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第18話 リッダジア家の震撼 俯瞰視点(1)

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「………………………」

 広々とした豪奢な建物、力と歴史あるリッダジア家所有のリッダジア侯爵邸。そこのエントランスでは、この屋敷の主であるアダムが崩れ落ちていました。
 呑気にコーヒーを飲んで息子の帰りと吉報を待っていた、彼。そんな人間がこうなっている理由、それは――

 マーティン捕縛。

 ――そんなニュースが、王家の使者によって届けられたからです。

「あのヴィクターという調律師が、レオナード殿下……!? バカな……。そんなバカな……!! あり得ない……!!」

 彼は筆頭侯爵家の当主なため、兄弟3人が協力して治めてゆくと知っていました。
 これから国を担う者の一人が、プロの調律師になっていた。それは荒唐無稽な話なのですが、目の前には王族の使者がいます。そのため認めざるを、得ませんでした。

「い、いや……! だが……!! それでも、やはりおかしい……!! 公務を遂行しながら調律師――それも一流の調律師になるなんて不可能だ……!!」

 最低でも2000時間の勉強が必要で、加えて様々な経験値が要る。ヴィクターを調査した際そんな話を耳にしており、アダムは何度も何度も首を左右に振りました。

「どうなっている!? そんなこと人間にはできない――そうか! 分かったぞ!! これは夢だ!! 悪夢を見ているだけなんだ!!」

 そう確信した彼は勢いよく自らの頬を抓り、「ぎやあ!?」。ここは悪夢などではなく現実世界なため、痛みを感じ悲鳴を上げました。

「そ、そんな……。これが、現実だなんて……。で、では……。では……っ! これからわたしは…………」
「さようでございます。アダム・リッダジア殿。貴方様を待っているのは、強制的な贖罪・・でございます」

 魂が籠っていないように感じる、初老の男性。使者ルークは淡々とそう告げ、それを合図に大柄な男性2人による――治安局員による連行が始まりました。

「や、やめろ!! やめてくれっ!! 離せっ! だっ、誰かっ! 助けろっ! 助けてくれぇぇぇぇ!!」

 アダムは四肢を動かし抵抗しますが、仲間であるトム、ミゲイル、ザックスも拘束されてしまっています。そのためまずは治安局へと運ばれ、

「父上!!」
「マーティンっ!!」

 ――2人は、5時間ぶりの再会を果たします。そしてその後は――

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