勇者になった幼馴染に婚約破棄された上に追放されたので、英雄になってざまぁしようと思います

第２章

３話（３）

「先ほどはお買い上げ、まことにありがとうございますっ！　この階にも沢山の素晴らしい商品がございますので、ごゆっくり御覧になってくださいませ！」
「ど、どうも……」

　またしても登場した（しかも見た目がそっくり）な弟さんにもう一度愛想笑いを向け、ティルと一緒に商品を見てゆく。
　ここには…………へぇ～。『火属性の魔術が僅かに強化される腕輪』や『回復術の回復量を上げる指輪』、なんてのがあるんだ。

「お客様！　そちらはですねっ！」
「えっ!?　は、はいっ」
「当店専属の『クラフトマスター』が丹精込めて仕上げた、首肯の品々です！　当然露店などにある偽物ではなく、証明書つきの本物でございますよっ！」

　クラフトマスターっていうのは、自分が作った物にランダムで特殊能力を宿らせることができる特別なジョブ。戦士から勇者が誕生するように製作系のジョブを極めた人が覚醒する可能性がある、かなり貴重な職業なんだよね。
　なお、余談になりますが――。クラフトマスターになれば各所から専属のお誘いが届いて、年収は貴族に勝るとも劣らない額になるそうです。

「どうしてもお値段は張りますが、その分しっっっっかりと冒険をサポートしてくれますっっ！　おひとついかがですかっ？」
「いやぁ。30万Ｅより上のものばかりで、簡単に手を出せませんよ。今日は見るだけにしておきます――あ。これ……っ」

　身に着けている者に幸せを運ぶとされる、聖なる僅かに力が宿ったペンダント。たまたまこの商品を見つけた私の体内を、ビビビッと閃きが駆け回った。
　このペンダント。すっごくいい。