運命の人と出逢ったから婚約を白紙にしたい? 構いませんがその人は、貴方が前世で憎んでいた人ですよ

柚木ゆず

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第4話 記念すべき席で アルチュール視点(1)

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「ふふふ」
「ふふっ」
「ふふふふ」
「ふふふふ」

 俺とヴィルジニー。運命の2人が共に歩み始めてから、ちょうど1か月後。俺、ヴィルジニー、そして父上とヴィルジニーの父親クレマンお義父さんの4人は、ウチの応接室で笑い合っていた。
 なぜ、このようにしているのかというと――

 これから、ドザベルド家とザストール家の間で婚約が結ばれるからだ。

 先日ローメラズ家への対応がすべて終わり、ようやくザストール家と話を進められるようになった。
 父上は裕福なザストール家とパイプができることに大喜びだし、クレマンお義父さんは最愛の娘が運命の相手と出逢えて大喜び――。両家当主が俺達の背中を全力で押してくれているため、このタイミングで結ばれることとなったのだった。

「俺達は運命の赤い糸で結ばれていて、でも残念ながら、ソレは俺達以外には見えないもの。関係を証明できるものはなかった」
「……はい」
「だがやっと、書類という形ではっきりと証明できるようになった。それが嬉しくてたまらないよ……!」
「……はい。はいっ。わたくしもです……!」

 俺達は婚約者で、いずれ夫婦になる二人だ!
 そいつが『物』として存在するのは、得も言われぬ喜びがある。その感情はもちろん運命の相手であるが故にヴィルジニーにもあって、俺達は笑顔で頷き合った。

「父上」
「お父様」
「うむ」
「ああ」

 俺達の視線を受けた当主2人が複数の書類にサインを記し、拇印を捺す。続いて2人の子であり『婚約』の主役である俺達も同様にサインを記して拇印を捺し、これで完成。
 俺とヴィルジニーの関係は、より深いものとなったのだった……!

「ふふふ、ふふふふふふふ。ふふふふふふふふ」
「ふふっ。ふふふっ。ふふふっ」

 出来上がった書類を2人で眺め、あまりにも幸せでついつい5分近くも眺めてしまっていた。そう気付いた俺達は急いで父親に微苦笑を向け、それを合図にテーブルにワインとグラスが運ばれてきた。

 ――婚約が結ばれた際は、その祝いにワインで乾杯をする――。

 我が国には――我が国の貴族界にはそう言った決まりがあり、この時だけは未成年であっても飲酒が認められるのだ。

「アルチュール様。わたくしがお注ぎしますわ」
「ありがとう。じゃあ君のグラスには、俺が注ぐね」

 してもらったら、してあげるのが当たり前。3分の1ほどワインが注がれたグラスを一旦テーブルに置いて、ボトルを持ってヴィルジニーのグラスへと注ぎ――

((…………ん?))

 ――注ぎ始めて、すぐのこと。
 不意に俺は、眉間に皺を寄せることになるのだった。

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