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第3話 ふたりの11年間 俯瞰視点(1)
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「いいね。俺達の『城』に相応しい場所だ」
「『元』になってしまったとはいえ、私達は貴族なんですもの。このくらいはないといけませんよね」
テランスとヴェロニクが駆け落ちをしてから、10日後。2人の姿は隣国『レールオールズ』内にある、広々とした豪華な二階建ての建物の中にありました。
ここは、彼らの新居。それぞれの屋敷から持ち出したお金を使い、中古とはいえ平民とは思えないレベルの家を購入していたのです。
「使用人を雇えないのはアレだが、まあ仕方ない。これからも手を取り合い、愛の力で乗り越えていこう」
「はいっ。愛の力さえあれば、なんでもできますもの。私達だけの道を一緒に歩いてゆきましょう!」
こうして分相応という言葉をまるで知らない2人の第二の人生が本格的に幕を開け、言わずもがなこのあとも、分不相応な出来事が続いていきます。
「ヴェロニク。俺達には貴族の高潔な血が流れているんだ。平凡な血が流れている者の下につくような存在ではないよな? 汗水たらして働くような存在でもないよな?」
「絶対に、有り得ません。どちらも違っていて、私達のような人間は歯車ではなくて指揮する立場でいなければなりません」
「そう、そうなんだよ。だから以前から言っていた、アレを立ち上げる」
働かなければいずれお金はなくなってしまう。第二の人生が始まったら働かないといけない、でも、平民如きに雇われてせっせと働きたくはない――。そんな思いがあったため5か月の間にアイディアが練られており、テランスとヴェロニクはまもなく『ブティック』をオープンさせることになるのでした。
「よし、予定通り契約がまとまった。俺達の店の誕生だ!」
同じく持ち出していた貴金属を売って資金とし、それを使って目をつけていたブティックを買収。店舗をそのまま使用する&前任のオーナーを表向きの経営者として据えることで『店舗と設備問題』であり『身分がない自分達では経営できない』問題を解決し、『テラ&ヴェロ』という名の店が生まれました。
「さあ、ヴェロニク。俺達の愛の力を発揮する時だ」
「ええ! 最高の店にしましょう! ふたりで!!」
貴族時代に培った美的感覚や知識を最大限に使用し、センスのあるアイテムを仕入れ販売する。テランスは男性用、ヴェロニクは女性用を担当して前オーナー経由で交渉させて入手し、やがて『テラ&ヴェロ』は開店し――
「さすがヴェロニクだ!」
「さすがテランス様ですわ!」
2人に『センス』はあったため多くの所謂上級平民にウケ、瞬く間に人気店となりました。
――高級感があって映え、まるで貴族のようになれる――。
貴族に憧れる平民はこの国にも多く存在しており、年々来店客の数は増加。それに比例して売り上げもうなぎのぼりで増えていく、のですが――。
「? どうされたのですか?」
「聞いておくれ。良いアイディアがあるんだ」
もっと良い暮らしをするために、もっと儲けたい。早く一生遊んで暮らせる額を稼いで、自由気ままに暮らしたい――。2人の心の中にあるそんな思いが、やがて最悪の事態を引き起こしてしまうのでした。
「『元』になってしまったとはいえ、私達は貴族なんですもの。このくらいはないといけませんよね」
テランスとヴェロニクが駆け落ちをしてから、10日後。2人の姿は隣国『レールオールズ』内にある、広々とした豪華な二階建ての建物の中にありました。
ここは、彼らの新居。それぞれの屋敷から持ち出したお金を使い、中古とはいえ平民とは思えないレベルの家を購入していたのです。
「使用人を雇えないのはアレだが、まあ仕方ない。これからも手を取り合い、愛の力で乗り越えていこう」
「はいっ。愛の力さえあれば、なんでもできますもの。私達だけの道を一緒に歩いてゆきましょう!」
こうして分相応という言葉をまるで知らない2人の第二の人生が本格的に幕を開け、言わずもがなこのあとも、分不相応な出来事が続いていきます。
「ヴェロニク。俺達には貴族の高潔な血が流れているんだ。平凡な血が流れている者の下につくような存在ではないよな? 汗水たらして働くような存在でもないよな?」
「絶対に、有り得ません。どちらも違っていて、私達のような人間は歯車ではなくて指揮する立場でいなければなりません」
「そう、そうなんだよ。だから以前から言っていた、アレを立ち上げる」
働かなければいずれお金はなくなってしまう。第二の人生が始まったら働かないといけない、でも、平民如きに雇われてせっせと働きたくはない――。そんな思いがあったため5か月の間にアイディアが練られており、テランスとヴェロニクはまもなく『ブティック』をオープンさせることになるのでした。
「よし、予定通り契約がまとまった。俺達の店の誕生だ!」
同じく持ち出していた貴金属を売って資金とし、それを使って目をつけていたブティックを買収。店舗をそのまま使用する&前任のオーナーを表向きの経営者として据えることで『店舗と設備問題』であり『身分がない自分達では経営できない』問題を解決し、『テラ&ヴェロ』という名の店が生まれました。
「さあ、ヴェロニク。俺達の愛の力を発揮する時だ」
「ええ! 最高の店にしましょう! ふたりで!!」
貴族時代に培った美的感覚や知識を最大限に使用し、センスのあるアイテムを仕入れ販売する。テランスは男性用、ヴェロニクは女性用を担当して前オーナー経由で交渉させて入手し、やがて『テラ&ヴェロ』は開店し――
「さすがヴェロニクだ!」
「さすがテランス様ですわ!」
2人に『センス』はあったため多くの所謂上級平民にウケ、瞬く間に人気店となりました。
――高級感があって映え、まるで貴族のようになれる――。
貴族に憧れる平民はこの国にも多く存在しており、年々来店客の数は増加。それに比例して売り上げもうなぎのぼりで増えていく、のですが――。
「? どうされたのですか?」
「聞いておくれ。良いアイディアがあるんだ」
もっと良い暮らしをするために、もっと儲けたい。早く一生遊んで暮らせる額を稼いで、自由気ままに暮らしたい――。2人の心の中にあるそんな思いが、やがて最悪の事態を引き起こしてしまうのでした。
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