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第13話 新生ランファーズ家の末路 俯瞰視点(2)

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「くそ……!! くそが……!! エミリー……!! リシャールめ……!!」

 6億ビルズの支払いが終わった直後のことでした。新当主ケビーは床を強く踏みつけ、顔を真っ赤にして身体を振るわせていました。

「6億!? どこか真っ当だ!! 法外じゃないか!! アレはともかくとして、コレは納得できん! できるはずがない!! 足元を見やがって……!!」

 エミリーへの所業を黙認していた事実。コレをケビーは――一族全員が、大したことではないと考えていました。

 ――放置していて、時々ちょっと嗤っていたくらいじゃないか――。
 ――それでここまで責められるのはおかしい――。
 ――許せない――。

 そのためこのような感情に溢れていて、怒りをぶちまけていたのです。

「世の中には因果応報という言葉がある……!! エミリー、リシャール、見ていろよ……っ!! 正義を気取って違法に金を奪ったお前らには、必ず天罰が下る!! 俺と同じように――それ以上の目に遭うからな!! 覚悟していろ!!」

 かつて壁にかかっていた絵や壺やシャンデリアや絨毯はなくなり、売却によってもうすぐ離れないといけないお屋敷。すっかり様変わりしてしまった邸内を見回し、目を剥いて呪詛を吐きました。

「絶対だ!! 絶対に天罰は下る!! 楽しみにしていろよ!!」

 そういった理不尽な暴言は、その後20分以上も続く。ケビーはまるで自分が被害者のように叫び続け、ある程度溜飲が下がったら椅子に――椅子はもうないため、仕方なく床に腰を下ろしました。

「…………ま、まあいい。大きなダメージを受けてしまったが、立て直せないレベルではない。ここから立て直し、華々しい人生を歩んでやる」

 形はどうであれ、幼い頃から憧れていた当主になれた。子爵家とはいえ、貴族の一族のトップになれた。
 この地位を使って、幸せな一生を歩んでやる。
 早速ケビーは気分転換にと、ランファーズ家の再生計画を脳内で描き始め――ましたが、呑気にしていられるのは僅か1日だけでした。

「…………お、おい……。どうしたんだ……?」

 予想外が起きたのは、翌日の夕方のことです。突然何の連絡もなしに、弟のジョンがお屋敷にやってきて――


「兄さん……。終わった……。もう、終わりだ……」


 ――ケビーの前で、愕然と崩れ落ちたのでした。
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