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第8話 号泣(3)
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「ど、どうしてここに……? ラウネさんは……?」
「あやつは、あのまま返した。ここからは俺が適役だからな」
カーチスさんはふぅと小さく息を吐き、みんなを順番にゆっくりと撫でた後、あたしを正面から見つめた。
「とはいえ、ことを起こす前に行うべきことがある。……サーラよ。貴様の長所は、時として短所となり得るのだ」
「ぇ……? どう、いう……?」
「思い遣りに溢れる、それは立派なことだ。されど、過ぎたるは及ばざるが如し。想い過ぎて己を抑え込んでしまっては、自はもとより他も悲しませてしまうのだぞ」
ミケ、サバ、チャ、キジ、グレ、サビ、シロ、クロ。静かに8匹を眺め回し、また視線があたしに戻る。
「心配をかけないようにする。それも、立派なことだ。しかしながら此度は、他が、大切な家族がだぞ。『曝け出して』と、『自分達に心配をさせてくれ』と言っているではないか。貴様ならソレが、よく分かるはずだ」
「……………………」
「貴様がそうであるように、こやつらも貴様を想っているのだ。そんな気持ちを無下にすることこそ、『駄目』なのではないか?」
「……………………っ」
「サーラよ。貴様は、頑張り過ぎなのだ」
ぽん、と。そっと、優しく、頭に手が載せられる。
その手は、氷のように冷たいのに……。とっても、とっても温かくって……。
勝手に、涙が零れてきた。
「とある知人曰く、『たまには息抜きをしないと壊れる』だそうだ。……貴様には、その資格が十二分にある。家族のためにも息抜きを行い、出し切るがいい」
「……は、ぃ……。そ、ぅ、ですね……っ。そう、します……っ」
「「「「「「「「にゃあっ! にゃぁぁっ!」」」」」」」」
ミケ、サバ、チャ、キジ、グレ、サビ、シロ、クロ。返事をしたら、みんなが一斉に飛びついてきてくれて。
出てくる涙は、『零れる』から『溢れる』になった。
「「「「「「「「にゃあっ! にゃぁぁっ! にゃぁぁぁぁっ!」」」」」」」」
「みんな……ありがとう……っ。ごめん、ね……っ。みんなに、甘えさせて、もらう、ね……っ」
ミケ、サバ、チャ、キジ、グレ、サビ、シロ、クロ。みんなをギュッと抱き締めて、その瞬間、感情が爆発した。
きっと、そのせいなんだと思う。
自分がどんなことを口にして、どんな風に泣いたのか、全く覚えていない。
だけど。
8つの温かい感触と優しい鳴き声があったことは、ちゃんと覚えていて――。
今の心は、スッキリ。体のどこにも、『負』はなくなっていたのでした。
「あやつは、あのまま返した。ここからは俺が適役だからな」
カーチスさんはふぅと小さく息を吐き、みんなを順番にゆっくりと撫でた後、あたしを正面から見つめた。
「とはいえ、ことを起こす前に行うべきことがある。……サーラよ。貴様の長所は、時として短所となり得るのだ」
「ぇ……? どう、いう……?」
「思い遣りに溢れる、それは立派なことだ。されど、過ぎたるは及ばざるが如し。想い過ぎて己を抑え込んでしまっては、自はもとより他も悲しませてしまうのだぞ」
ミケ、サバ、チャ、キジ、グレ、サビ、シロ、クロ。静かに8匹を眺め回し、また視線があたしに戻る。
「心配をかけないようにする。それも、立派なことだ。しかしながら此度は、他が、大切な家族がだぞ。『曝け出して』と、『自分達に心配をさせてくれ』と言っているではないか。貴様ならソレが、よく分かるはずだ」
「……………………」
「貴様がそうであるように、こやつらも貴様を想っているのだ。そんな気持ちを無下にすることこそ、『駄目』なのではないか?」
「……………………っ」
「サーラよ。貴様は、頑張り過ぎなのだ」
ぽん、と。そっと、優しく、頭に手が載せられる。
その手は、氷のように冷たいのに……。とっても、とっても温かくって……。
勝手に、涙が零れてきた。
「とある知人曰く、『たまには息抜きをしないと壊れる』だそうだ。……貴様には、その資格が十二分にある。家族のためにも息抜きを行い、出し切るがいい」
「……は、ぃ……。そ、ぅ、ですね……っ。そう、します……っ」
「「「「「「「「にゃあっ! にゃぁぁっ!」」」」」」」」
ミケ、サバ、チャ、キジ、グレ、サビ、シロ、クロ。返事をしたら、みんなが一斉に飛びついてきてくれて。
出てくる涙は、『零れる』から『溢れる』になった。
「「「「「「「「にゃあっ! にゃぁぁっ! にゃぁぁぁぁっ!」」」」」」」」
「みんな……ありがとう……っ。ごめん、ね……っ。みんなに、甘えさせて、もらう、ね……っ」
ミケ、サバ、チャ、キジ、グレ、サビ、シロ、クロ。みんなをギュッと抱き締めて、その瞬間、感情が爆発した。
きっと、そのせいなんだと思う。
自分がどんなことを口にして、どんな風に泣いたのか、全く覚えていない。
だけど。
8つの温かい感触と優しい鳴き声があったことは、ちゃんと覚えていて――。
今の心は、スッキリ。体のどこにも、『負』はなくなっていたのでした。
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