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第5話 翌日~旅行をしましょう~ エレーヌ視点(4)
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「エレーヌ……? どうしたのだ……?」
「?? エレーヌ……? 手に持っているその資料に、なにかあったの……?」
「…………い、いえ。なんでもございません」
おもわず硬直していた私は首を左右に振り、ほかの資料数点に左右の手を伸ばしてみます。
そうすると………………やはり何度触っても、先ほどのような異変は発生しませんでした。ですので――
「お父様、お母様。私は、こちらの場所を――隣国『レヴェンル』にある『ロッピアンル湖』を、訪れてみたいと思っています」
こんなことは今まで起きた経験がありませんし、今の衝撃が悪いものには感じませんでした。なので『そこには何かがある』と確信し、そちらを目的地に決めました。
「エレーヌは、そこを中心とした旅をしたいのねっ? 分かったわっ、あなたっ!」
「うむっ! 早速手配をしようじゃないかっ!」
お母様とお父様は引き続き、私が自分のために時間を使うことを喜んでくださっています。ですので、満面の笑みを浮かべて準備を始めてくださって――その僅か半日後に、私は唖然とすることになってしまいました。
「ええっ!? あっ、明後日からですかっ!?」
おもわず大きな声を出してしまった理由は、旅の出発が2日後に決まったから。しかも9泊10日という、長期間の日程を組んでくださっていたからです。
「少しでも早く行きたい、そういう顔をしていたでしょう? わたしもこの人も貴方の願いを叶えたくて、つい張りきっちゃったのよ」
「あいにくと我々は公務が立て込んでいて、今回同行はできない。だがお前も知っての通り、うちには優秀な護衛がいるからな。安心して旅を楽しむといい」
エレーヌ、家族旅行は来月だ! まずは第1弾を決行よっ!
お父様とお母様は上機嫌でそう仰ってくださり、そのあとお父様はパンパンと手を大きく2回鳴らしました。そうすれば――
「旦那様、お呼びでしょうか?」
「……は。参りました」
穏やかな雰囲気を持つ長身の女性と、感情の機微がない小柄な女性が現れました。
前者は私の侍女・メイルで、後者は使用人の一人・ミア。2人はお屋敷の護衛役も兼ねた頼もしい存在で、かなり強い。前世での家――グレット侯爵家の優秀な護衛10人分に匹敵するほどの、実力の持ち主なのです。
「お前達には明後日から、この子の旅に同行してもらう。娘を頼んだぞ」
「承知いたしました。引き続き、お嬢様をお守り致します」
「……お心のままに」
そうしてあっという間に人選が済み、それが終わると――
「エレーヌ、明日は旅用のお洋服を買いに行きましょっ。オーダーメードは間に合わないけれど、既製品でも素敵なものは沢山あるものっ。気に入ったらなんでも買ってあげるから言って頂戴ねっ!」
「い、いえお母様。とても大きな旅行を実現していただいただけで、私は満足でし――」
「遠慮しないのエレーヌっ。これから貴方は好きなものを着て好きなものを身につけていいのよっ! 自由にたくさんファッションを楽しみましょっ!」
私はこれまでずっと、アルノー様がお好きな服やアクセサリーのみを着用していました。そういった部分もお二人は喜んでくださっていて、そちらは逆に、私がお母様達にご心配をおかけしたお詫びをしなければならない問題なのですが……。こんな優しさを断るのは、失礼に当たります。
ですので翌日私達はブティックを数件訪れて素敵なものを5着も買っていただき、
「エレーヌ。楽しんでおいで」
「いってらっしゃいっ。良い思い出をたくさん作ってきてねっ」
「はいっ。マイクお父様、ミリアお母様。行ってまいりますっ!」
更に次の日の、午前8時過ぎ。私達を乗せた馬車は、隣国レヴェンヌを目指して発進したのでした――。
「?? エレーヌ……? 手に持っているその資料に、なにかあったの……?」
「…………い、いえ。なんでもございません」
おもわず硬直していた私は首を左右に振り、ほかの資料数点に左右の手を伸ばしてみます。
そうすると………………やはり何度触っても、先ほどのような異変は発生しませんでした。ですので――
「お父様、お母様。私は、こちらの場所を――隣国『レヴェンル』にある『ロッピアンル湖』を、訪れてみたいと思っています」
こんなことは今まで起きた経験がありませんし、今の衝撃が悪いものには感じませんでした。なので『そこには何かがある』と確信し、そちらを目的地に決めました。
「エレーヌは、そこを中心とした旅をしたいのねっ? 分かったわっ、あなたっ!」
「うむっ! 早速手配をしようじゃないかっ!」
お母様とお父様は引き続き、私が自分のために時間を使うことを喜んでくださっています。ですので、満面の笑みを浮かべて準備を始めてくださって――その僅か半日後に、私は唖然とすることになってしまいました。
「ええっ!? あっ、明後日からですかっ!?」
おもわず大きな声を出してしまった理由は、旅の出発が2日後に決まったから。しかも9泊10日という、長期間の日程を組んでくださっていたからです。
「少しでも早く行きたい、そういう顔をしていたでしょう? わたしもこの人も貴方の願いを叶えたくて、つい張りきっちゃったのよ」
「あいにくと我々は公務が立て込んでいて、今回同行はできない。だがお前も知っての通り、うちには優秀な護衛がいるからな。安心して旅を楽しむといい」
エレーヌ、家族旅行は来月だ! まずは第1弾を決行よっ!
お父様とお母様は上機嫌でそう仰ってくださり、そのあとお父様はパンパンと手を大きく2回鳴らしました。そうすれば――
「旦那様、お呼びでしょうか?」
「……は。参りました」
穏やかな雰囲気を持つ長身の女性と、感情の機微がない小柄な女性が現れました。
前者は私の侍女・メイルで、後者は使用人の一人・ミア。2人はお屋敷の護衛役も兼ねた頼もしい存在で、かなり強い。前世での家――グレット侯爵家の優秀な護衛10人分に匹敵するほどの、実力の持ち主なのです。
「お前達には明後日から、この子の旅に同行してもらう。娘を頼んだぞ」
「承知いたしました。引き続き、お嬢様をお守り致します」
「……お心のままに」
そうしてあっという間に人選が済み、それが終わると――
「エレーヌ、明日は旅用のお洋服を買いに行きましょっ。オーダーメードは間に合わないけれど、既製品でも素敵なものは沢山あるものっ。気に入ったらなんでも買ってあげるから言って頂戴ねっ!」
「い、いえお母様。とても大きな旅行を実現していただいただけで、私は満足でし――」
「遠慮しないのエレーヌっ。これから貴方は好きなものを着て好きなものを身につけていいのよっ! 自由にたくさんファッションを楽しみましょっ!」
私はこれまでずっと、アルノー様がお好きな服やアクセサリーのみを着用していました。そういった部分もお二人は喜んでくださっていて、そちらは逆に、私がお母様達にご心配をおかけしたお詫びをしなければならない問題なのですが……。こんな優しさを断るのは、失礼に当たります。
ですので翌日私達はブティックを数件訪れて素敵なものを5着も買っていただき、
「エレーヌ。楽しんでおいで」
「いってらっしゃいっ。良い思い出をたくさん作ってきてねっ」
「はいっ。マイクお父様、ミリアお母様。行ってまいりますっ!」
更に次の日の、午前8時過ぎ。私達を乗せた馬車は、隣国レヴェンヌを目指して発進したのでした――。
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