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第1話 佐々岡春奈の怒り 俯瞰視点
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((ムカつく……! なんなのよアイツら……!))
日本からやって来た女子高生・佐々岡春奈は、激しく苛立っていました。
ギリギリと歯ぎしりをして、自室の寝具――ふかふかのベッドに枕を何度も叩きつけている理由。それは、周囲から――神殿内で働く人間や国民から、聞こえてくる声にありました。
――シュザンヌ様とは違う――。
――シュザンヌ様の方が――。
そういった『二人の聖女』を比較する声が耳に入ってくるため、『悪い方』に見られている春奈は激昂していたのです。
ですがそれは、自業自得。仕方がないことでした。
「……隔週で3時間も祈りを捧げないといけないなんて、メンドクサイ……。やるっていったけどやっぱナシ。あたしはこの世界に来たばっかりで不慣れなんだし、シュザンヌちゃんにやらせましょ」
「ねえ! あたし、こんな貧乏くさい部屋に住みたくない。別のもっと綺麗な場所で暮らすようにして、必要な時だけ神殿に来るようにするわ」
「孤児院とか病院とかに、慰労に行かないといけないの? 今日はそんな気分じゃないからパス。神殿の人間を適当に行かせておいて。その人にわたしからのメッセージを読ませておげば、孤児院や病院にいる連中も喜ぶでしょ」
「なにこれマズっ!? よくもまあこんな料理を出せるわね! さっさと作り直しなさいっ! ……なにその目? なんか文句あるの!? あたしは聖女様なのよっ!?」
などなど。
最初こそ謙虚だったものの、すぐに本性が出始める。想像以上に崇められる存在になっていると理解するや自己中心的な言動が曝け出されるようになり、好き勝手に振る舞う。
謙虚で思いやりのあるシュザンヌとは言動が180度違うため、評価も180度異なるものになっていたのでした。
((どいつもこいつも、シュザンヌシュザンヌシュザンヌ……!! しかもアイツもアイツよ……!! 絶対にワザとやってる……! あたしを利用して、自分の評判をより上げようとしてるんだわ……!!))
『「平穏の祈り」を任せたいと佐々岡様が仰っている、ですか? もちろん構いませんよ。まだまだ不慣れでしょうし』
『慰労はわたしが参りますよ。佐々岡様がこちらの暮らしに慣れるまでは、全部わたしに回してください』
『わたしも聖女になったばかりの時は、何度も戸惑いました。しかも佐々岡様は、異世界の方。わたしより遥かに大変で、とても苦労されているはずです』
『人も聖女も支え合い。困った時はお互い様。むしろ、即座に就任を受け入れてくださった佐々岡様に感謝しなければなりません』
などなど。
春奈は我が儘で別行動をしているため――時々しか会わないためシュザンヌは春奈の本性や発言をまったく知らず、春奈が使った言い訳・不慣れを信じて善意で動いていました。ですが春奈にはソレらが『他意あり』に映り、シュザンヌにも――むしろ、比較対象かつ『自分を利用している』シュザンヌを最も憎むようになっていたのです。
((……もう我慢の限界よ……!! そっちがその気なら、あたしはアントナン殿下を使うんだから……!!))
