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第12話 国内に居るのは、愚か者だけ 俯瞰視点(3)

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「駄目だグスターヴ!! じきにココに辿り着かれてしまう!!」

 城門が突破され、あっさりと侵入を許してから、わずか8分後。緊急の指令室へと姿を変えていた大部屋には、王ヴァレンティンの悲鳴が響き渡っていました。

『奴らの持つ武器は、大したものではない!! 我々にははるかに優れた得物があるのだ!! ここで食い止め押し返せぇぇええええええ!!』
『奴らは所詮素人だ!! 俺たちは多くの訓練を積んだ戦のプロだ!! 血のにじむような努力のっ、成果を見せる時が来たぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 城内にいた、武装した兵たち。彼らは王族のため――ではなく、自分達が食料などを得て生き延びるために、こぶしを振り上げ侵入者たちを迎え撃ちました。
 ですが――

「「「「「うおおおおおおお!! じゃまをするなぁああああああああ!!」」」」」
「「「「「どけぇえええええ!! お前らに用はねぇんだよぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
「「「「「食い物はどこだ!! 探せ探せ探せぇぇぇぇええええ!!」」」」」

 圧倒的な数の前では、武器の質や戦闘経験はなんの意味も持ちません。
 息巻いていた兵たちはあっという間に蹴散らされ、もうどうしようもない状況となっていたのです。王族たちの敗北は、あっという間に確定的となっていたのです。

「あの者達はもう普通の国民じゃない! 狂人よっ! 飢えた肉食獣よ!! 見つかったら殺されてしまうわ!! 逃げましょう!!」

 ですので王族サイドが取れる選択肢は、敗走のみ。それさえも、今すぐに動き出さないと不可能となる状況となっていました。

「だ、だが……。そうすれば……! ここにあるものすべてを――」
「ここで死ぬよりはマシでしょ! アンタはそうしたければしなさいよ! わたしは逃げるわっっ!!」
「ぐ……。くそっ! くそぉぉぉ!! アリの分際でなまいきなあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 国民の殺害や略奪を指示していた、王族や聖女たち。そんな彼らは、自分たちが略奪される側となってしまい――。沢山貯えていた食糧などを放棄し、城から逃げ出す羽目になってしまったのでした。


「「「「「「やった! やったぞ!! 俺達の勝ちだあああああああああああ!!」」」」」

「「「「「…………こんなことに、なるなんて……」」」」」」


 そうして勝者たちは大量の食糧や燃料を手に入れ、敗者たちは全てを失いました。それによって両者の人生は、一瞬にして逆転――することは、ありませんでした。
 なぜならば――
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