1 / 52
プロローグ 理不尽のはじまりとおわり 俯瞰視点
しおりを挟む
「ビアンカ! 貴様はこれだけ注意をしても態度を改めないんだな!! そんな人間は不要だっ! 聖女の資格を剥奪し、この国を追放する!!」
温暖な気候と広大な大地、豊かな土壌を持つ、『ザネラスエアル』。この国にはこの世界で唯一聖女がおり、聖女が毎日祈りを捧げることによって『豊作』が千年以上も続いてきました。
しかしながら半年前、突如として状況が一変。突如気温が下がり土壌が劣化し始め、ザネラスエアルは『不作』『凶作』に陥ってしまったのでした。
そのため、この国の王太子であるグスターヴ・ザネストンは――
『祈りを怠けているんだろう!! 真面目にやらないか!!』
『真面目にやっている? だったらなぜ突然こうなったんだ!? 見え透いた嘘を吐くな!!』
聖女であるビアンカ・ラナフェーリに対し、厳しく注意を行いました。しかしながら一向に回復する気配はないため、ついにこのような決断をしたのでした。
「グスターヴ殿下、お待ちくださいっ。わたしは日々、真摯に祈りを捧げております。恐らくは別の、何かしらの原因があって――」
「聖女は代々1000年以上祈りを捧げ、ずっと豊作が続いてきたんだぞ? これまでと同じことが、同じ状況下で行われているんだぞ? 下手な言い訳をするな!!」
これまでとは異なる点は、何一つありませんでした。そのためグスターヴは一蹴し、
「1日たった3時間だというのに! 祈りがめんどくさくなっていたんだろうっ!!」
「聖女には最高の環境を用意してやっているのに……! 恩恵だけ得ようだなんて、そんな考えは許さんぞ!! つけているリングをさっさと渡せ!!」
この場である大神殿全体に響き渡る程に声を荒らげ、鬼の形相で詰め寄りました。
聖女を聖女たらしめているものは、人ではなく赤色の宝石が埋め込まれた指輪。この国の建国時に天から降ってきたとされる通称『神からの贈り物』に『豊穣』をもたらす力が宿っており、それが『適性』を持つ者の願いに反応し、国全体にその効果を行き渡される仕組みとなっているのです。
「グスターヴ殿下っ。わたしは決して――きゃあ!?」
「ふん。適性が高いという理由で選ばれただけなのに、自分が偉いと自惚れるとは。やはり、所詮は得体のしれん血が流れる孤児だな」
ビアンカは生まれた直後から孤児院育ちで、前任の死去時に適性が最も高かったという理由で任命されていました。聖女であるが故に口にはしてはいませんでしたが、グスターヴには汚物に対するような感情がありました。
ですので指輪を奪い取りながらたっぷりと心ない差別的な言葉をぶつけ、そんな振る舞いをしたのは彼だけではありませんでした――。
「貴様のせいで大きなダメージを受けてしまったではないか!! この役立たずが!!」
「貴女を聖女に選定してしまったせいで、わたしは理不尽に非難される羽目になっているのよ!? どうしてくれるのよ!!」
「「「「「お前のせいで俺達の畑は大変なことになってるんだぞ!!」」」」」
「「「「「この裏切り者!! 信じて損したわ!!」」」」」
国王や神殿長などなど。貴族、農民などなど。国の住人の99・999パーセント以上が声を揃えて非難し、追放のため国境へと連行される際は、ビアンカへと沢山の石が投げつけられたのです。
「ぅ……。いた、い……。やめて、ください……。しんじて、ください……」
「「「「「うるさい!! お前の言葉なんて信じるはずがないだろ!!」」」」」」
「「「「「死ね! 死ねっ!!」」」」」」
「「「「「聖女の面汚しめ! 無残に死んでしまえ!!」」」」」
そうしてかつて聖女と呼ばれ慕われた少女は、投石によって傷だらけになったあと隣国にて捨てられてしまいました。そしてザネラスエアルではまもなく新たな聖女が誕生し、グスターヴや国民は状況の回復を確信したのでした。
ですが――。
彼ら愚か者を待っているのは、豊穣ではなく――
温暖な気候と広大な大地、豊かな土壌を持つ、『ザネラスエアル』。この国にはこの世界で唯一聖女がおり、聖女が毎日祈りを捧げることによって『豊作』が千年以上も続いてきました。
しかしながら半年前、突如として状況が一変。突如気温が下がり土壌が劣化し始め、ザネラスエアルは『不作』『凶作』に陥ってしまったのでした。
そのため、この国の王太子であるグスターヴ・ザネストンは――
『祈りを怠けているんだろう!! 真面目にやらないか!!』
『真面目にやっている? だったらなぜ突然こうなったんだ!? 見え透いた嘘を吐くな!!』
聖女であるビアンカ・ラナフェーリに対し、厳しく注意を行いました。しかしながら一向に回復する気配はないため、ついにこのような決断をしたのでした。
「グスターヴ殿下、お待ちくださいっ。わたしは日々、真摯に祈りを捧げております。恐らくは別の、何かしらの原因があって――」
「聖女は代々1000年以上祈りを捧げ、ずっと豊作が続いてきたんだぞ? これまでと同じことが、同じ状況下で行われているんだぞ? 下手な言い訳をするな!!」
これまでとは異なる点は、何一つありませんでした。そのためグスターヴは一蹴し、
「1日たった3時間だというのに! 祈りがめんどくさくなっていたんだろうっ!!」
