67 / 173
第2章
1話(2)
しおりを挟む
『いらっしゃいいらっしゃい! いい洋服がありますよ~っ!!』
『ウチは今年で112年になる、伝統のある服屋ですよーっ! 歴史に裏付けされた服を是非御覧になってくださいっ!!』
ここクローズでは服飾系の店は『服飾区画(ふくしょくくかく)』と呼ばれる場所に集まっていて、そこに足を踏み入れると更に雰囲気が変化。ズラッと並ぶ店の前では呼び込みが行われていて、華やかさと活気に満ち満ちていた。
「すごい賑わいね……。店員も客も沢山で、この辺りだけでも合わせて200人はいるんじゃないの?」
「そのようだな。元々ここは他国からも客が来る所謂名所なのだが、それにしてもこれは多い。本にあった情報よりも、1・5倍はいるように見えるな」
「近々、なにかあるのかもしれないわね。……私達は一か月間も軟禁されていたから、世の中から完全においていかれてるのよねぇ」
ノルス勇者様、ありがとうございます。
おかげで新鮮な気持ちで来れて、『何があるのかなぁ?』とワクワクできます。軟禁にもメリットがあったんですねぇ。
ふふふふふふふふふふふふふふふふふ。
「ミファ。笑顔が黒くなっているぞ……」
「通行人さんにも見られてるから引っ込めて、安いお店探しを始めましょっか。とはいえこの辺には、該当するのがないみたいね」
どのお店もキラキラしてて、見るからに高そうなオーラが出てる。こういうとこは元両親達が着てたもののように何十万Eもするはずなので、私達には縁のないお店だ。
「服飾区画は奥に行くほど、庶民向けの店が増えるらしい。この辺りは流して、先に進むとしよう」
「そういう区分けがされてるのは、助かるわ。……男用と女用のどちらも、出血大サービス品がありますように」
武器が超消耗品な私達は、街を救った結構な報酬があっても全く油断はできない。そのため私は本気で空に祈り、スタスタトコトコと該当エリアを目指す。
「可能性は低いけど高級店の特売があるかもだから、私は念のために道の左側にあるお店をチェックする。ティルは右側をお店をお願いね」
「心得た。しかしミファ、俺の服は別に――」
「一人だけ新しいのを持ってたら、罪悪感で着れなくなるわよ。断るなら私も買わないけど、どうしますか? 幼馴染をいつも心配してくれる、優しいティルくん」
「……はぁ、分かった分かった。俺もちゃんと購入するさ」
「うむ、よろしい。今後もこういう感じでやってくから、覚悟しときなさいよ」
私はニヒヒっと悪戯っぽく口元を緩め、きょろきょろ。きょろきょろ。進みながらよさげなお店を探す。
「………………ぅーん。やっぱり高級店で安売りはないわね。そっちも当然」
「ない、な。だがあと少しで、中流向けの店が増えてくる。そこなら可能性はあるかもしれないぞ」
「間の層を狙ってるお店なら、チャンスはあるわね。二度目の正直がありますようにと願って、先に――ΛΘΓΞΨΠΣ」
「久しぶりに、奇妙な言語が出たな。一体どうしたんだ?」
「ティル、あそこのお店を見て。あそこ、全品90%オフって紙が貼られてる……」
変な声を出しちゃった理由。それは、有り得ないパーセントの割引セールをやってるところがあったからなのです。
『ウチは今年で112年になる、伝統のある服屋ですよーっ! 歴史に裏付けされた服を是非御覧になってくださいっ!!』
ここクローズでは服飾系の店は『服飾区画(ふくしょくくかく)』と呼ばれる場所に集まっていて、そこに足を踏み入れると更に雰囲気が変化。ズラッと並ぶ店の前では呼び込みが行われていて、華やかさと活気に満ち満ちていた。
「すごい賑わいね……。店員も客も沢山で、この辺りだけでも合わせて200人はいるんじゃないの?」
「そのようだな。元々ここは他国からも客が来る所謂名所なのだが、それにしてもこれは多い。本にあった情報よりも、1・5倍はいるように見えるな」
「近々、なにかあるのかもしれないわね。……私達は一か月間も軟禁されていたから、世の中から完全においていかれてるのよねぇ」
ノルス勇者様、ありがとうございます。
おかげで新鮮な気持ちで来れて、『何があるのかなぁ?』とワクワクできます。軟禁にもメリットがあったんですねぇ。
ふふふふふふふふふふふふふふふふふ。
「ミファ。笑顔が黒くなっているぞ……」
「通行人さんにも見られてるから引っ込めて、安いお店探しを始めましょっか。とはいえこの辺には、該当するのがないみたいね」
どのお店もキラキラしてて、見るからに高そうなオーラが出てる。こういうとこは元両親達が着てたもののように何十万Eもするはずなので、私達には縁のないお店だ。
「服飾区画は奥に行くほど、庶民向けの店が増えるらしい。この辺りは流して、先に進むとしよう」
「そういう区分けがされてるのは、助かるわ。……男用と女用のどちらも、出血大サービス品がありますように」
武器が超消耗品な私達は、街を救った結構な報酬があっても全く油断はできない。そのため私は本気で空に祈り、スタスタトコトコと該当エリアを目指す。
「可能性は低いけど高級店の特売があるかもだから、私は念のために道の左側にあるお店をチェックする。ティルは右側をお店をお願いね」
「心得た。しかしミファ、俺の服は別に――」
「一人だけ新しいのを持ってたら、罪悪感で着れなくなるわよ。断るなら私も買わないけど、どうしますか? 幼馴染をいつも心配してくれる、優しいティルくん」
「……はぁ、分かった分かった。俺もちゃんと購入するさ」
「うむ、よろしい。今後もこういう感じでやってくから、覚悟しときなさいよ」
私はニヒヒっと悪戯っぽく口元を緩め、きょろきょろ。きょろきょろ。進みながらよさげなお店を探す。
「………………ぅーん。やっぱり高級店で安売りはないわね。そっちも当然」
「ない、な。だがあと少しで、中流向けの店が増えてくる。そこなら可能性はあるかもしれないぞ」
「間の層を狙ってるお店なら、チャンスはあるわね。二度目の正直がありますようにと願って、先に――ΛΘΓΞΨΠΣ」
「久しぶりに、奇妙な言語が出たな。一体どうしたんだ?」
「ティル、あそこのお店を見て。あそこ、全品90%オフって紙が貼られてる……」
変な声を出しちゃった理由。それは、有り得ないパーセントの割引セールをやってるところがあったからなのです。
0
お気に入りに追加
1,888
あなたにおすすめの小説
【完結】一緒なら最強★ ~夫に殺された王太子妃は、姿を変えて暗躍します~
竜妃杏
恋愛
王太子妃のオフィーリアは、王太子の子を身に宿して幸せに暮らしていた。
だがある日、聖女リリスに夫を奪われれ、自分に不貞の濡れ衣を着せられて殺されてしまう。
夫とリリスに復讐を誓いながら死んだ……と思ったらなんと翌朝、義弟リチャードの婚約者・シャーロットになって目が覚めた!
入り込んでしまったシャーロットの記憶を頼りに、オフィーリアは奔走する。
義弟リチャードを助けるため、そして憎き二人に復讐するため、オフィーリアが周囲の人々を巻き込んで奮闘する物語です。
※前半はシリアス展開で残虐なシーンが出てきます。
後半はギャグテイストを含みます。
R15はその保険です。苦手な方はお気をつけて下さい。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。
もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜
おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。
それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。
精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。
だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる