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第20話 昨夜の出来事~お願い~ 俯瞰視点

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「ヴァイオレット様およびヴァイオレット様に近しい方の動向を、当分の間注視していただきたく思います」

 パーティーが終了し、去り際に当主レオンに声をかけたアリシア。彼女はその直後、こういった要望を口にしていました。

「娘と、娘に近しい者を……? アリシア嬢、そこにはどういった理由があるのかな?」
「申し訳ございません。そちらは諸事情により、お伝えすることができません」

 上質なローストビーフ。貴重な生演奏。ムカデのブローチ。エッグタルト。意図せずとはいえ沢山の良い思い出やお土産を得たため、敢えて詳細は伏せておきました。

「ですがそちらは、非常に大事なものでございます。どうか、よろしくお願い致します」
「う、うむ、分かった。目を光らせておこうじゃないか」

 アリシアの目が真剣かつ、一切の濁りがなかったこと。ソレによって父レオンは頷きを返し、早速秘密裏に観察を始めました。
 そうしてそんなものがスタートしてから、8時間後のことでした。ヴァイオレットが目を覚まして昨夜の出来事を思い出し、


『…………わたくしの計画を、沢山の努力を無駄にして……。更には、新しい幸せを手に入れていて……。その上、わたくしをこんな目に遭わせるだなんて……』

『イリスっ! 大至急マードックを呼びなさいっ!』


 本来それは室外には聞こえない声でしたが、レオンが警戒をしていたため全てが筒抜けとなります。そのためマードックは『共犯』なのだと悟られてしまい、

「マードック。お主は何かしら、隠し事をしているようだな?」

 と、レオンにより尋問をされてしまいます。

「いっ、いえっ、滅相もございません! 旦那様に隠し事などございませんっ!」
「そうか。ならば、ヴァイオレットとの会話を聞かれても問題はないのだな?」
「…………え…………?」
「扉の前で、お主たちのやり取りを聞かせてもらう。さあ、娘のもとへと向かうがいい」

 そしてこういったことになり、マードックは先ほど到着に7分もかかってしまい――。どうにかしてレオンに真相を悟られないように――共倒れを防ぐために、あんなにも必死になって口パクを行っていたのです。
 しかしながら、

『ああもうっ、全然分かりませんわ!! もういいから声にしなさいっ!! わたくしは早くアリシアに復讐をしたいんですの!! 作戦台無しとボロボロにされられたお返しを一秒でも早く怒りをぶつけたいんだからっ、そんなことをせずに作戦を練りなさい――な、なんなんですの……!?』

 マードックの努力むなしく、『アリシアに復讐』『作戦台無し』と口にしていました。ですのでレオンは確信を持ち、こうして姿を現していたのでした――。

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