「聖女には最高の環境を用意してやっているのに……! 恩恵だけ得ようだなんて、そんな考えは許さんぞ!! つけているリングをさっさと渡せ!!」
この場である大神殿全体に響き渡る程に声を荒らげ、鬼の形相で詰め寄りました。
聖女を聖女たらしめているものは、人ではなく赤色の宝石が埋め込まれた指輪。この国の建国時に天から降ってきたとされる通称『神からの贈り物』に『豊穣』をもたらす力が宿っており、それが『適性』を持つ者の願いに反応し、国全体にその効果を行き渡される仕組みとなっているのです。
「グスターヴ殿下っ。わたしは決して――きゃあ!?」
「ふん。適性が高いという理由で選ばれただけなのに、自分が偉いと自惚れるとは。やはり、所詮は得体のしれん血が流れる孤児だな」
ビアンカは生まれた直後から孤児院育ちで、前任の死去時に適性が最も高かったという理由で任命されていました。聖女であるが故に口にはしてはいませんでしたが、グスターヴには汚物に対するような感情がありました。
ですので指輪を奪い取りながらたっぷりと心ない差別的な言葉をぶつけ、そんな振る舞いをしたのは彼だけではありませんでした――。
「貴様のせいで大きなダメージを受けてしまったではないか!! この役立たずが!!」
「貴女を聖女に選定してしまったせいで、わたしは理不尽に非難される羽目になっているのよ!? どうしてくれるのよ!!」
「「「「「お前のせいで俺達の畑は大変なことになってるんだぞ!!」」」」」
「「「「「この裏切り者!! 信じて損したわ!!」」」」」
国王や神殿長などなど。貴族、農民などなど。国の住人の99・999パーセント以上が声を揃えて非難し、追放のため国境へと連行される際は、ビアンカへと沢山の石が投げつけられたのです。
「ぅ……。いた、い……。やめて、ください……。しんじて、ください……」
「「「「「うるさい!! お前の言葉なんて信じるはずがないだろ!!」」」」」」
「「「「「死ね! 死ねっ!!」」」」」」
「「「「「聖女の面汚しめ! 無残に死んでしまえ!!」」」」」
そうしてかつて聖女と呼ばれ慕われた少女は、投石によって傷だらけになったあと隣国にて捨てられてしまいました。そしてザネラスエアルではまもなく新たな聖女が誕生し、グスターヴや国民は状況の回復を確信したのでした。
ですが――。
彼ら愚か者を待っているのは、豊穣ではなく――
4
お気に入りに追加
2,244
あなたにおすすめの小説
初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。
お望み通りに婚約破棄したのに嫌がらせを受けるので、ちょっと行動を起こしてみた。
夢草 蝶
恋愛
婚約破棄をしたのに、元婚約者の浮気相手から嫌がらせを受けている。
流石に疲れてきたある日。
靴箱に入っていた呼び出し状を私は──。
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁 (さるばみ もりしげ)
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
穀潰しの無能は家から出ていけ?いや、この家の収入は全て私が稼いでいるんですけど?
水垣するめ
恋愛
私の名前はサラ・ウィルキンソン。伯爵令嬢だ。
私には両親と二人の兄がいる。
家族四人の仲はとても良かった。
しかし四人とも、私のことを嫌っていた。
ある日のこと。
私はいつも通り部屋で用事をこなしていた。
すると突然、部屋の扉が開かれた。
そして家族四人がゾロゾロと部屋へ入ってくる。
「サラ、無能なお前を家から追放する」
「……は?」
私は何を言われたのか分からなかった。
何故私が追放されなければならないのだろう。
「お前のような穀潰しは家に置くだけでも気分が悪くなるからな。害虫駆除だ、さっさと出ていけ」
「……本当にいいんですね?」
私はため息を吐きながら確認した。
「もちろん。お前なんかいても邪魔なだけだからな」
ジェームズがその太った腹をさすりながら答える。
私はそこで、完全にこの家族を見捨てることにした。
「そうですか。それでは私は失礼します」
私は椅子から立ち上がり、颯爽と部屋から出ていった。
四人はあっさりとしたその様子に唖然としていた。
もしかして私が醜く「追い出さないで!」と懇願すると思ったのだろうか。
まさか。
そんなことをする訳がない。
なぜなら。
私はこの家の財産。
当主の座。
土地。
商会。
その全てを所有しているからだ。
「私を追い出すなら、覚悟しておいてくださいね?」
【完結】あの子の代わり
野村にれ
恋愛
突然、しばらく会っていなかった従姉妹の婚約者と、
婚約するように言われたベルアンジュ・ソアリ。
ソアリ伯爵家は持病を持つ妹・キャリーヌを中心に回っている。
18歳のベルアンジュに婚約者がいないのも、
キャリーヌにいないからという理由だったが、
今回は両親も断ることが出来なかった。
この婚約でベルアンジュの人生は回り始める。
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる