が、四肢の自由を奪ってしまったのです。

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