23 / 38
第8話 向かった先は 俯瞰視点(1)
しおりを挟む
「…………二度と顔を見せるなと言ったはずだぞ。何をしに来たんだ」
ヤニックとジネットが家を飛び出してから、9日後。二人は3人掛けのソファーに座り、正面にいる小太りの男に鋭く睨みつけられていました。
ここはアヴァザール伯爵邸内にある、応接室。ヤニックとジネットは、現当主――弟ジュールに会うため、急いで飛び出していたのでした。
「極めて重要かつ緊急の話ということで、こうして会ってやったが――。もしも大したことのないものだった場合は、過去に宣告した通り厳しい対応を取る。……門番
たちに伝えたあの言葉は、まことなのだな?」
「もちろんだとも、嘘はない。今から10日前に、とんでもないことが発覚したのだよ」
「だから私達は急いで支度を整え、必死に歩き続けてここまで来たの。顔を見せたら消すと言われていて、実際に何年間も姿を見せていなかったのよ? なにもなければ動きはしないわ」
「…………それも、そうだな。して、兄さん姉さん。とんでもないことが発覚したと言っていたが、一体なんなんだ?」
重要で緊急を要する問題に、思い当たるものはない。ジュールは首を大きく捻りながら二人を交互に見つめました。
「…………エマ。お前はその名前を憶えているよな?」
「あれは十年前、いやもっと前だったか? ともかく隣の国の、どこぞの山に捨てて来た疫病神だろう。それがどうしたんだ?」
「…………あやつは、死んではおらんかったのだ。あのあと隣国のノエアンズ公爵夫妻に拾われ、公爵令嬢ステファニーとなっていたのだよ……!」
しかもそれだけではなく、筆頭公爵家の嫡男と婚約、来週結婚することになっていた。
ヤニックとジネットはあの日知得した情報を交互に伝え、そうすればあっという間にジュールの顔は真っ青になりました。
「なんてことだ……。エマが生きていただなんて……。おまけに、公爵家の娘になっていただなんて……」
((…………いいぞ。その様子なら、未曽有の衝撃を受けているな))
((…………この反応をしたということは、あの件が頭にあるということよね。だったらきっと上手くいくわ))
ジュールとは正反対に、心の中でニヤリとしたヤニックとジネット。手応えを感じた二人は密かにアイコンタクトを取り合い、次のステップへと移ることにしたのでした。
いよいよ――。本格的に、『作戦』が始まることとなったのでした。
ヤニックとジネットが家を飛び出してから、9日後。二人は3人掛けのソファーに座り、正面にいる小太りの男に鋭く睨みつけられていました。
ここはアヴァザール伯爵邸内にある、応接室。ヤニックとジネットは、現当主――弟ジュールに会うため、急いで飛び出していたのでした。
「極めて重要かつ緊急の話ということで、こうして会ってやったが――。もしも大したことのないものだった場合は、過去に宣告した通り厳しい対応を取る。……門番
たちに伝えたあの言葉は、まことなのだな?」
「もちろんだとも、嘘はない。今から10日前に、とんでもないことが発覚したのだよ」
「だから私達は急いで支度を整え、必死に歩き続けてここまで来たの。顔を見せたら消すと言われていて、実際に何年間も姿を見せていなかったのよ? なにもなければ動きはしないわ」
「…………それも、そうだな。して、兄さん姉さん。とんでもないことが発覚したと言っていたが、一体なんなんだ?」
重要で緊急を要する問題に、思い当たるものはない。ジュールは首を大きく捻りながら二人を交互に見つめました。
「…………エマ。お前はその名前を憶えているよな?」
「あれは十年前、いやもっと前だったか? ともかく隣の国の、どこぞの山に捨てて来た疫病神だろう。それがどうしたんだ?」
「…………あやつは、死んではおらんかったのだ。あのあと隣国のノエアンズ公爵夫妻に拾われ、公爵令嬢ステファニーとなっていたのだよ……!」
しかもそれだけではなく、筆頭公爵家の嫡男と婚約、来週結婚することになっていた。
ヤニックとジネットはあの日知得した情報を交互に伝え、そうすればあっという間にジュールの顔は真っ青になりました。
「なんてことだ……。エマが生きていただなんて……。おまけに、公爵家の娘になっていただなんて……」
((…………いいぞ。その様子なら、未曽有の衝撃を受けているな))
((…………この反応をしたということは、あの件が頭にあるということよね。だったらきっと上手くいくわ))
ジュールとは正反対に、心の中でニヤリとしたヤニックとジネット。手応えを感じた二人は密かにアイコンタクトを取り合い、次のステップへと移ることにしたのでした。
いよいよ――。本格的に、『作戦』が始まることとなったのでした。
29
あなたにおすすめの小説
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
私が消えたその後で(完結)
ありがとうございました。さようなら
恋愛
シビルは、代々聖女を輩出しているヘンウッド家の娘だ。
シビルは生まれながらに不吉な外見をしていたために、幼少期は辺境で生活することになる。
皇太子との婚約のために家族から呼び戻されることになる。
シビルの王都での生活は地獄そのものだった。
なぜなら、ヘンウッド家の血縁そのものの外見をした異母妹のルシンダが、家族としてそこに溶け込んでいたから。
家族はルシンダ可愛さに、シビルを身代わりにしたのだ。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる