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第9話 ローランス湖での悲劇 ローズ視点(1)

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((現在時刻は午前11時49分っ。あたしが乗っている馬車は今、2人の馬車をこっそりつけていま~すっ))

 次の日、いよいよ当日。天気も姉さんを祝福(笑)しているみたいで、快晴。雲一つない空の下を馬車は走っていて、運命との時は着々と近づいていってますっ。
 姉さんにとっての執行場こと、ローランス湖まではもうすぐ。あと5分もすれば着いちゃいま~す。

((9時過ぎに出発したから、2時間と半分くらいだね。車内で姉さんは、どんな風に過ごしてたのかな~?))

 不本意ながら長年傍で暮らしてきたあたしが分析すると、

『フェリックスさんとたっぷりお喋りができて、楽しいです……っ』

『ローランス湖には、いろんな鳥さんが居るんですよね。一緒に、バードウォッチングをしませんか?』

((今日のお弁当……。フェリックスさん、喜んでくれるかな……?))

 こんな感じ。
 向かいの席にいる人が愛しているのはあたしで、フェリックス兄さんは全然楽しくなんてないのにっ。
 鳥が沢山いるエリアは西側で、そっちには向かわないのにっ。
 お昼ご飯の前に決別宣告をされるから、お弁当どころじゃないのにっ。
 ニコニコソワソワしてる姉さん。ホント哀れ。可哀想だなぁ~。

((で・も。姉さんは、あたしが欲しいと言っても一度もいうコトを聞かなかった、心の狭い女。同情の余地はなし))

 な・の・で。陰からバッチリ楽しませてもらいま~すっ。
 って心の中でニシシッと笑っていたら、ずっと動いていた馬車が停まった。これは目的地に到着の合図で、あたしは急いで馬車を降りる。
 尾行している影響で2人は先行してて、遅れたら肝心のシーンを見逃しちゃうもんね。帽子とマスクと伊達メガネで変装をして、動き出す。

((フェリックス兄さんと姉さんは……………………いたいたっ))

 何が起きるか知らない姉さんは楽しそうに笑い、横並びで道を進んでいる。
 しばらくは一本道で、もう少ししたら道が2つに分かれる。右が北側、左が南側へと続く道で、姉さんは右に進むと思っているよね?


 ザンネン。


 左側を、進んじゃうんだよね~。

((まずは、前菜。その際の表情に、注目だね))

 あたしから見て、30メートルくらい前。並んで進んでいた2人が分岐点にたどり着いて、揃って看板を確認してる。
 さあ、さあフェリックス兄さんっ! 進んじゃおっ。言っちゃおっ。
 せーのっ、


「僕らは東から来たから、右の道で合ってるね。さあ、進もう」


 ぼぇぃ!?
 兄さんは右の道って言って、北側へと進み始めた!?
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