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第19話 身勝手な者の末路その3~佐々岡春奈の場合~ 俯瞰視点(1)

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「電気! ネット! スマホ! 地下鉄! んーっ、サイコー!」

 異世界ラクリナルズを捨てて日本に帰ってから、9時間後。帰国記念にたっぷりと遊んで帰って来た春奈は、自室のベッドに飛び込みながら感嘆の息を漏らしました。
 遠くへの移動も簡単にできてしまえるし、調べたいことがあれば数タップで調べられるし、買いたい物は大抵すぐに買えてしまえる。などなど。ラクリナルズでは到底不可能だったことが当たり前にあるため、改めて地球の――現代の偉大さに感心していました。

「ずっとあんな縄文時代みたいな生活をしてきたヤツらはいいけど、今を生きてる人にはムリムリ。あんな場所で暮らしてたらストレスで死んじゃうっての。戻って来て大正解っ」

 仰向けでスマホを弄りながら笑顔を咲かせ、春奈は更に久々の『日常』を満喫してゆきます。

「あっちにいる時はWiFiも5Gもなくって、アプリを開いても再生されなかったのよね~」

 お気に入りのチャンネルが投稿している動画や、ライブ配信を楽しんだり。

「おいし~! こっちだったら、チンしただけでピザやハンバーグができるんだよねぇ。必死になって料理してあのマズさ、バッカみたい」

 一階にあるキッチンに行ってお気に入りの冷凍食品を食べたり、両親が買ってきた人気店のチーズケーキを食べたり。

「そうそう! うん、見たみた! あたしもアイツムリ、キモすぎ」

 アプリ通話を利用して高校の友人と連絡を取り、共有の嫌いな人間の悪口を言って笑い合ったり。

 ラクリナルズではできなかったことを夜が更けるまで行い、午前2時ごろようやく眠りにつき――ましたが、日が昇るとすぐにまた『楽しい時間』がやって来ます。

「あら、随分と早いわね。春奈、どこか出かけるの?」
「月__#(るな)と遊びにいくの。いってきます」

 幸いにも地球は30分程度しか時間が経過しておらず、前から約束していた友人との買い物を行ったり。友達の女子5人と男子5人でカラオケをしたり。
 朝も夜も昼も楽しいことだらけで、春奈はずっと満面の笑みを浮かべていた――のですが――


「はぁー、ダル。ラクリナルズあっちに戻りたくなってきちゃった」


 ――帰国してから、2週間が経った頃でした。いつも上機嫌だった春奈の顔から笑顔が消え、自室のベッドにて大きなため息をついたのでした。
 なぜ、180度変わっているのかというと――

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