この国の王太子アントナンは春奈の容姿に一目惚れしており、春奈はそれにすぐ気付いた――その感情を利用して距離を詰め、必要な準備が整ったらが婚約をすると約束させていた――すっかり籠絡させていました。
そのため『お願いを喜んで聞いてくれる操り人形』に会いに行き、
「シュザンヌのせいで、何度も嫌な思いをしていて……。シュザンヌを解任して欲しいんです」
「……なるほど」
「シュザンヌが居なくなれば余計な声が消えて、集中できるようになる――聖女の勤めもしっかりできるようになります。お願いします、殿下」
「…………分かった! 君の敵は俺の敵だからね、手配をしておくよ」
そういったやり取りが交わされ、国王と王妃は所謂親バカなため、あっさりとシュザンヌ・モファクーナの解任が決まってしまったのでした。
日本からやって来た女子高生・佐々岡春奈は、激しく苛立っていました。
ギリギリと歯ぎしりをして、自室の寝具――ふかふかのベッドに枕を何度も叩きつけている理由。それは、周囲から――神殿内で働く人間や国民から、聞こえてくる声にありました。
――シュザンヌ様とは違う――。
――シュザンヌ様の方が――。
そういった『二人の聖女』を比較する声が耳に入ってくるため、『悪い方』に見られている春奈は激昂していたのです。
ですがそれは、自業自得。仕方がないことでした。
「……隔週で3時間も祈りを捧げないといけないなんて、メンドクサイ……。やるっていったけどやっぱナシ。あたしはこの世界に来たばっかりで不慣れなんだし、シュザンヌちゃんにやらせましょ」
「ねえ! あたし、こんな貧乏くさい部屋に住みたくない。別のもっと綺麗な場所で暮らすようにして、必要な時だけ神殿に来るようにするわ」
「孤児院とか病院とかに、慰労に行かないといけないの? 今日はそんな気分じゃないからパス。神殿の人間を適当に行かせておいて。その人にわたしからのメッセージを読ませておげば、孤児院や病院にいる連中も喜ぶでしょ」
「なにこれマズっ!? よくもまあこんな料理を出せるわね! さっさと作り直しなさいっ! ……なにその目? なんか文句あるの!? あたしは聖女様なのよっ!?」
などなど。
最初こそ謙虚だったものの、すぐに本性が出始める。想像以上に崇められる存在になっていると理解するや自己中心的な言動が曝け出されるようになり、好き勝手に振る舞う。
謙虚で思いやりのあるシュザンヌとは言動が180度違うため、評価も180度異なるものになっていたのでした。
((どいつもこいつも、シュザンヌシュザンヌシュザンヌ……!! しかもアイツもアイツよ……!! 絶対にワザとやってる……! あたしを利用して、自分の評判をより上げようとしてるんだわ……!!))
『「平穏の祈り」を任せたいと佐々岡様が仰っている、ですか? もちろん構いませんよ。まだまだ不慣れでしょうし』
『慰労はわたしが参りますよ。佐々岡様がこちらの暮らしに慣れるまでは、全部わたしに回してください』
『わたしも聖女になったばかりの時は、何度も戸惑いました。しかも佐々岡様は、異世界の方。わたしより遥かに大変で、とても苦労されているはずです』
『人も聖女も支え合い。困った時はお互い様。むしろ、即座に就任を受け入れてくださった佐々岡様に感謝しなければなりません』
などなど。
春奈は我が儘で別行動をしているため――時々しか会わないためシュザンヌは春奈の本性や発言をまったく知らず、春奈が使った言い訳・不慣れを信じて善意で動いていました。ですが春奈にはソレらが『他意あり』に映り、シュザンヌにも――むしろ、比較対象かつ『自分を利用している』シュザンヌを最も憎むようになっていたのです。
((……もう我慢の限界よ……!! そっちがその気なら、あたしはアントナン殿下を使うんだから……!!))
この国の王太子アントナンは春奈の容姿に一目惚れしており、春奈はそれにすぐ気付いた――その感情を利用して距離を詰め、必要な準備が整ったらが婚約をすると約束させていた――すっかり籠絡させていました。
そのため『お願いを喜んで聞いてくれる操り人形』に会いに行き、
「シュザンヌのせいで、何度も嫌な思いをしていて……。シュザンヌを解任して欲しいんです」
「……なるほど」
「シュザンヌが居なくなれば余計な声が消えて、集中できるようになる――聖女の勤めもしっかりできるようになります。お願いします、殿下」
「…………分かった! 君の敵は俺の敵だからね、手配をしておくよ」
そういったやり取りが交わされ、国王と王妃は所謂親バカなため、あっさりとシュザンヌ・モファクーナの解任が決まってしまったのでした。
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