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第10話 尽きることない不満 俯瞰視点(3)
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((……この世界、飽きちゃった。日本に戻れないかしら))
いつでもどこでもチヤホヤされる。何でも言うことを聞かせられる。
地球で女子高生だった頃にはなかったものがありますが、同時に、女子高生だった頃にはあったもの――電気、スマホ、インターネット、ファストフードなどがない。なかでもSNSがない日常はあまりにも不便かつ苦痛で、春奈は地球に戻る方法を考え始めていたのでした。
((べた褒めとか何でも言うことを聞くヤツがいなくなるのは痛いけど、国内も国外も日本に比べたら全然つまんない。田舎よりも田舎なんだもん。こんなの江戸時代レベルよ。無理無理、もう無理。早く日本に戻らないとストレスで死んじゃうってば))
周囲にストレスをばら撒いている春奈は大きくため息を吐き、神殿内にある書庫に向かいます。
そこには聖女に関する記録が大量に保管されていて、そこに帰国する方法があるかもしれない――。神殿長に相談したら逃がさないように、あってもないと言うはずだから自分で探さないと――。と、考えたのです。
((聖女に覚醒したら、色んなことが自動的にインプットされるらしいけど……あたしは外から来たから、インプットがないのよね。はぁ、使っかえない仕組み))
心の中で文句を言いながら、分厚い本のページを捲っていき――
((ビンゴ! あった!!))
――探し始めてから7時間後に方法を発見し、即座に準備を始めました。
((ええと、なになに……。神殿にある魔法陣…………? ああ、祈りを捧げてるあれね。あれの中心に立って、『故郷に帰りたい』と願えばいいのね))「よしっ」
「聖女様? いかがなさいましたか?」
「今日祈りを捧げた時に、落とし物をしたみたいなの。それを探しに来たの」
「そうでしたか。わたくしめがお手伝いを――」
「いいから! アンタは外にいなさい!」
偶然入り口の前で出会った神殿長を追い出して部屋に入り、
((地球に戻りたい! 日本に戻りたい!))
魔法陣の中央に立って願いを込めると、眩しい発光と共に目の前に大きな渦が――かつて偶然迷い込んだ、『次元の狭間』が現れたのでした。
「聖女様!? 謎の光がありましたがだいじ――そちらは!?」
「あたし、こっちの暮らしに飽きたから日本に戻ることにしたの。バイバイ」
「そんな!? お待ちください!! このままでは国が大変なことになってしまいますっっ!!」
「そんなの知らないわよ。前聖女がどこかに居るはずだから、探して戻って来てもらえばいいでしょ。ふふ、頑張ってね~」
そうして佐々岡春奈はこの国を去り――
「春奈が元の世界に戻っただと!? くそっ、隠しておけばよかった――なんて言っている場合じゃない! しゅっ、シュザンヌだ!! シュザンヌを探すんだ!!」
――すぐさま、前任の聖女の大捜索が始まったのでした。
いつでもどこでもチヤホヤされる。何でも言うことを聞かせられる。
地球で女子高生だった頃にはなかったものがありますが、同時に、女子高生だった頃にはあったもの――電気、スマホ、インターネット、ファストフードなどがない。なかでもSNSがない日常はあまりにも不便かつ苦痛で、春奈は地球に戻る方法を考え始めていたのでした。
((べた褒めとか何でも言うことを聞くヤツがいなくなるのは痛いけど、国内も国外も日本に比べたら全然つまんない。田舎よりも田舎なんだもん。こんなの江戸時代レベルよ。無理無理、もう無理。早く日本に戻らないとストレスで死んじゃうってば))
周囲にストレスをばら撒いている春奈は大きくため息を吐き、神殿内にある書庫に向かいます。
そこには聖女に関する記録が大量に保管されていて、そこに帰国する方法があるかもしれない――。神殿長に相談したら逃がさないように、あってもないと言うはずだから自分で探さないと――。と、考えたのです。
((聖女に覚醒したら、色んなことが自動的にインプットされるらしいけど……あたしは外から来たから、インプットがないのよね。はぁ、使っかえない仕組み))
心の中で文句を言いながら、分厚い本のページを捲っていき――
((ビンゴ! あった!!))
――探し始めてから7時間後に方法を発見し、即座に準備を始めました。
((ええと、なになに……。神殿にある魔法陣…………? ああ、祈りを捧げてるあれね。あれの中心に立って、『故郷に帰りたい』と願えばいいのね))「よしっ」
「聖女様? いかがなさいましたか?」
「今日祈りを捧げた時に、落とし物をしたみたいなの。それを探しに来たの」
「そうでしたか。わたくしめがお手伝いを――」
「いいから! アンタは外にいなさい!」
偶然入り口の前で出会った神殿長を追い出して部屋に入り、
((地球に戻りたい! 日本に戻りたい!))
魔法陣の中央に立って願いを込めると、眩しい発光と共に目の前に大きな渦が――かつて偶然迷い込んだ、『次元の狭間』が現れたのでした。
「聖女様!? 謎の光がありましたがだいじ――そちらは!?」
「あたし、こっちの暮らしに飽きたから日本に戻ることにしたの。バイバイ」
「そんな!? お待ちください!! このままでは国が大変なことになってしまいますっっ!!」
「そんなの知らないわよ。前聖女がどこかに居るはずだから、探して戻って来てもらえばいいでしょ。ふふ、頑張ってね~」
そうして佐々岡春奈はこの国を去り――
「春奈が元の世界に戻っただと!? くそっ、隠しておけばよかった――なんて言っている場合じゃない! しゅっ、シュザンヌだ!! シュザンヌを探すんだ!!」
――すぐさま、前任の聖女の大捜索が始まったのでした。
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