24 / 51
第10話 恐怖の対面と、戸惑い マーティン&???視点(2)
しおりを挟む
「おーばん、さま……? なにを、おっしゃって……?」
「それは、こちらの台詞だよ。マーティン、君は何を言っているんだい?」
口をポカンと開けていると、再び困惑された顔がやって来た。
オーバン様は……。本当に、あの言葉の意味が分かっていない……!?
「あ、あれ? あ、あのっ、お、オーバン様! 今日はっ、あの件っ! ステラ・レンダユスの件でいらっしゃったのではないのですか……⁉」
「? いいや、違うよ。一昨日のパーティーで――妙な噂によって、君が落ち込んでいただろう? そこで様子を窺いに来たのさ」
………………………………。
違う。違っていた。俺や父上の想像は、まるで違っていた。
オーバン様は、あの件を追求しにいらしたのではなかった!!
学院時代からの友をっ、俺をっ、案じてくださっていただけだったんだ!!
「あ、あはははは。あははははは。そ、そうだったのですね。あはははははははは」
「そうなのだけど――罪。あれは何だい? 君は何かしていたのかい?」
「いっ、いえっ! なんでもございませんっ!! おっ、お忘れください!!」
抜群の情報網をお持ちなこの方が、俺達が工作したという噂さえも把握していない。ということは、ステラは誰にも訴えていないこということ。
だったら正直に白状する必要はなく、俺は必死に誤魔化し始めて――やがて無事、その話題を終わらせることに成功したのだった。
「ごめんよ、マーティン。オレが何か勘違いをさせてしまったようだ」
「とんでもございませんっ。ご配慮痛み入りますっ!」
「…………その様子なら、心配は要らなさそうだ。ならばオレは、失礼するよ」
「はっ、はいっ! ご迷惑をおかけいたしましたぁ!!」
そうして俺――父上も飛び出してきてお見送りを行い、ミデザトル公爵家の馬車が見えなくなるやその場に崩れ落ちる。そして、
「よかった……。よかったな、マーティンよ……!」
「奇跡です……! 奇跡が起きました……!!」
俺達は安堵により失禁しながら抱き合い、喜びの涙を流し続けたのだった――。
〇〇〇
「オーバン、ありがとう。恩に着るよ」
「とんでもございません。貴方様が一つ目の問題発生時に出国されていたのは、わたくし達が原因。今回はその際にいただいた大きな御恩を、ほんの少しお返しできただけでございますよ」
マーティンと父アダムが大量に失禁した、3時間後。ミデザトル公爵邸内にあるサロンでは、2人の美男が言葉を交わしていました。
「あの男の目元にははっきりとしたクマがあり、随分とやつれていました。貴方様の狙い通り、ステラ様絡みと思い込み1晩怯えていたようですね」
「ステラ様に行ったことが、今度は自分の身に返ってきた。因果の応報が成立したね」
「あの様子だと、通常は懲りて大人しくなるものです。しかしながら彼の場合は」
「無事だと分かれば、すぐに調子を取り戻すだろうね。だから今頃――」
「それは、こちらの台詞だよ。マーティン、君は何を言っているんだい?」
口をポカンと開けていると、再び困惑された顔がやって来た。
オーバン様は……。本当に、あの言葉の意味が分かっていない……!?
「あ、あれ? あ、あのっ、お、オーバン様! 今日はっ、あの件っ! ステラ・レンダユスの件でいらっしゃったのではないのですか……⁉」
「? いいや、違うよ。一昨日のパーティーで――妙な噂によって、君が落ち込んでいただろう? そこで様子を窺いに来たのさ」
………………………………。
違う。違っていた。俺や父上の想像は、まるで違っていた。
オーバン様は、あの件を追求しにいらしたのではなかった!!
学院時代からの友をっ、俺をっ、案じてくださっていただけだったんだ!!
