前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず

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エピローグその1 ~2つ~ エレーヌ視点

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「ぁ、これは……っ。こちらは……っ!」
「はい。前回・・行ったものです」

 立ち上がられたリュドヴィック様は、私の目の前で片膝をつき、右の手を両手で包み込んでくださいました。
 こちらは私達の祖国・・・・・、ルナリーファルに伝わる行為。永遠の愛を誓う際に、行うものです。

「今のリアムに不安迷いはなく、『頼んだ』と託してくれました。そして託され溶け合った僕は勿論、そうしたいと願っておりまして。有難いことにエレーヌ様も、そう思ってくださっています」
「……はい。強く、とても強く思っております」

 この気持ちは、一生変わることがない。この方以外に、向くはずがない。
 そう断言できてしまえる気持ちが、胸の中にあります。

「ですので僕はもう一度、行わせていただきます。改めて、誓わせていただきます」

 リュドヴィック様の両手に力が籠り、『優しく』だけではなく『力強く』右手が包み込まれるようになりました。

「エレーヌ・エリュエール様。僕は貴方を一生、今度こそ一生涯幸せにし続けます。だからこれからの人生を、僕と共に歩んでください」

 真摯な瞳。真摯なお声。それらは、あの時と――いいえ。今はリアム様とリュドヴィック様の想いと御意思が宿っていて。荒唐無稽ですし、他の方からは有り得ないことだと笑われてしまうのかもしれませんが。

 ――運命さえも変えてしまえる――。

 この先どんな未来が待っていたとしても、そちらを貫いてくださる。わたしとわたくしは、あの時以上のものを感じました。

((リュドヴィック様、リアム様))

 私とわたくしが大好きな方が、そんな御意志を纏って告げてくださっているのです。
 ですので、お返事は決まっていて。私も同じように――

「喜んで。いつまでも貴方様のお隣を歩かせていただきます」

 ――あの時行ったこと行う。包み込んでくださっている両手を左手で触れ、リュドヴィック様の前で両膝をつきました。

「貴方様が示してくださる未来が、鮮明に見えておりますので。そちらをずっとずっと、一緒に進ませてくださいませ」
「はい、一生涯エスコートをさせていただきます。……エレーヌ様。これからも、よろしくお願い致します」
「リュドヴィック様。こちらこそ、これからもよろしくお願いします」

 私達はお互いの瞳を見つめ合いながら言葉を交わし、そちらを済ませると私達の顔の距離は少しずつ縮まってゆきます。
 ルナリーファルの儀式はここでお仕舞なのですが、私達は今この世界の住人ですし、そうしたいと強く思っておりますので。

「エレーヌ様。愛しています」
「リュドヴィック様。愛しています」

 キスをして――。
 私達は言葉だけではなく、唇も使って、お互いの感情を大切な人に届けたのでした――。

















 ※演出上一時的に完結表示となりますが、明日よりエピローグその2を投稿させていただきます。そしてその後は番外編といたしまして、コレットたち4人に関するお話などを投稿させていただきます。


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