19 / 21
第9話 すべての裏側 俯瞰視点
しおりを挟む「まてえええええええええええええええ!! まちやがれえええええええええええええええええ――ジルズ、このくらいでいいか」
「そうだな、ローベル。もう充分だろなぁ」
テランスとヴェロニクが必死になって逃走していた頃。その遥か後方では、追いかけていたはずの借金取り2人が突然足を止めました。
「借金の返済をしようとしている俺達の姿と、踏み倒すために逃げ出したアイツらの姿。現地の治安局員に、両方見せられたんだ。あとはアイツらが上手くやってくれるだろうぜぇ」
テランス達の前に現れた2人の目的は、捕縛ではありませんでした。彼らの真の狙いは『違法な行為をしていないか確認してください』と要請をしてこっそり監視をさせていた、この国の局員たちに――完全なる第三者に、一部始終を見せることにありました。
「この国の治安局員の証言が、頼もしい武器になってくれるだろうさ。……これで、準備は殆ど整った。あとは一か月後に、アイツらを捕まえにいくだけだ」
「やっと、ピリオドか。今日まで長かったぜ」
お金を貸してほしいと元貴族の男女が訪ねて来た時、ジルズとローベルはテランス達を見て『コイツらはうまく行かない』と経験則から判断。2人を使って大金を――貸した額の何倍もの金を得るため、策を講じることにしたのでした。
その1。ああいった条件で金を貸し、返済できなくなるまで待つ。
その2。返済できなくなった2人は誰かを頼るものの明らかに脛に傷があって、誰も手を差し伸べない。あとをつけてその場に現れ、拘束具や言葉で誘導して逃走させる。
その3。逃走期間が長ければ長いほど買収した局員が工作しやすくなるため、完璧に行える1か月後に捕まえに行く。
テランスとヴェロニクの知らないところで、そういった計画が出来上がっていたのです。
「ところであの男は、上手くやれんのか? 連れて来てた治安局員が――仲間じゃない方のヤツが増員を要請するって言ってやがってて、アイツらに捕まったら面倒になっちまうぞ?」
「あ~、ガチだと思って捕まえる気満々だったな。だがまぁ、大丈夫だろ。任せろと言ったら安心して任せられる男だからな、トゥーサンは」
『だっ、大丈夫ですか!? いったいどうされたのですか!?』
『ですので、他人事とは思えない。まるで昔の私を見ているようでして。微力ながら手を差し伸べさせてもらいたいと、思っております』
あの出会いから始まった出来事は、すべてが偶然ではなく必然によるもの。トゥーサンはローベルの旧友で、テランスとヴェロニクを――貴重な商品が野盗などに襲われて死なないようにするために、安全な場所で保管しておく役目を担っていたのです。
『こんなことがあるだなんて……! 貴方様は命の恩人です……!!』
『このご恩、忘れません……!!』
故にあのように泣いて喜んでいた2人に、平穏なんて訪れるはずがありません。
調子に乗ってゆったり過ごしている間にも、知らないところで着々と最後の詰めが進行していて――
「よお。久し振りだな」
「会いたかったぜぇ?」
ついに今日、その時が訪れてしまったのでした。
59
お気に入りに追加
241
あなたにおすすめの小説
【完結】愛しい人、妹が好きなら私は身を引きます。
王冠
恋愛
幼馴染のリュダールと八年前に婚約したティアラ。
友達の延長線だと思っていたけど、それは恋に変化した。
仲睦まじく過ごし、未来を描いて日々幸せに暮らしていた矢先、リュダールと妹のアリーシャの密会現場を発見してしまい…。
書きながらなので、亀更新です。
どうにか完結に持って行きたい。
ゆるふわ設定につき、我慢がならない場合はそっとページをお閉じ下さい。
拝啓 私のことが大嫌いな旦那様。あなたがほんとうに愛する私の双子の姉との仲を取り持ちますので、もう私とは離縁してください
ぽんた
恋愛
ミカは、夫を心から愛している。しかし、夫はミカを嫌っている。そして、彼のほんとうに愛する人はミカの双子の姉。彼女は、夫のしあわせを願っている。それゆえ、彼女は誓う。夫に離縁してもらい、夫がほんとうに愛している双子の姉と結婚してしあわせになってもらいたい、と。そして、ついにその機会がやってきた。
※ハッピーエンド確約。タイトル通りです。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
【完結】円満婚約解消
里音
恋愛
「気になる人ができた。このまま婚約を続けるのは君にも彼女にも失礼だ。だから婚約を解消したい。
まず、君に話をしてから両家の親達に話そうと思う」
「はい。きちんとお話ししてくださってありがとうございます。
両家へは貴方からお話しくださいませ。私は決定に従います」
第二王子のロベルトとその婚約者ソフィーリアの婚約解消と解消後の話。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
主人公の女性目線はほぼなく周囲の話だけです。番外編も本当に必要だったのか今でも悩んでます。
コメントなど返事は出来ないかもしれませんが、全て読ませていただきます。
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました
しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。
自分のことも誰のことも覚えていない。
王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。
聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。
なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。
婚約者に心変わりされた私は、悪女が巣食う学園から姿を消す事にします──。
Nao*
恋愛
ある役目を終え、学園に戻ったシルビア。
すると友人から、自分が居ない間に婚約者のライオスが別の女に心変わりしたと教えられる。
その相手は元平民のナナリーで、可愛く可憐な彼女はライオスだけでなく友人の婚約者や他の男達をも虜にして居るらしい。
事情を知ったシルビアはライオスに会いに行くが、やがて婚約破棄を言い渡される。
しかしその後、ナナリーのある驚きの行動を目にして──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
どうぞ、(誰にも真似できない)その愛を貫いてくださいませ(笑)
mios
恋愛
公爵令嬢の婚約者を捨て、男爵令嬢と大恋愛の末に結婚した第一王子。公爵家の後ろ盾がなくなって、王太子の地位を降ろされた第一王子。
念願の子に恵まれて、産まれた直後に齎された幼い王子様の訃報。
国中が悲しみに包まれた時、侯爵家に一報が。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる