前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず

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第4話 話し合いを始めた4人 俯瞰視点(1)

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(…………皆さん。エレーヌ様の、あのお顔……)
(もちろん、見ましたわ……)
(3年間休まず努力を続けてきて、直前で辞退をする羽目になってしまったというのに……)
(笑って、いらっしゃいましたわね……)

 エレーヌが去ったあとのこと。コレット、イザベル、エステル、ゾエの4人は、ヒソヒソ話をしていました。

(あの表情……。どう思います……?)
(…………。わたしは、強がりではないと思いますわ)
(わたくしも、同じですわ。だって……)
(ええ。心から、晴れ晴れとされていたんですもの……)

 エレーヌにとって辞退は、少しも悲しくない出来事なこと。今日まで3年間一切自分のための時間を設けてはおらず、これからは好きなように時間を使えること。
 それらによってあの時のエレーヌは幸福感に満ち満ちていて、4人の意見は一致しました。

(……ね、ねえ皆さん、改めて確認をさせてくださいまし。エレーヌ様は…………これまでずっと、婚約者の座を目指してましたわよね……? わたしの、記憶違いではありませんよね……?)
(え、ええ。確かに、真剣に目指していましたね……)
(なのに、本心でああなっているということは……)
(そうなれなくても構わない、むしろ、その方がいい。そう確信する何かが、あったみたいですわね……)

 同じ候補者である4人は、エレーヌのこれまでをよく知っています。そのためそのような結論となり、4人は同時にごくりと唾を飲み込みました。

(……あの方が、そんな風になるのですから……)
(わたし達も……。そうしておくべき、なのかもしれませんね……)
(け、けれど……。わたくし達は、アルノー様を知り尽くしていますわ。結婚すれば幸せになれる、そちらは約束された未来ですわ)

 彼女達もエレーヌと同じく、あの強引さなどに心酔していました。ですので、誰しもそう思っていましたが――

『それでは皆様、失礼致します。陰より応援させていただきますね』

 ――同じく心酔していたエレーヌが、幸せそうに去って行きました。

「「「「……………………」」」」

 そんな事実があるため、4人は沈黙。そうして暫くの間、静かに視線を交わし合ったあと――











 




 ※申し訳ございません。さきほどまで、今日はもう1回投稿させていただきます、とこちらに書かせていただいておりましたが……。外出が必要な急用発生につき、次のお話の投稿は明日とさせていただきます(明日は本日予定していた分を含め、複数回投稿をさせていただきます)。

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