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第2章
5話(2)
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『ミファ、なんてことをしたんだ! 許さんぞ!!』
『ミファ、あの壺はお父さんのお気に入りだったのよ。とんでもない事をしてしまったわね』
『ち、違うのっ。ヘーゼさんは、お姉ちゃん達が落っことすのを見たよねっ? ねっ?』
『ミファ様、お嘘はいけませんよ。わたくしはこの目で確かに、ミファ様が落とされるのを見ました』
何度違うと否定しても、誰も信じてくれない。誰も真実を口にしてくれない。何を言っても、私の仕業と決めつけられた。
……今ならそういうのは平気なんだけど、6歳の私にはとっても辛かった……。
だから部屋で泣いていて、すぐにティルが慰めにきてくれても、私は背中を向けてしまった。だって今まで、ここまで酷く激しく泣いたことはなかったから。そんなトコを見せるのが恥ずかしかったんだよね。
『わたしは、ないて、ない。ないて、ない、から、こっちを、みないで……っ』
『…………。ミファ……』
『げんき、だから、ないて、ない、から……っ。こっちをみないで……っ』
『…………わかったよ。でもどうしてもミファと一緒にいたいから、こうしておくね』
ティルは私の背中に自分の背中をくっつけて、床に座った。
反対向いていて、でもしっかりと私を支えられる。そういう思いで、この人はこうしてくれたんだよね。
『…………ミファ、僕の話を聞いてくれるかな? 元気なら、聞いてくれるよね?』
『わたしは、げんき、だもん。きけ、る……っ。な、に……?』
あの頃も今も、幼馴染は口が上手い。私はまんまとひっかかって、会話をしちゃった。
『ミファ、あの壺はお父さんのお気に入りだったのよ。とんでもない事をしてしまったわね』
『ち、違うのっ。ヘーゼさんは、お姉ちゃん達が落っことすのを見たよねっ? ねっ?』
『ミファ様、お嘘はいけませんよ。わたくしはこの目で確かに、ミファ様が落とされるのを見ました』
何度違うと否定しても、誰も信じてくれない。誰も真実を口にしてくれない。何を言っても、私の仕業と決めつけられた。
……今ならそういうのは平気なんだけど、6歳の私にはとっても辛かった……。
だから部屋で泣いていて、すぐにティルが慰めにきてくれても、私は背中を向けてしまった。だって今まで、ここまで酷く激しく泣いたことはなかったから。そんなトコを見せるのが恥ずかしかったんだよね。
『わたしは、ないて、ない。ないて、ない、から、こっちを、みないで……っ』
『…………。ミファ……』
『げんき、だから、ないて、ない、から……っ。こっちをみないで……っ』
『…………わかったよ。でもどうしてもミファと一緒にいたいから、こうしておくね』
ティルは私の背中に自分の背中をくっつけて、床に座った。
反対向いていて、でもしっかりと私を支えられる。そういう思いで、この人はこうしてくれたんだよね。
『…………ミファ、僕の話を聞いてくれるかな? 元気なら、聞いてくれるよね?』
『わたしは、げんき、だもん。きけ、る……っ。な、に……?』
あの頃も今も、幼馴染は口が上手い。私はまんまとひっかかって、会話をしちゃった。
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