「あ、あはははは。あははははは。そ、そうだったのですね。あはははははははは」
「そうなのだけど――罪。あれは何だい? 君は何かしていたのかい?」
「いっ、いえっ! なんでもございませんっ!! おっ、お忘れください!!」
抜群の情報網をお持ちなこの方が、俺達が工作したという噂さえも把握していない。ということは、ステラは誰にも訴えていないこということ。
だったら正直に白状する必要はなく、俺は必死に誤魔化し始めて――やがて無事、その話題を終わらせることに成功したのだった。
「ごめんよ、マーティン。オレが何か勘違いをさせてしまったようだ」
「とんでもございませんっ。ご配慮痛み入りますっ!」
「…………その様子なら、心配は要らなさそうだ。ならばオレは、失礼するよ」
「はっ、はいっ! ご迷惑をおかけいたしましたぁ!!」
そうして俺――父上も飛び出してきてお見送りを行い、ミデザトル公爵家の馬車が見えなくなるやその場に崩れ落ちる。そして、
「よかった……。よかったな、マーティンよ……!」
「奇跡です……! 奇跡が起きました……!!」
俺達は安堵により失禁しながら抱き合い、喜びの涙を流し続けたのだった――。
〇〇〇
「オーバン、ありがとう。恩に着るよ」
「とんでもございません。貴方様が一つ目の問題発生時に出国されていたのは、わたくし達が原因。今回はその際にいただいた大きな御恩を、ほんの少しお返しできただけでございますよ」
マーティンと父アダムが大量に失禁した、3時間後。ミデザトル公爵邸内にあるサロンでは、2人の美男が言葉を交わしていました。
「あの男の目元にははっきりとしたクマがあり、随分とやつれていました。貴方様の狙い通り、ステラ様絡みと思い込み1晩怯えていたようですね」
「ステラ様に行ったことが、今度は自分の身に返ってきた。因果の応報が成立したね」
「あの様子だと、通常は懲りて大人しくなるものです。しかしながら彼の場合は」
「無事だと分かれば、すぐに調子を取り戻すだろうね。だから今頃――」
12
お気に入りに追加
832
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
私から略奪婚した妹が泣いて帰って来たけど全力で無視します。大公様との結婚準備で忙しい~忙しいぃ~♪
百谷シカ
恋愛
身勝手な理由で泣いて帰ってきた妹エセル。
でも、この子、私から婚約者を奪っておいて、どの面下げて帰ってきたのだろう。
誰も構ってくれない、慰めてくれないと泣き喚くエセル。
両親はひたすらに妹をスルー。
「お黙りなさい、エセル。今はヘレンの結婚準備で忙しいの!」
「お姉様なんかほっとけばいいじゃない!!」
無理よ。
だって私、大公様の妻になるんだもの。
大忙しよ。
陛下から一年以内に世継ぎが生まれなければ王子と離縁するように言い渡されました
夢見 歩
恋愛
「そなたが1年以内に懐妊しない場合、
そなたとサミュエルは離縁をし
サミュエルは新しい妃を迎えて
世継ぎを作ることとする。」
陛下が夫に出すという条件を
事前に聞かされた事により
わたくしの心は粉々に砕けました。
わたくしを愛していないあなたに対して
わたくしが出来ることは〇〇だけです…
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
妹の事が好きだと冗談を言った王太子殿下。妹は王太子殿下が欲しいと言っていたし、本当に冗談なの?
田太 優
恋愛
婚約者である王太子殿下から妹のことが好きだったと言われ、婚約破棄を告げられた。
受け入れた私に焦ったのか、王太子殿下は冗談だと言った。
妹は昔から王太子殿下の婚約者になりたいと望んでいた。
今でもまだその気持ちがあるようだし、王太子殿下の言葉を信じていいのだろうか。
…そもそも冗談でも言って良いことと悪いことがある。
だから私は婚約破棄を受け入れた。
それなのに必死になる王太子殿下。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる