unison~元婚約者様へ。私は決して、復縁はいたしません~

柚木ゆず

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第5話 焦りと、問題の発生 マーティン視点(2)

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「『マーティンとオリーヴは秘密裏に交際をしていた』『先日発生したステラとの婚約解消は、オリーヴへの心変わりを原因とするものだった』。この2つの噂が、急激な速度で広がりはじめているのですっ!!」
「「…………………………」」

 ダンゼルの悲鳴にも似た大声によって、俺の――いや、俺達の思考回路は十数秒間停止してしまった。
 あの出来事が、漏れている……!? しかも、急速に広まっている……!?

「どうやら昨夜にはすでに、噂が立ち始めていたようでして……。事が事、話題の相手が相手だからなのでしょうね……。貴族界は勿論のこと、市井にも……。恐るべき速度で、広がりつつあるもようです……」
「ば、バカな……。なぜだ……!? なぜマーティンの噂が広まっている……!?」
「噂を聞きつけた者が、報告の前に調査をしておりまして。オリーヴおよびベルスレール伯爵家当主が、噂の発生源付近で行動していたようなのです。あの者達が広めたという証拠はありませんが――」
「証拠はなくても決まりだろうが!! ヤツらの仕業だ!!」
「あの女……。俺に捨てられたことが悔しくて、共倒れにするつもりか……!!」

 自分も大きなダメージを受けてしまうものの、それでも一泡吹かせられるから――。そんな理由で、噂をばら撒き始めたんだ。

「くそっ、くそっ!! まさかアイツが、こんな手段を使うだなんて……!」

 予想外、だ……。
 大変なことに、なってしまった……。

「……マーティンよ……。噂は、非常に厄介だ……」

 それは、よく分かっている。知っている。
 だからステラを婚約者にする際に、ソレを使ったのだから……。

「こちらが否定しても、この手のものはなかなか消えん……。このあと妙案が見つかり、仮にステラ嬢が婚約を望んだとしても……。貴族界が、市井が、世間が、国が許さないだろう……。あの手この手でステラ嬢の説得を試み、復縁は不可能となるだろう……」
「そうなっては、駄目だ……。そうならないようにするには………………おいっ、お前達っ! そっちの件は一旦ストップだ! 最優先事項ができたんだ!!」

 そこで俺達はすぐさま作戦会議室に戻り、ブレイン達に考えさせる。
 そうすれば………………今度は、役に立った。僅か数分で良い方法が提示されたのだった。

「なるほど。それだ! それでいこう!!」

『マーティン様にまったく振り向いてもらえなかったから、悔しくて嘘を広めようとした』。ヤツらを『逆らえれば殺す』と脅し、大勢の前でそう謝罪を行わせる。こうしておけば、簡単に鎮まる。

「よしっ、すぐに向かわせ――オリーヴのもとには、俺が直々に行ってやろうじゃないか」

 この怒りは、直接ぶつけないと収まりそうにない。そこで俺はブレイン達に思案を任せ、馬車に乗り込み、ベルスレール邸を目指したのだった。

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