前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず

文字の大きさ
上 下
33 / 68

第19話 その頃のアルノー~事情を知ったアルノーは~ 俯瞰視点(3)

しおりを挟む
((…………そうか、分かった。よ~く分かったぞ。コレット、イザベル、エステル、ゾエ。アイツら4人に対しては、なにもできないんだな? だったら――何かをできるヤツで、この鬱憤を晴らしてやる‼))

 4人ではないもう1人、一番先に婚約者候補を辞退をした女。エレーヌに怒りをぶつけるようにする。
 アルノーの態度が急に変わったのは、それが理由でした。

((よく考えてみたら、アイツの辞退から流れがおかしくなったんだ……! アイツが元凶みたいなもんだからな。何をされても仕方がないよなぁ……!!))

 元々彼は常識のない人間でしたが、激怒によって更に欠落しています。そのため平然とそういったものを抱いており、けれど、そういった意思を表には出しません。

((父親モリス臆病者は、絶対に協力しない。俺の主導でやるしかない))

 モリスの話によるとエレーヌがいるエリュエール伯爵家は、4人の『家』とはまだ・・そこまで親しくありませんでした。

 旅行によるエレーヌ本人の不在。
 当主夫妻の公務。
 ロッピアンヌ湖で、ハーラント侯爵家の嫡男と懇意になった――。前世で夫だった人と再会した――。旅先からそんな手紙が届き、邸内がちょっとしたパニックに陥っていたこと。

 それらによって4人であり4家は謝罪とお詫びに関する接触をできずにいて、エリュエール家は一番『脆い』状態となっていたのです。

((この状況下なら、上手く立ち回れるに決まっているが……。それでも父親モリスはあの小心者は、それでもあれやこれや言って反対をしてくる))

 度重なる反対によってアルノーはそう確信し、父親には一切を伏せ、自分だけで計画を進めようとしていたのです。

((……エレーヌ……!! アイツら4人の分も、お前に罰を与えてあるからな……!! 心も体も滅茶苦茶にして、結婚できないようにしてやるからな……!! 覚悟しておけよ……!!))

 アルノーは心の中で邪悪な笑みを浮かべ、そうして彼は自由にお金を使える状態で、屋敷を発ちます。そして、

「アルノー様……。アルノー様、お待ちくださいませ……」
「そちらへ向かっては、なりません……。どうか、おやめになられ――」
「うるさい!! 黙ってついてこい!!」

 反対する従者や御者を一喝して、裏社会の住人と接触。金に物を言わせてその道のプロフェッショナル集団7人と契約を結び、その者達が最適な日を調べ上げた結果、2日後に決行が決まってしまったのでした。

((エレーヌ、お前が日常生活を送れるのもあと2日だ。最後の幸せを、たっぷりと味わうんだな))

 エレーヌが帰国する理由となっていた、明後日に開かれるパーティー。その帰路で、仕掛ける計画となっています。
 そのため彼はその方角に向けてグラスを傾け、赤色のワインを含んだあと上機嫌で夜空を見上げ――

「はははっ。月も、お前の悲劇を予告しているぞ?」

 ――今宵は、ストロベリームーン。不吉を象徴するものが浮かんでいて、ますます彼の機嫌はよくなります。
 ですが――。はたして、そうなのでしょうか?
 この月は、エレーヌの不吉を象徴しているのでしょうか……?

しおりを挟む
感想 205

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】

佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。 異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。 幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。 その事実を1番隣でいつも見ていた。 一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。 25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。 これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。 何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは… 完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

白い結婚のはずでしたが、王太子の愛人に嘲笑されたので隣国へ逃げたら、そちらの王子に大切にされました

ゆる
恋愛
「王太子妃として、私はただの飾り――それなら、いっそ逃げるわ」 オデット・ド・ブランシュフォール侯爵令嬢は、王太子アルベールの婚約者として育てられた。誰もが羨む立場のはずだったが、彼の心は愛人ミレイユに奪われ、オデットはただの“形式だけの妻”として冷遇される。 「君との結婚はただの義務だ。愛するのはミレイユだけ」 そう嘲笑う王太子と、勝ち誇る愛人。耐え忍ぶことを強いられた日々に、オデットの心は次第に冷え切っていった。だが、ある日――隣国アルヴェールの王子・レオポルドから届いた一通の書簡が、彼女の運命を大きく変える。 「もし君が望むなら、私は君を迎え入れよう」 このまま王太子妃として屈辱に耐え続けるのか。それとも、自らの人生を取り戻すのか。 オデットは決断する。――もう、アルベールの傀儡にはならない。 愛人に嘲笑われた王妃の座などまっぴらごめん! 王宮を飛び出し、隣国で新たな人生を掴み取ったオデットを待っていたのは、誠実な王子の深い愛。 冷遇された令嬢が、理不尽な白い結婚を捨てて“本当の幸せ”を手にする

さようなら、わたくしの騎士様

夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。 その時を待っていたのだ。 クリスは知っていた。 騎士ローウェルは裏切ると。 だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。

氷の貴婦人

恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。 呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。 感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。 毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

処理中です...