上 下
26 / 38

第11話 1つめの因果応報 俯瞰視点(2)

しおりを挟む
「……え? 後ろ……? なんなのだ――………………」
「? なに? どうしたの――…………」
「お父様、お母様……? なにをきゅうに――…………」

 背後から声が聞こえ、まずはロークが振り向き固まる。そんな姿を不思議に思ったリリアンが遅れて振り返り、固まる。その姿を見たマリアンが慌てて振り返り、同じように固まる。
 まるで凍ったかのように身体が硬直して、順番にブルブルと震えだす。突然おかしな反応をし始めた理由は、

「…………お前らは……。マイク……。ロビン……」

 気に入らないからと無実の罪で陥れ、その結果貴族籍を失う羽目になった者。目の前にいたのは、かつて自分たちが人生を滅茶苦茶にした人間――その中の2人だったからです。

「どうして……。ここに……」
「お前らが大失敗をしたって噂を聞いて、行方を探してたんだよ」
「ずっと、あの時の礼をしたかったからなぁ」

 これまでローク達は貴族だったため、なかなか手を出せませんでした。それがあの出来事により地位も財も失ってしまったことで、簡単に手が届くようになっていたのです。

「あの時陥れてくれて、ありがとうな。おかげで俺達は、何遍も地獄を見たゼ」
「突然すべてを失って、あの時は絶望した。諦めたことだって何度もある。でもなあ。そのたびに立ち上がることができたんだよ。お前らのおかげ・・・でな」

 もう死んでしまった方が楽だ。でも……ここで命を絶ってしまったら、自分を陥れた奴らに復讐できない。
 このまま負けてたまるか。どんなに苦しくても生きて、いつか必ず復讐してやる……!!
 そんな思いで地獄のような状況を乗り越え、やがて被害者たちは一か所に集う。ひとりでは無理なことも全員で力を合わせれば達成できると考え、被害者である元貴族6人全員が合流していたのでした。

「お前らのおかげで俺達は信頼を失い、そのせいで貴族界を離れてもまともな仕事に就けなくなっちまった。今のお前らのようにな」
「そのおかげで残飯を漁ったりゴミ箱から服を拾ったり――。屈辱的なことを何十何百回と繰り返したっけなぁ」
「成金共にしっぽ振って、金を恵んでもらったこともあったよなぁ。生きるためとはいえ情けなくて情けなくて、揃って悔し涙を流したもんだが――ははっ。何がどこで役立つか分からないもんだな」
「まったくだ。まさかアレが役に立つだなんて、夢にも思って――ん? なんだ?」

 マイクとロビンがケラケラと笑っていた、そんな時でした。突然――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます

柚木ゆず
恋愛
 ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。  わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?  当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。  でも。  今は、捨てられてよかったと思っています。  だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。

公爵令嬢は父の遺言により誕生日前日に廃嫡されました。

夢見 歩
ファンタジー
日が暮れ月が昇り始める頃、 自分の姿をガラスに写しながら静かに 父の帰りを待つひとりの令嬢がいた。 リリアーヌ・プルメリア。 雪のように白くきめ細かい肌に 紺色で癖のない綺麗な髪を持ち、 ペリドットのような美しい瞳を持つ 公爵家の長女である。 この物語は 望まぬ再婚を強制された公爵家の当主と 長女による生死をかけた大逆転劇である。 ━━━━━━━━━━━━━━━ ⚠︎ 義母と義妹はクズな性格ですが、上には上がいるものです。 ⚠︎ 国をも巻き込んだ超どんでん返しストーリーを作者は狙っています。(初投稿のくせに)

酷い扱いを受けていたと気付いたので黙って家を出たら、家族が大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 ――わたしは、家族に尽くすために生まれてきた存在――。  子爵家の次女ベネディクトは幼い頃から家族にそう思い込まされていて、父と母と姉の幸せのために身を削る日々を送っていました。  ですがひょんなことからベネディクトは『思い込まれている』と気付き、こんな場所に居てはいけないとコッソリお屋敷を去りました。  それによって、ベネディクトは幸せな人生を歩み始めることになり――反対に3人は、不幸に満ちた人生を歩み始めることとなるのでした。

殿下に裏切られたことを感謝しています。だから妹と一緒に幸せになってください。なれるのであれば。

田太 優
恋愛
王子の誕生日パーティーは私を婚約者として正式に発表する場のはずだった。 しかし、事もあろうか王子は妹の嘘を信じて冤罪で私を断罪したのだ。 追い出された私は王家との関係を優先した親からも追い出される。 でも…面倒なことから解放され、私はやっと自分らしく生きられるようになった。

【完結】私から奪っていく妹にさよならを

横居花琉
恋愛
妹のメラニーに物を奪われたジャスミン。 両親はメラニーを可愛がり、ジャスミンに我慢するように言った。 やがて婚約者ができたジャスミンだったが、メラニーは婚約者も奪った。

無能と呼ばれ、婚約破棄されたのでこの国を出ていこうと思います

由香
恋愛
家族に無能と呼ばれ、しまいには妹に婚約者をとられ、婚約破棄された… 私はその時、決意した。 もう我慢できないので国を出ていこうと思います! ━━実は無能ではなく、国にとっては欠かせない存在だったノエル ノエルを失った国はこれから一体どうなっていくのでしょう… 少し変更しました。

聖女の私を追放?ちょうど私も出て行こうとしていたところです

京月
恋愛
トランプ王国で聖女として働いていたリリスをあまりよく思わない王子ガドラ。リリスに濡れ衣を着せ追放を言い渡す。ガドラ「リリス、お前はこの国から追放だ!!」(ドヤ) リリス「ちょうど私もこの国を出ようとしていたところなんですよ」(ニコ) ガドラ「……え?」

冷遇された王妃は自由を望む

空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。 流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。 異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。 夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。 そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。 自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。 [もう、彼に私は必要ないんだ]と 数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。 貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。

処理中です...