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第3章
3章プロローグその2 (6)
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「そういう事でしたら、人間関係の線は排除されますね。だとすれば、ケンズ殿。最近この街で魔物絡みの不審な出来事、もしくは不審な噂の発生はありませんでしたか?」
「どちらもなし、ですじゃな。街内外共にいつも通りで、変わった様子はどこにもありませんのじゃ」
ケンズさんは、即答。「歳をとっても、最低限の嗅覚は残っております。不自然さはないと、断言できますのじゃ」と続けた。
「しかし孫はギルド内で失踪していて、何かは起きている……。いつもと何一つ変わらないのに、変わっているなんて……。一体、どうなっているのじゃ……?」
「………………とおの昔に、魔物が街に――ギルドに溶け込んでいた。お孫殿は何らかの拍子に『何か』を見つけてしまい、行方不明となった。そう考えられますね」
顎に右手を添えていたティルが、ポツリと呟いた。
「すでに内側に入り込んでいた場合は、発見は至難となります。……ケンズ殿が身を引かれたのは、いつですか?」
「五年前に、孫と入れ替わる形で勇退したのですじゃ。ですが少なくともその時には、ギルドに魔物は居ませんでした。ワシはスタッフ全員と家族ぐるみの付き合いをしていて、自信がありますのじゃ」
そんなにも深い関係を持ってたなら、騙し通せないしケンズさんも気付く。ということは……。
「それ以降に、何かあったようですね。今のギルドマスター殿は、どのような経緯で就任されたのでしょうか?」
「ワシが、直接指名しました。部下の中で最も優秀かつ人望のあった、トーレス・エルトという男を選んだのですじゃ」
柔らかい物腰で思いやりに溢れる、老若男女から高い信頼を得ていたホープ的存在。それが、現ギルドマスターらしい。
「……ギルド内で一番自由に動けるのは、ギルドマスター。トーレスが…………いや、しかし……。あやつがそんな真似をするとは、客観的にも思えないですじゃ……」
「ケンズ殿。客観視で違うと思われる理由は、なんなのですか?」
個人的じゃなくて、客観的だもんね。どうしてそう思うんだろ……?
「どちらもなし、ですじゃな。街内外共にいつも通りで、変わった様子はどこにもありませんのじゃ」
ケンズさんは、即答。「歳をとっても、最低限の嗅覚は残っております。不自然さはないと、断言できますのじゃ」と続けた。
「しかし孫はギルド内で失踪していて、何かは起きている……。いつもと何一つ変わらないのに、変わっているなんて……。一体、どうなっているのじゃ……?」
「………………とおの昔に、魔物が街に――ギルドに溶け込んでいた。お孫殿は何らかの拍子に『何か』を見つけてしまい、行方不明となった。そう考えられますね」
顎に右手を添えていたティルが、ポツリと呟いた。
「すでに内側に入り込んでいた場合は、発見は至難となります。……ケンズ殿が身を引かれたのは、いつですか?」
「五年前に、孫と入れ替わる形で勇退したのですじゃ。ですが少なくともその時には、ギルドに魔物は居ませんでした。ワシはスタッフ全員と家族ぐるみの付き合いをしていて、自信がありますのじゃ」
そんなにも深い関係を持ってたなら、騙し通せないしケンズさんも気付く。ということは……。
「それ以降に、何かあったようですね。今のギルドマスター殿は、どのような経緯で就任されたのでしょうか?」
「ワシが、直接指名しました。部下の中で最も優秀かつ人望のあった、トーレス・エルトという男を選んだのですじゃ」
柔らかい物腰で思いやりに溢れる、老若男女から高い信頼を得ていたホープ的存在。それが、現ギルドマスターらしい。
「……ギルド内で一番自由に動けるのは、ギルドマスター。トーレスが…………いや、しかし……。あやつがそんな真似をするとは、客観的にも思えないですじゃ……」
「ケンズ殿。客観視で違うと思われる理由は、なんなのですか?」
個人的じゃなくて、客観的だもんね。どうしてそう思うんだろ……?
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