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第9話 いくつもの予想外 シュザンヌ視点
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「美しい緑と気持ちの良い木漏れ日と、かわいらしい鳥さんのさえずり。とても素敵な場所ですね」
「ここも、シュザンヌに見てもらいたかった場所だったんだ。気に入ってもらえてよかったよ」
クロヴィスさんのご家族にご挨拶をさせていただいたり、コザレイティア侯爵邸で暮らすようになったり、コザレイティア家の財団の一員になったり、孤児院などのお手伝いをしたり。慌ただしくも幸せに満ちた第二の人生が始まってから、ちょうど3か月後。わたし達は久しぶりのお休みを利用して、お屋敷から北に30キロほど離れた『ヴァトロースタの森』という場所を訪れていました。
「お手紙でこちらのお話を聞いてからずっと気になっていて、よく頭の中で景色を思い浮かべていました。その通り――それ以上に清々しく心地の良い場所で、心も身体も癒されます」
「僕も小さな頃からよく、心身が疲れた時はここに来てリフレッシュをしていたんだ。切り株に座って木漏れ日を見上げたり鳥の姿や鳴き声を楽しんだりしながら、屋敷から持ってきた好物を食べていたんだよ」
クロヴィスさんは前方にある切り株、真上、そして――護衛の方が持ってくださっているバスケットを順に見回し、懐かし気に目を細めました。
クロヴィスさんおススメの場所で、クロヴィスさんおススメの方法でくつろぐ。
そちらが今日の過ごし方で、今回はちょっとした追体験を行うことになっているんです。
「そうだね…………今日はこの辺りがよさそうだ。どうぞ、シュザンヌ」
「ありがとうございます」
クロヴィスさんが切り株の上に敷いてくださったシートに腰を下ろし、まずは横並びで座って周囲を眺めます。
立っている時と座っている時の景色って、同じものを見ているはずなのに全然違うんですね。
森に包まれているような感覚になり、より安らぎを得られます。
「あそこに生えている赤い実は食べられる実で、砂糖煮にするととても美味しいんだ。あとで採らせてもらおう」
「そうなんですね。はい、楽しみです」
「今あっちの枝に留まった尻尾の先が赤い鳥は『ラークエル鳥(どり)』といって、この辺りにしか生息していないんだ。ザッカールスで最も鳴き声が美しい鳥、と言われているよ」
「確かに、綺麗な声ですね。高くて澄んでいて、柔らかさがあって……楽器みたいです」
ヴァトロースタの森の達人であるクロヴィスさんから、色々なことを教えてもらう。この森に詳しくなりながら楽しく時を過ごし、1時間ほどが経ったら、わたし達は新しいことを始めます。
それは――
「そろそろ、ランチにしようか。シェフがかなり力を入れて用意をしてくれているし、なにより今日はシュザンヌ特製のお菓子もある。楽しみで――それらを楽しむのは、少しあとになりそうだ」
「……はい。そう、ですね……」
――それはお昼ご飯だったのですが……。バスケットへと伸びていた手が止まり、クロヴィスさんはわたしをそっと抱き寄せてくださりました。
なぜ突然、このようなことになったのかというと――
「「「「「聖女様! 聖女シュザンヌ様っ!! 貴方様にお願いしたいことがございますっっ!!」」」」」
――祖国ラクリナルズの紋章を身につけた男性6人が――王に仕える非常に高い身分の方を3名も含む集団が、血相を変えて現れたからです。
お願いしたい、こと……?
なんなのでしょう……?
「ここも、シュザンヌに見てもらいたかった場所だったんだ。気に入ってもらえてよかったよ」
クロヴィスさんのご家族にご挨拶をさせていただいたり、コザレイティア侯爵邸で暮らすようになったり、コザレイティア家の財団の一員になったり、孤児院などのお手伝いをしたり。慌ただしくも幸せに満ちた第二の人生が始まってから、ちょうど3か月後。わたし達は久しぶりのお休みを利用して、お屋敷から北に30キロほど離れた『ヴァトロースタの森』という場所を訪れていました。
「お手紙でこちらのお話を聞いてからずっと気になっていて、よく頭の中で景色を思い浮かべていました。その通り――それ以上に清々しく心地の良い場所で、心も身体も癒されます」
「僕も小さな頃からよく、心身が疲れた時はここに来てリフレッシュをしていたんだ。切り株に座って木漏れ日を見上げたり鳥の姿や鳴き声を楽しんだりしながら、屋敷から持ってきた好物を食べていたんだよ」
クロヴィスさんは前方にある切り株、真上、そして――護衛の方が持ってくださっているバスケットを順に見回し、懐かし気に目を細めました。
クロヴィスさんおススメの場所で、クロヴィスさんおススメの方法でくつろぐ。
そちらが今日の過ごし方で、今回はちょっとした追体験を行うことになっているんです。
「そうだね…………今日はこの辺りがよさそうだ。どうぞ、シュザンヌ」
「ありがとうございます」
クロヴィスさんが切り株の上に敷いてくださったシートに腰を下ろし、まずは横並びで座って周囲を眺めます。
立っている時と座っている時の景色って、同じものを見ているはずなのに全然違うんですね。
森に包まれているような感覚になり、より安らぎを得られます。
「あそこに生えている赤い実は食べられる実で、砂糖煮にするととても美味しいんだ。あとで採らせてもらおう」
「そうなんですね。はい、楽しみです」
「今あっちの枝に留まった尻尾の先が赤い鳥は『ラークエル鳥(どり)』といって、この辺りにしか生息していないんだ。ザッカールスで最も鳴き声が美しい鳥、と言われているよ」
「確かに、綺麗な声ですね。高くて澄んでいて、柔らかさがあって……楽器みたいです」
ヴァトロースタの森の達人であるクロヴィスさんから、色々なことを教えてもらう。この森に詳しくなりながら楽しく時を過ごし、1時間ほどが経ったら、わたし達は新しいことを始めます。
それは――
「そろそろ、ランチにしようか。シェフがかなり力を入れて用意をしてくれているし、なにより今日はシュザンヌ特製のお菓子もある。楽しみで――それらを楽しむのは、少しあとになりそうだ」
「……はい。そう、ですね……」
――それはお昼ご飯だったのですが……。バスケットへと伸びていた手が止まり、クロヴィスさんはわたしをそっと抱き寄せてくださりました。
なぜ突然、このようなことになったのかというと――
「「「「「聖女様! 聖女シュザンヌ様っ!! 貴方様にお願いしたいことがございますっっ!!」」」」」
――祖国ラクリナルズの紋章を身につけた男性6人が――王に仕える非常に高い身分の方を3名も含む集団が、血相を変えて現れたからです。
お願いしたい、こと……?
なんなのでしょう……?
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