クローンだった私と、兄

柚木ゆず

文字の大きさ
上 下
5 / 11

しおりを挟む
「え……。どういう、こと……? 私は今、中学1年生なのに……。どう、なってるの……?」

 自分の遺影を凝視しながら、何度も何度も目を瞬かせる。
 写真の中の私は小学生で、ここにいる私は中学生。この時に死んでいるのなら、小学校を卒業できていないし中学校に入学できない。
 でも私は、卒業式も入学式も済ませている。……どういう、こと……?

「お父さんとお母さんの、イタズラ……。は、ないよね……」

 こんなの、イタズラに収まるレベルじゃない。その可能性は、ない。

「じゃ、じゃあ、どうして……? どうしてこんなものがここに――ぁっ。日記帳が、ある」

 動揺していて気付かなかったけど、遺影の下に二人の日記帳があった。
 これを、読めば……。きっと、全て分かる……。

「今は、プライバシーとか言ってる場合じゃない……。お父さんお母さん……。読ませて、もらうよ……」

 緑色のカバーがついたものを恐る恐る手に取り、怖々開いてみる。そうして私はその中にある膨大な量の文字を読み、絶望的な後悔をする事になった。


 こんなもの、開かなければよかった――。
 ううん、そうじゃない――。
 大きな音がしても、気にしなければよかった――。


 どうしてそんなことを、強く強く思っているのか。どうして、時間が巻き戻せたらと心から願っているのか。
 その理由は、知ってしまったから。

 私は。
 この私は。
 佐々木春香だけど、佐々木春香じゃない。
 ここにいる私は、佐々木春香のクローンだったのだと。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

思春期のテロリスト

Emi 松原
ライト文芸
突然愛する恋人を目の前で殺され、この国の実態を知らされた主人公のエミ。 エミは復讐者となり、恋人のいた組織に入る。 復讐の連鎖は止まるのか。 軽い残酷表現有りの為、R15指定にしています。

Husband's secret (夫の秘密)

設樂理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! 夫のカノジョ / 垣谷 美雨 さま(著) を読んで  Another Storyを考えてみました。 むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

俺と向日葵と図書館と

白水緑
ライト文芸
夏休み。家に居場所がなく、涼しい図書館で眠っていた俺、恭佑は、読書好きの少女、向日葵と出会う。 向日葵を見守るうちに本に興味が出てきて、少しずつ読書の楽しさを知っていくと共に、向日葵との仲を深めていく。 ある日、向日葵の両親に関わりを立つように迫られて……。

峽(はざま)

黒蝶
ライト文芸
私には、誰にも言えない秘密がある。 どうなるのかなんて分からない。 そんな私の日常の物語。 ※病気に偏見をお持ちの方は読まないでください。 ※症状はあくまで一例です。 ※『*』の印がある話は若干の吸血表現があります。 ※読んだあと体調が悪くなられても責任は負いかねます。 自己責任でお読みください。

雨の庭で来ぬ君を待つ【本編・その後 完結】

ライト文芸
《5/31 その後のお話の更新を始めました》 私は―― 気付けばずっと、孤独だった。 いつも心は寂しくて。その寂しさから目を逸らすように生きていた。 僕は―― 気付けばずっと、苦しい日々だった。 それでも、自分の人生を恨んだりはしなかった。恨んだところで、別の人生をやり直せるわけでもない。 そう思っていた。そう、思えていたはずだった――。 孤独な男女の、静かで哀しい出会いと関わり。 そこから生まれたのは、慰め? 居場所? それともーー。 "キミの孤独を利用したんだ" ※注意……暗いです。かつ、禁断要素ありです。 以前他サイトにて掲載しておりましたものを、修正しております。

『Goodbye Happiness』

設樂理沙
ライト文芸
2024.1.25 再公開いたします。 2023.6.30 加筆修正版 再公開しました。[初回公開日時2021.04.19]       諸事情で7.20頃再度非公開とします。 幸せだった結婚生活は脆くも崩れ去ってしまった。 過ちを犯した私は、彼女と私、両方と繋がる夫の元を去った。 もう、彼の元には戻らないつもりで・・。 ❦イラストはAI生成画像自作になります。

ご主人様と僕

ふじゆう
ライト文芸
大切なペットが、飼い主になつくまでの60日間。 突然、見知らぬ場所へやってきた犬のナツは、疑心暗鬼であった。 時には、苛立ちながらも、愛情を注ぐ飼い主。 次第に、ナツの心は、解放されていく。

好きすぎて、壊れるまで抱きたい。

すずなり。
恋愛
ある日、俺の前に現れた女の子。 「はぁ・・はぁ・・・」 「ちょっと待ってろよ?」 息苦しそうにしてるから診ようと思い、聴診器を取りに行った。戻ってくるとその女の子は姿を消していた。 「どこいった?」 また別の日、その女の子を見かけたのに、声をかける前にその子は姿を消す。 「幽霊だったりして・・・。」 そんな不安が頭をよぎったけど、その女の子は同期の彼女だったことが判明。可愛くて眩しく笑う女の子に惹かれていく自分。無駄なことは諦めて他の女を抱くけれども、イくことができない。 だめだと思っていても・・・想いは加速していく。 俺は彼女を好きになってもいいんだろうか・・・。 ※お話の世界は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。 ※いつもは1日1~3ページ公開なのですが、このお話は週一公開にしようと思います。 ※お気に入りに登録してもらえたら嬉しいです。すずなり。 いつも読んでくださってありがとうございます。体調がすぐれない為、一旦お休みさせていただきます。

処理中です...