愛の力があれば何でもできる、11年前にそう言っていましたよね?

柚木ゆず

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エピローグ テランスとヴェロニクのその後 俯瞰視点

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「皆様、お待たせいたしました! 本日のメインイベントのお時間となりました!」

 あれから半年後。テランスとヴェロニクの姿は、祖国から3つ離れた国内にある建物の中にありました。
 怪しげな森の中にある館。その中にあるサーカス会場の内部によく似た造りの、奇妙な仮面をつけた者だけが客席を埋めている異様な空間。
 そんな場所に集う客の視線が集まるステージの上に、2人は立っていました。

「元貴族の男女は、今日は一体どんな試練に挑戦するのでしょうか~? その答えは、ドンッ! 泥水一気飲みです!!」

 たった半年しか経っていないはずなのに、随分と老けてしまったテランスとヴェロニクの2人。そんな彼らの前に、泥水がなみなみと注がれた大ジョッキが置かれました。

「その名の通り、今日はこの泥水を飲み干してもらいます~! あっさり飲みきってしまうのか? それとも苦労するのか? どんなドラマが待っているのでしょうか~? それでは、スタートですっ!!」
「「皆様に楽しんでいただけるようにっ、精一杯頑張ります!!」」

 360度をぐるりと見回しながら深々と腰を折り曲げ、ジョッキを握って勢いよく飲み始めました。

「ごぶ!?」
「ごぼ!?」

 しかしながら中身は汚らしい泥水なため、口に入った液体は勢いよく口から飛び出してしまいました。

「おげ……! おげええ……!!」
「おぇぇ……! おぇええ……!!」
「ぷっ! はははははは!! あーはっはっは!!」
「あれが元貴族様だってぇ!? 高貴な血が流れている人間の姿とは思えないなぁ!」
「くふふ。なんて滑稽なのかしら」
「物心ついた時は、こんな未来予想していなかったでしょうねえ。なんて愉快なのかしら」

 その姿を見て観客たちは大笑いし、ひとしく愉悦に浸ります。

 ここは、成金――それも、貴族に劣等感を持つ者が集う場所。
 貴族の血が流れている人間に様々な課題を出し、苦しむ姿を見て愉しむ場所。

 この施設のオーナーは『ショー』に出せる人間を高値で買い取っていて、万が一何かしらがあっても一切自分達は罪に問われなくなったため、ジルズとローベルは2人を売る。そうしてテランスとヴェロニクは、この施設の一員となってしまっていたのです。

「こら!! さっさと飲め!!」
「いつまで休んでるんだ! 早くしろ!!」
「も、申し訳ございません。……ごぶ! おえぇ……。ごく……おぇ……ごく……おぇ……」
「も、申し訳ございません。……ぶ!? ぼえ…………ごく……ぼぇ……ごく……ぼぇ……」

 こんなことはしたくない。したくないけれど、逆らうと殺されてしまう。
 そのため今日も、明日も、明後日も、その先も、ずっと。いつまでも。テランスとヴェロニクは生ある限り、こんな地獄のような環境の中で過ごしていかないといけなくなってしまったのでした――。
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