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第8話 再び訪れた予想外 俯瞰視点
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「グスターヴ殿下。貴方様が利用しようとしていた『人質』は、すでに僕達が保護していたのですよ。突如閃いた武器があっという間に役立たずとなってしまい、残念でしたね?」
「っっ! さっ、サイモン殿下!! これは違法だぞ!! 大問題だぞ!! 両国間の信頼関係に亀裂を生み兼ねないっ、大きな問題だぞ!!」
おもわず口をパクパクさせていたグスターヴは、慌てて声を荒らげます。
異国人が国境を通過する際は、必ず乗員の身分および積み荷の中を正確に明らかにしなければならない。
両国の間には――この世界に存在する全ての国の間には、そういったルールが存在していたのです。
「俺たちが知らなかったということは、偽り国境を突破したということ!! こいつは看過できない問題だ!! 重大な違反だ!!」
「ええ、仰る通り大きなルール違反となっております。ですが今回に限っては、問題とはなりませんよ?」
「なっ、なにを言っている!? なぜだ!? なぜそうなる!?」
「その根拠は、相殺が可能だから。そちらが先にルールを破っているため、ノーサイドとなるのですよ」
グスターヴ達は『同じ国にいることさえも許せない』と激しく怒り、感情に任せて動いた結果、一番近くにある国境の向こうで――この国で、ビアンカを捨てました。『捨てる』は人道的に認めらず、ボロボロの姿を確認されたら通行時に止められてしまうため、その際サイモン達は貨物と偽り臣下を越境させていたのです。
「国と国とでトラブルになった場合は、中立国が間に入って裁判を行うことが可能。納得できないのであれば、どうぞ行動をなさってください」
「っ。っっ!」
先に自分達が行ってしまっていた。そんな事実があるため、グスターヴは反論することができません。
ですが――。このまま引き下がったら、何もかもが終わってしまう。
どうにかして、ビアンカを再び聖女にしなければなりません。
ですので再度緊急の思案を行う羽目になり、必死になって自分の楽園を守る方法をひねり出そうと試み――
「!」
そうしていたグスターヴの両目が、突如見開かれることとなりました。
そのようになったのは、再び名案が降りてきたから、ではありません。彼がそうなってしまった理由は――
差し出していた指輪がひとりでに飛び、ビアンカの薬指に収まったから。
であり――
「…………器を借りるぞ、真の聖女。愚かなる者に、真実を伝えねばならんのでな」
指輪をつけた途端ビアンカが、おかしなことを口にし始めたからです。
「っっ! さっ、サイモン殿下!! これは違法だぞ!! 大問題だぞ!! 両国間の信頼関係に亀裂を生み兼ねないっ、大きな問題だぞ!!」
おもわず口をパクパクさせていたグスターヴは、慌てて声を荒らげます。
異国人が国境を通過する際は、必ず乗員の身分および積み荷の中を正確に明らかにしなければならない。
両国の間には――この世界に存在する全ての国の間には、そういったルールが存在していたのです。
「俺たちが知らなかったということは、偽り国境を突破したということ!! こいつは看過できない問題だ!! 重大な違反だ!!」
「ええ、仰る通り大きなルール違反となっております。ですが今回に限っては、問題とはなりませんよ?」
「なっ、なにを言っている!? なぜだ!? なぜそうなる!?」
「その根拠は、相殺が可能だから。そちらが先にルールを破っているため、ノーサイドとなるのですよ」
グスターヴ達は『同じ国にいることさえも許せない』と激しく怒り、感情に任せて動いた結果、一番近くにある国境の向こうで――この国で、ビアンカを捨てました。『捨てる』は人道的に認めらず、ボロボロの姿を確認されたら通行時に止められてしまうため、その際サイモン達は貨物と偽り臣下を越境させていたのです。
「国と国とでトラブルになった場合は、中立国が間に入って裁判を行うことが可能。納得できないのであれば、どうぞ行動をなさってください」
「っ。っっ!」
先に自分達が行ってしまっていた。そんな事実があるため、グスターヴは反論することができません。
ですが――。このまま引き下がったら、何もかもが終わってしまう。
どうにかして、ビアンカを再び聖女にしなければなりません。
ですので再度緊急の思案を行う羽目になり、必死になって自分の楽園を守る方法をひねり出そうと試み――
「!」
そうしていたグスターヴの両目が、突如見開かれることとなりました。
そのようになったのは、再び名案が降りてきたから、ではありません。彼がそうなってしまった理由は――
差し出していた指輪がひとりでに飛び、ビアンカの薬指に収まったから。
であり――
「…………器を借りるぞ、真の聖女。愚かなる者に、真実を伝えねばならんのでな」
指輪をつけた途端ビアンカが、おかしなことを口にし始めたからです。
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