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第4話 今度こそ、魅了を成功させる! けど、え……? ローズ視点(1)

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「姉さん、フェリックス様。クローゼットを整理していたら、手相占いの本を見つけたの。占わせてもらってもいいですか?」

 魅了失敗の原因を理解したあたしは、ガーデンテーブルにいる2人に本を広げてみせた。
 突然触れたら、何かを疑われるかもしれない。賢いあたしはソコをしっかり対策してて、今回はこのやり方で魔法をかけるんだよねっ。

「じゃあまずは、姉さんから視てみるね」

 フェリックス様は、姉さんを優先する人。それに今度こそ成功しちゃうから、特別にサービスしてあげる。

「うん。よろしくお願いします」
「はーいっ。えっとね…………」

 この線が、生命線で……。こっちにある線が、へぇ。太陽十字っていうんだ。
 それで……。ここが財運線で…………。そっちが結婚線で――

「ぐぇ!?」

 ――姉さんの手を見ていたら、無意識的に変な声が出てしまった。
 な、なんなの、この人……っ。良い意味を持つ線はバカみたいに長くて、悪い意味を持つ線はビックリするぐらい短かったり、そもそもなかったりしてる!
 嘘みたいに完璧な手相を、持ってる……。

「ろ、ローズ? どうしたのかな? 私の手相、そんなに酷い?」
「う、ううん、普通だよ普通。悪く見えたのは勘違いで、よくも悪くもなかったよ」

 正直に伝えるのは悔しいから、適当に答えてはいお仕舞い。気を取り直して次は本命、フェリックス様の番。

「フェリックス様。手を出してくれますか?」
「……………………」
「フェリックス様? どうかされましたか?」

 あたしのことを、じーっと見てる。
 ??? どうしたんだろ?

「……………………フェリックス兄さんでも、単にお兄さん、兄さんでも構わない。もし君さえよければ、様ではなく『兄』をつけてくれないかな?」
「ぇ……?」

 急になに言い出すの、この人。様付けじゃなくて、兄付け?
 ………………よく分からないけど、まいっか。さっさと進めたいし、希望に応えとこ。

「……ローズちゃ――いや、僕は敢えて親しみを込めて呼び捨て現状維持がいいね。ローズ、駄目かな?」
「い、いえ、ぜひそうさせてください。フェリックス兄さん」
「ローズ、ありがとう。これからもよろしく頼むよ」
「は、はい。で、では、始めますね」

 やけにニコニコしながら差し出された手を、少し困惑しながら取って、

(クピドの矢に射抜かれよ)

 はいっ。詠唱お仕舞いっ。
 途中から再開した場合は即効果が出るみたいだから、今度こそしっかり魅了されちゃったっ! 姉さん、もうすぐはじまるよぉ。婚約者からの突然ポイ、がね。

「フェリックス兄さんも、かなり良い手相を持ってます。この本によると、これから先はもっと良い人生になるみたいですよ」

 そうして手相を見終えると、あたしはすぐにお辞儀をしてこの場を去るようにする。
 で・も。この人はあたしが気になって仕方がなくなってるから、姉さんじゃなくてあたしと2人きりになりたくなってる。さあ、引き留めてっ! 姉さんの前で、あたしを求めてっっ!

「姉さん、フェリックス兄さん。失礼します」
「うん、ありがとうローズ。楽しかったよ」
「素敵な時間をありがとう。今日は美味しいスイーツを持って来ているから、よかったらあとで一緒に食べようね」

 フェリックス兄さんは姉さんと共に手を振って、締めに、無駄に穏やかに目尻を下げて微笑んだ。
 …………………………ぁれ?
 引き留め、られない?

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