20 / 38
第7話 安堵 と 異変 俯瞰視点(3)
しおりを挟む
「決まった。ここにするとしよう」
「決めたわ。ここにしましょうか」
まるで、悪魔。ゆらりと動いていた禍々しさを含む二人の視線は、おびえるエマの顔面――鼻で止まりました。
「…………エマよ。すっかり変わったなぁ」
「…………エマ。すっかり変わってしまったわねぇ」
あの頃とはまるで別人――自分たちから生まれたとは思えないくらいに違っている、スゥっとした美しい形の鼻。新しく始まった第二の人生、幸せに満ち溢れた毎日を象徴する、『忌々しいシンボル』。
嫌いな顔の中でも特に反吐が出るほどに大嫌いなものを、そろって凝視します。
「お前の鼻は、ずいぶんと高くなったんだな。……高い鼻ほど折れた際の痛みが激しくなり、曲がった時は面白い形となるそうだ」
「ねぇ、エマ。どうせその鼻は、自慢のパーツなんでしょう? いつも鏡で見て、ほれぼれしてたんでしょう? だからねぇ、そんなアナタの『売り』を思いきりへし折ってあげるわ」
自分達は被害者だから、何をやっても許される――。悪いヤツが痛い目を見るのは当たり前だ――。
当然ヤニックとジネットに罪悪感があるはずもなく、顔の中心を見据えていた二人は嬉々として右の拳を固めました。
「やっ、やめてっ。やめてくださいお父様!!」
「やっ、やめてっ。やめてくださいお母様!!」
「やめてと言われてやめる者はいない。……さあっ、楽しいショーのはじまりだぁああああああああああああ!!」
「こんなに嫌がってるんだもの、やめるはずがないじゃない。……うふふっ。さあ大きな声で泣き叫んでちょうだいねぇええええええ!!」
ここでもワザと『じらし』、ゆ~っくりと拳を引きます。そうして力をたっぷり溜めた二人は、まったく同じタイミングで力任せに拳を振るい――
「いやぁあああああああああああああああ――なんてね」
「いやぁあああああああああああああああ――なーんてね」
二人の拳が、鼻に直撃する寸前でした。突如ステファニーの背後から大男が現れ、特大の手のひらが二人のパンチを軽々と受け止めてしまったのでした。
「決めたわ。ここにしましょうか」
まるで、悪魔。ゆらりと動いていた禍々しさを含む二人の視線は、おびえるエマの顔面――鼻で止まりました。
「…………エマよ。すっかり変わったなぁ」
「…………エマ。すっかり変わってしまったわねぇ」
あの頃とはまるで別人――自分たちから生まれたとは思えないくらいに違っている、スゥっとした美しい形の鼻。新しく始まった第二の人生、幸せに満ち溢れた毎日を象徴する、『忌々しいシンボル』。
嫌いな顔の中でも特に反吐が出るほどに大嫌いなものを、そろって凝視します。
「お前の鼻は、ずいぶんと高くなったんだな。……高い鼻ほど折れた際の痛みが激しくなり、曲がった時は面白い形となるそうだ」
「ねぇ、エマ。どうせその鼻は、自慢のパーツなんでしょう? いつも鏡で見て、ほれぼれしてたんでしょう? だからねぇ、そんなアナタの『売り』を思いきりへし折ってあげるわ」
自分達は被害者だから、何をやっても許される――。悪いヤツが痛い目を見るのは当たり前だ――。
当然ヤニックとジネットに罪悪感があるはずもなく、顔の中心を見据えていた二人は嬉々として右の拳を固めました。
「やっ、やめてっ。やめてくださいお父様!!」
「やっ、やめてっ。やめてくださいお母様!!」
「やめてと言われてやめる者はいない。……さあっ、楽しいショーのはじまりだぁああああああああああああ!!」
「こんなに嫌がってるんだもの、やめるはずがないじゃない。……うふふっ。さあ大きな声で泣き叫んでちょうだいねぇええええええ!!」
ここでもワザと『じらし』、ゆ~っくりと拳を引きます。そうして力をたっぷり溜めた二人は、まったく同じタイミングで力任せに拳を振るい――
「いやぁあああああああああああああああ――なんてね」
「いやぁあああああああああああああああ――なーんてね」
二人の拳が、鼻に直撃する寸前でした。突如ステファニーの背後から大男が現れ、特大の手のひらが二人のパンチを軽々と受け止めてしまったのでした。
30
あなたにおすすめの小説
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
妹の嘘を信じて婚約破棄するのなら、私は家から出ていきます
天宮有
恋愛
平民のシャイナは妹ザロアのために働き、ザロアは家族から溺愛されていた。
ザロアの学費をシャイナが稼ぎ、その時に伯爵令息のランドから告白される。
それから数ヶ月が経ち、ザロアの嘘を信じたランドからシャイナは婚約破棄を言い渡されてしまう。
ランドはザロアと結婚するようで、そのショックによりシャイナは前世の記憶を思い出す。
今まで家族に利用されていたシャイナは、家から出ていくことを決意した。
私が消えたその後で(完結)
ありがとうございました。さようなら
恋愛
シビルは、代々聖女を輩出しているヘンウッド家の娘だ。
シビルは生まれながらに不吉な外見をしていたために、幼少期は辺境で生活することになる。
皇太子との婚約のために家族から呼び戻されることになる。
シビルの王都での生活は地獄そのものだった。
なぜなら、ヘンウッド家の血縁そのものの外見をした異母妹のルシンダが、家族としてそこに溶け込んでいたから。
家族はルシンダ可愛さに、シビルを身代わりにしたのだ。
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]
風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが
王命により皇太子の元に嫁ぎ
無能と言われた夫を支えていた
ある日突然
皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を
第2夫人迎えたのだった
マルティナは初恋の人である
第2皇子であった彼を新皇帝にするべく
動き出したのだった
マルティナは時間をかけながら
じっくりと王家を牛耳り
自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け
理想の人生を作り上げていく
【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。
西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。
私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。
それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」
と宣言されるなんて・・・
見た目を変えろと命令したのに婚約破棄ですか。それなら元に戻るだけです
天宮有
恋愛
私テリナは、婚約者のアシェルから見た目を変えろと命令されて魔法薬を飲まされる。
魔法学園に入学する前の出来事で、他の男が私と関わることを阻止したかったようだ。
薬の効力によって、私は魔法の実力はあるけど醜い令嬢と呼ばれるようになってしまう。
それでも構わないと考えていたのに、アシェルは醜いから婚約破棄すると言い出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる