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第2章
3話(13)
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「とはいえ我々は機会があり、ナルセイの国王様に献言したのですが――。王は勇者の怒りに触れる事を恐れ、妄言だと一蹴しました。なのでこの国でも、ただしそれは王ではなくその近くの誰かが先に情報を入手し、止めているのでしょう」
「王様に伝えずにいるのは死罪ものの重罪で、他の人はそうそうしないよね……。レルマさん、王並みに力のある人はいますか?」
「……祖父が、唯一該当します。あの方は権力を重視する傾向にありまして、祖父ならナルセイの国王様と同じ判断をするはずです」
「確かにあの御方なら、やりそうだよね。そうしたら国王様も被害者で、その話を伝えれば撤回してもらえる……?」
「そうですね。娘への愛があるなら、絶対にしてもらえますよっ」
あの人が天秤にかけていたのは、愛娘と国民なんだもん。その国民を守ってもらえないのなら断るに決まってて、それがあるからバカ祖父は隠してたんでしょうね。
「レイル様とソーラ様のおかげで、勇者様と身内の事実を知徳できました。……もしかするとこの度の凶行は、祖父の指示かもしれませんね」
「僕は、そう思うよ。王は堕ちきれるような人ではなく、殺人は絶対にさせないはずだからね」
「面識のある方が仰るのであれば、そうなのでしょう。レルマ殿。その辺りを内側から探れば決定的な証拠を掴め、全てが丸く収まるかもしれません」
私も元王族だから分かるんだけど、王より先に情報を手に入れてるなら、今でも王に勝るとも劣らない程に影響力がある。そんな状況で『勇者は最低なヤツなんだよ』と言っても、『ご機嫌取りをするべきだ!』と言って押し切られるかもしれない。
そこで用意するのは、工作の証拠。どんな理由であれ現王にこういう隠し事をするのは罪で、これを切っ掛けにして失脚させられるのよね。
(でもそれだと時間がかかりそうだから、またお城に乗り込んでみるのはどう? 全員を拘束しておいて調べたら証拠隠滅の恐れはないし、そういうのが見つかりやすいと思わない?)
(それはそうだが、今回に限っては適切ではないな。この国には魔王ゲーランがいて、俺達を招待している。人間同士で余計な争いをしている時に何かしら起きてしまえば、その分対応しにくくなるからな)
乗り込んでいくと騎士団と戦うなど、大なり小なり被害が出ちゃう。確かに今回は、そういう手を使わない方がよさそうね。
(ミファには、また今度力を発揮してもらう。ここは温存しておいてくれ)
(ん、オッケー。次に期待しててね)
いつまでもコソコソ話は、おかしいからね。私達は小声でパパっと言葉を返し、揃って向き直った。
「王様に伝えずにいるのは死罪ものの重罪で、他の人はそうそうしないよね……。レルマさん、王並みに力のある人はいますか?」
「……祖父が、唯一該当します。あの方は権力を重視する傾向にありまして、祖父ならナルセイの国王様と同じ判断をするはずです」
「確かにあの御方なら、やりそうだよね。そうしたら国王様も被害者で、その話を伝えれば撤回してもらえる……?」
「そうですね。娘への愛があるなら、絶対にしてもらえますよっ」
あの人が天秤にかけていたのは、愛娘と国民なんだもん。その国民を守ってもらえないのなら断るに決まってて、それがあるからバカ祖父は隠してたんでしょうね。
「レイル様とソーラ様のおかげで、勇者様と身内の事実を知徳できました。……もしかするとこの度の凶行は、祖父の指示かもしれませんね」
「僕は、そう思うよ。王は堕ちきれるような人ではなく、殺人は絶対にさせないはずだからね」
「面識のある方が仰るのであれば、そうなのでしょう。レルマ殿。その辺りを内側から探れば決定的な証拠を掴め、全てが丸く収まるかもしれません」
私も元王族だから分かるんだけど、王より先に情報を手に入れてるなら、今でも王に勝るとも劣らない程に影響力がある。そんな状況で『勇者は最低なヤツなんだよ』と言っても、『ご機嫌取りをするべきだ!』と言って押し切られるかもしれない。
そこで用意するのは、工作の証拠。どんな理由であれ現王にこういう隠し事をするのは罪で、これを切っ掛けにして失脚させられるのよね。
(でもそれだと時間がかかりそうだから、またお城に乗り込んでみるのはどう? 全員を拘束しておいて調べたら証拠隠滅の恐れはないし、そういうのが見つかりやすいと思わない?)
(それはそうだが、今回に限っては適切ではないな。この国には魔王ゲーランがいて、俺達を招待している。人間同士で余計な争いをしている時に何かしら起きてしまえば、その分対応しにくくなるからな)
乗り込んでいくと騎士団と戦うなど、大なり小なり被害が出ちゃう。確かに今回は、そういう手を使わない方がよさそうね。
(ミファには、また今度力を発揮してもらう。ここは温存しておいてくれ)
(ん、オッケー。次に期待しててね)
いつまでもコソコソ話は、おかしいからね。私達は小声でパパっと言葉を返し、揃って向き直った。
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