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第6話 真実 と 終わりの始まり ステファニー視点(1)
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「表情も言葉も、嘘……? 起死回生……? な、なにを言っているんだいっ?」
「そっ、そうよっ。嘘なんてついていないわっ。すべて本心っ、本物よ」
わたしが、呆れ含みのため息を吐いてすぐでした。お二人は揃って首を左右に振り始め、時折どもりながら否定をされました。
「我々はあの日確かに後悔して戻ったっ。以降はそれが原因で何も手につかなくなって、その結果こんな風になってしまっているんだよ!」
「あのねエマっ。さっきも言ったように、わたし達はなにも企んでいないのっ。この表情にもあの言葉にも裏なんてないのよっ」
「エマに謝りたい、ただそれだけなんだ。それ以上でもそれ以下でもないんだよ」
「……そうですか。では、こちらに関して説明をしていただけますか?」
ちょうど携帯しているので、お見せしましょう。わたしは護衛の一人から1枚の紙を受け取り、お二人へと向けました。
「それは……? なんなのだ……?」「?? いったいなに……?」
「『帰国したあと高級リストランテなどで豪遊していた』。『勝負に出て失敗し、膨大な借金ができていた』。『それらの理由で実弟と実妹に切り捨てられてしまい、路頭に迷う羽目になっていた』。こちらはあの日以降、貴方がたに起きていた出来事をまとめた資料ですよ」
今回こうしてお会いするために、パトリス様がお二人の所在を調べてくださいました。その際にそういったものも得ており、正しい情報を知得していたのです。
「先ほど貴方がたの口から出た内容は、ひとつとしてこちらと一致しませんでした。ですのでわたしは、あのように反応していたのですよ」
情に訴え関係を修復させ、あげく金銭的な支援をさせようとする。そちらがお二方の狙いなのだと、分かっていたのです。
「この状況下でそこまで目論むなんて。さすがはヤニック様とジネット様ですね」
「ちっ、違う! でたらめだっ。その情報は間違っている!」
「私達はそんな理由で借金ができてはいないしっ、切り捨てられたりもしていないわっ。高級レストランテだって行っていな――」
「差し出口をお許しください。レストランテ『ノヴァ』での贅沢、そちらは最も容易く収集できましたよ。なにせ目撃者が多数おりましたので」
おそらくは、個室を利用すれば問題ないと考えていたのでしょう。当時お二方は堂々と向かい、しっかりとその姿を目撃されていたのです。
どうやらその件に関してはご自身ものちに把握していて、目撃情報があったことを思い出したのでしょうね。ヤニック様とジネット様はその場にへたり込み、それ以上言い訳をできなくなってしまいました。
「…………しまった……。そうだった……。そんなところまで調べて――ひぃ!!」「…………そうだったわ……。あの時、ジュール達はそう言っていた……。まさか、そこまで調査がなされて――ひっ!!」
そうしてお二人はうな垂れていたのですが、突然わたしを見て悲鳴をあげました。
なにも変わったことをしておらず、ただ見つめていただけなのですが。どうされたのでしょうか……?
「そっ、そうよっ。嘘なんてついていないわっ。すべて本心っ、本物よ」
わたしが、呆れ含みのため息を吐いてすぐでした。お二人は揃って首を左右に振り始め、時折どもりながら否定をされました。
「我々はあの日確かに後悔して戻ったっ。以降はそれが原因で何も手につかなくなって、その結果こんな風になってしまっているんだよ!」
「あのねエマっ。さっきも言ったように、わたし達はなにも企んでいないのっ。この表情にもあの言葉にも裏なんてないのよっ」
「エマに謝りたい、ただそれだけなんだ。それ以上でもそれ以下でもないんだよ」
「……そうですか。では、こちらに関して説明をしていただけますか?」
ちょうど携帯しているので、お見せしましょう。わたしは護衛の一人から1枚の紙を受け取り、お二人へと向けました。
「それは……? なんなのだ……?」「?? いったいなに……?」
「『帰国したあと高級リストランテなどで豪遊していた』。『勝負に出て失敗し、膨大な借金ができていた』。『それらの理由で実弟と実妹に切り捨てられてしまい、路頭に迷う羽目になっていた』。こちらはあの日以降、貴方がたに起きていた出来事をまとめた資料ですよ」
今回こうしてお会いするために、パトリス様がお二人の所在を調べてくださいました。その際にそういったものも得ており、正しい情報を知得していたのです。
「先ほど貴方がたの口から出た内容は、ひとつとしてこちらと一致しませんでした。ですのでわたしは、あのように反応していたのですよ」
情に訴え関係を修復させ、あげく金銭的な支援をさせようとする。そちらがお二方の狙いなのだと、分かっていたのです。
「この状況下でそこまで目論むなんて。さすがはヤニック様とジネット様ですね」
「ちっ、違う! でたらめだっ。その情報は間違っている!」
「私達はそんな理由で借金ができてはいないしっ、切り捨てられたりもしていないわっ。高級レストランテだって行っていな――」
「差し出口をお許しください。レストランテ『ノヴァ』での贅沢、そちらは最も容易く収集できましたよ。なにせ目撃者が多数おりましたので」
おそらくは、個室を利用すれば問題ないと考えていたのでしょう。当時お二方は堂々と向かい、しっかりとその姿を目撃されていたのです。
どうやらその件に関してはご自身ものちに把握していて、目撃情報があったことを思い出したのでしょうね。ヤニック様とジネット様はその場にへたり込み、それ以上言い訳をできなくなってしまいました。
「…………しまった……。そうだった……。そんなところまで調べて――ひぃ!!」「…………そうだったわ……。あの時、ジュール達はそう言っていた……。まさか、そこまで調査がなされて――ひっ!!」
そうしてお二人はうな垂れていたのですが、突然わたしを見て悲鳴をあげました。
なにも変わったことをしておらず、ただ見つめていただけなのですが。どうされたのでしょうか……?
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