お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます

柚木ゆず

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第7話 安堵 と 異変 俯瞰視点(3)

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「決まった。ここにするとしよう」
「決めたわ。ここにしましょうか」

 まるで、悪魔。ゆらりと動いていた禍々しさを含む二人の視線は、おびえるエマの顔面――鼻で止まりました。

「…………エマよ。すっかり変わったなぁ」
「…………エマ。すっかり変わってしまったわねぇ」

 あの頃とはまるで別人――自分たちから生まれたとは思えないくらいに違っている、スゥっとした美しい形の鼻。新しく始まった第二の人生、幸せに満ち溢れた毎日を象徴する、『忌々しいシンボル』。
 嫌いな顔の中でも特に反吐が出るほどに大嫌いなものを、そろって凝視します。

「お前の鼻は、ずいぶんと高くなったんだな。……高い鼻ほど折れた際の痛みが激しくなり、曲がった時は面白い形となるそうだ」
「ねぇ、エマ。どうせその鼻は、自慢のパーツなんでしょう? いつも鏡で見て、ほれぼれしてたんでしょう? だからねぇ、そんなアナタの『売り』を思いきりへし折ってあげるわ」

 自分達は被害者だから、何をやっても許される――。悪いヤツが痛い目を見るのは当たり前だ――。
 当然ヤニックとジネットに罪悪感があるはずもなく、顔の中心を見据えていた二人は嬉々として右の拳を固めました。

「やっ、やめてっ。やめてくださいお父様!!」
「やっ、やめてっ。やめてくださいお母様!!」

「やめてと言われてやめる者はいない。……さあっ、楽しいショーのはじまりだぁああああああああああああ!!」
「こんなに嫌がってるんだもの、やめるはずがないじゃない。……うふふっ。さあ大きな声で泣き叫んでちょうだいねぇええええええ!!」

 ここでもワザと『じらし』、ゆ~っくりと拳を引きます。そうして力をたっぷり溜めた二人は、まったく同じタイミングで力任せに拳を振るい――

「いやぁあああああああああああああああ――なんてね」
「いやぁあああああああああああああああ――なーんてね」

 二人の拳が、鼻に直撃する寸前でした。突如ステファニーの背後から大男が現れ、特大の手のひらが二人のパンチを軽々と受け止めてしまったのでした。


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