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番外編 バレンタインデー当日のトラブルと、もう一つのバレンタインデー(1)

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 今日は2月14日。好きな人、愛する人にチョコレートを贈る、バレンタインデーです。
 しかも今年のバレンタインデーは、2人で過ごす初めてのバレンタインデー。なので気合を入れて何日も前から計画を立てていて、今回はマティアス君のためにフォンダンショコラを作ることにしました。

「よっし。まずはマティアス君と一緒に朝ご飯を作って、お昼に準備を始めて……。おやつの時間に、食べてもらいましょう」

 今の時間は、午前7時過ぎ。いつも通りの時間に目覚めた私は頭の中でスケジュールを確認して、ベッドから降り――

「??? あれ……? 今日は、いつもより寒い……?」

 ベッドから降りていたら、背中がゾクゾクっとしました。
 窓の外は快晴で、お日様の光がたくさん差し込んでいます。この天気なら今の季節でもポカポカしてるのに、不思議ですね。

「こんなに晴れているのに、寒気がするなんて。珍しい天気」

 窓からお空を眺めてくすっと笑い、パジャマから室内用のお洋服に着替えます。そして最後にもう1枚カーディガンを羽織り、お部屋を出てキッチンスペースに向かう。
 今日は、2人で一緒に朝ご飯を作る日。今朝は何にしようかな? と考えながら廊下を進んで、

「おはようございます。マティアス君」

 キッチンに入ると、すでにそこにいた大好きな人に朝の挨拶を行います。
 マティアス君は、本当に優しい人。こうして共同で作る日は、もともと朝が弱い私のために、先に起きてフライパンなどの準備をしてくれているんです。

「おはよう、イリス。今日は一緒に、何を作ろうか――…………」

 支度に対するお礼に爽やかな笑みを返してくれていた、マティアス君。ですがすぐに笑顔が引っ込み、早歩きでこちらに歩いてきました。
 ??? どうしたのでしょうか?

「服装もそうだし、イリスの目がいつもよりトロンとしているね。…………もしかして、朝起きたら寒気がしなかった?」
「う、うん、したよ。こんなに晴れてるのに、珍しい日だよね」
「……いや、今日の気温は普通だよ。ということは――やっぱり、思った通りだ。頭が熱いね」

 マティアス君の素敵な顔が近づいてきて、オデコとオデコがそっとコツン。5秒ほどで離れると、ひぁっ!? 私はそのまま、お姫様抱っこをされてしまいました。

「この熱さだと、体温が37度・1~2度程度まで上昇している。起床後の反応、瞳や呼吸から推測するに、風邪の初期段階だね」
「えっ!? か、風邪……。それじゃあ……」
「うん。今日は一日、ゆっくりと休む日にしよう。これ以上、風邪が進行してしまわないようにね」

 そうして私は今来た道を戻り、優しくベッドに寝かされ、ふわふわのお布団をそっとかけられたのでした。

((…………ど、どうしましょう……))

 今日は、2人きりになって初めてのバレンタインデーなのに……っ。チョコレートを作れなくなってしまいました……。

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