運命の人と出逢ったから婚約を白紙にしたい? 構いませんがその人は、貴方が前世で憎んでいた人ですよ

柚木ゆず

文字の大きさ
上 下
17 / 27

第10話 今日はどちらの悲願の日? アルチュール視点(1)

しおりを挟む
「…………な……。な…………!?」
「うふふ。自分だけ記憶が蘇ったと思っていたんでしょう? 残念でした。大ハズレよ」
「………………い、いつからだ……。いつから、蘇っていたんだ……!」
「アンタの記憶が蘇る、ほんの少し前よ」

 4人で会った時のワインでの乾杯……。
 あの時にこいつも、記憶が覚醒していた……。

「前世の時とは違って、現世では本当にアンタに特別な何かを感じたのよ。記憶が蘇るまでは『運命の赤い糸』の影響なのだと思っていたけれど、それは違った。わたくし達の間にある、『復讐の黒い糸』がそうさせていたみたいね」
「……………………」
「ねえ、ブリュノ。わたくしはねえ、アンタのせいで人生が一変してしまったの。最悪な人生になってしまったのよ……!」

 知らな、かった。ミレーユはあのあとファトート家を追放され、路頭に迷い、疫病にかかって野垂れ死ぬという最期を迎えていた……。

「……………………」
「あの時アンタが『もう一杯』って勧めてこなければ、あんなことにはならなかった。なにもかも、アンタのせいよ……!!」
「……………………ふっ、ふざけるな!! なにがアンタのせいだ!! 全部お前のせいだろうが!!」

 コイツがウチの金を目当てに近づいて来たからっ、一緒にワインを飲むことになったんだっ!
 コイツが『きっとブリュノ様と一緒に飲んでいるから、こんなにも美味しく感じるんですね』などなど言うからっ、もう一杯という流れになったんだ!
 なにもかも自業自得だ!!

「違う……! 違う……!! そもそもねえっ、アンタがわたくしに興味を持たなかったら始まってないのよ!! 婚約者がいるのに近づいて来たアンタのせいなのよ!!」
「お前が応じなければ始まってないんだよ!! よくもまあ――もういい。余興は終わりだ」

 激しい動揺により忘れてしまっていたが、すでにメインディッシュは目の前に運ばれてきている。
 これ以上こんなクソと話す価値はない。さっさと終わらせ、復讐を完遂させる。

「…………なによ。なんなのよっ! その得意顔は……!!」
「………………ヴィルジニー、いやミレーユ。お前はひとつ、気付いていないことがあるんだよなぁ」

 その言葉を合図に、仲間達は動き出す。


 今お前が座っている場所は、馬の進路だ。


 立っている俺と違って、急に動き出すことはできず――

「終わりだ、憐れに逝くがいい」
「なっ!? きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――って、なると思った?」

 ――…………。

「どう、なってるんだ……?」

 なんで。なんで――


 なにも、起きない!?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されたので、全力で応援することにしました。ふふっ、幸せになってくださいね。~真実の愛を貫く代償~

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

婚約なんてするんじゃなかったが口癖の貴方なんて要りませんわ

神々廻
恋愛
「天使様...?」 初対面の時の婚約者様からは『天使様』などと言われた事もあった 「なんでお前はそんなに可愛げが無いんだろうな。昔のお前は可愛かったのに。そんなに細いから肉付きが悪く、頬も薄い。まぁ、お前が太ったらそれこそ醜すぎるがな。あーあ、婚約なんて結ぶんじゃなかった」 そうですか、なら婚約破棄しましょう。

【4話完結】聖女に陥れられ婚約破棄・国外追放となりましたので出て行きます~そして私はほくそ笑む

リオール
恋愛
言いがかりともとれる事で王太子から婚約破棄・国外追放を言い渡された公爵令嬢。 悔しさを胸に立ち去ろうとした令嬢に聖女が言葉をかけるのだった。 そのとんでもない発言に、ショックを受ける公爵令嬢。 果たして最後にほくそ笑むのは誰なのか── ※全4話

精女には選ばれなかったので追放されました。~えっ?そもそも儀式の場所が間違ってる?~

京月
恋愛
 精霊の加護を持って人々を救う精女に私は…選ばれませんでした。  両親に見捨てられ途方に暮れていた私の目の前に大精霊が現れた。  えっ?そもそも儀式の場所が間違っている?

私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜
恋愛
私の婚約も勉強も、常に邪魔をしてくるおバカさんたちにはもうウンザリですの! 私は私で好き勝手やらせてもらうので、そちらもどうぞ自滅してくださいませ。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

虐げられた第一王女は隣国王室の至宝となる

珊瑚
恋愛
王族女性に聖なる力を持って産まれる者がいるイングステン王国。『聖女』と呼ばれるその王族女性は、『神獣』を操る事が出来るという。生まれた時から可愛がられる双子の妹とは違い、忌み嫌われてきた王女・セレナが追放された先は隣国・アバーヴェルド帝国。そこで彼女は才能を開花させ、大切に庇護される。一方、セレナを追放した後のイングステン王国では国土が荒れ始めて…… ゆっくり更新になるかと思います。 ですが、最後までプロットを完成させておりますので意地でも完結させますのでそこについては御安心下さいm(_ _)m

処理中です...