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4話(2)

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「必死に言い訳を探していたら、たまたま最高の事実が見つかってね。あの時は、本当に助かった。君が養女でよかったと、心から感謝したよ」

 こちらに視線を向けていたノルベルト様は、慇懃無礼な様子で腰を折り曲げます。

「ああやって、公衆の面前で晒し者にしたのは悪かったと思っているよ? けれど非は、そちらにもあるんだよ?」
「……私に、ですか……? どういう、意味なのでしょう……?」
「今思えば君には、貴族らしさが欠けていたんだろうね。完璧なようで、完璧ではなかった。もしも100点満点なら僕を満足させられていて、こうやって浮気をする未来はなかったんだよ」

 作戦が露見してしまったことへの、八つ当たり。そう思える声音と表情で、捲くし立てました。

「あ~あ、失敗したよ。あの時、初めて会った時だ。君に声をかけていなかったらこんなことにはなっていなくて、ちゃんと幸せになれていたのにな」
「……………………」
「最悪、だよ。あの日に戻れるなら、今すぐ戻りたい。選択ミスを犯したあの瞬間に返りたいよ。……当時の自分を、思い切り殴りたい気分だ」
「…………ノルベルト様。私は昨日までの毎日は本物だと、私にだけ愛を注いでくださっていたのだと、信じています。それも、嘘なのですよね? なにか隠していらっしゃるのですよね?」

 私は飛んでくる数々の言葉に首を振り、綺麗なブルーの瞳を見つめます。
 生徒会が結成された日の前後で、殿下の私に対する態度は変わっていません。これにも何か、意図があるんですよね?

「君は、良い解釈をしすぎだ。これまでずっと、僕の本心に気付けていなかっただけだよ」
「いえ、そんなはずはありません。だって――」
「だっても何もないよ。じゃあ、君に逆に問おう。ここで偽って、僕に何の得があるんだい?」

 得、ですか。それは……。
 ……………………………。

「ほらね、思い浮かばないだろう? 実際に裏は何もないんだから、それは至当だよ」

 ノルベルト様はぷっと噴き出し、呆れたように笑います。

「きっと君は、『自分はまだ愛されている』と思っていたいんだよ。だから、何かあると信じ込みたいんだ」
「………………………」
「そんなことはあり得ないのだから、そんな考えは今すぐ捨てるべきだ。もう興味を持たれていないと、早く自覚をするべきだ。この上なく哀れな勘違いで、そ」

 殿下の口は、これ以上言葉を紡ぐことができませんでした。
 なぜならば。

 アロイス様の右拳が、左頬にめり込んだのだから――。
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