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第3話 直後に起きていたこと~驚き~ エミリー視点(2)

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「………………。ありがとう、ございます……。ありがとうございます……。ありがとうございます……」

 わたしをお屋敷から連れ出す準備をしてくれていたこと。大切な作品を売って、そのための費用を捻出してくれていたこと。懸命に当主様や親族の方々を説得をしてくれていたこと。などなど。
 今日に至るまでの出来事を聞いたわたしは、そう繰り返すことしかできなくなっていました。
 リシャールさんにお伝えしたい言葉は、たくさんあります。ですが……浮かんでくる言葉が多すぎて……。感情が、溢れ過ぎて……。
 ありがとうとしか、言えなくなってしまっています。

「どういたしまして、喜んでもらえて嬉しいよ。でもねエミリーさん、作品を手放した件で罪悪感を覚えないでもらいたいんだ。あのことは、嫌な思いをさせるために説明したのではないから」

 突然大金を得るなんておかしい――。説得するために、自分のために相当無茶をしてくれたのでは――。もしかして、危険なことをしたのでは――。
 わたしがあれこれ考えて落ち込んでしまわないように敢えて触れたのだと、リシャールさんは微苦笑を交えて教えてくれました。

「もっとスマートにやれたら、エミリーさんも気にせずに済んだんだけどね。今の僕にはこれが限界で、でも、お金を用意しておいてよかったよ。……エミリーさんが独りで歩いていたということは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、資金が多いに越したことはない、ということだからね」
「? リシャールさん……? 後半、なんて言ったのですか……?」
「なんでもないよ、独り言。ところでエミリーさん。話は変わるけど、あそこにいたということは、妹と両親に追い出されたんだよね?」
「……はい。リシャールさんが先ほど仰られていた、『最悪』が起きました」

 銀杏をあしらったブローチ――おばあ様の最後の形見に興味を持ち、拒否が切っ掛けとなってやがて激昂。マリオンのお願いを聞いたお父様とお母様によって、家族の縁を切られてお屋敷から放り出された。
 つい十数分前に起きた出来事を、細かくお伝えしました。

「自分は何度も暴力を振るっていたくせに、手の甲がちょっと傷付いただけで怒りだすだなんてね。しかも気に食わないから追い出すだなんて、まるで子どもだよ」
「……本当に……。あの人達らしい行動ですよね」
「でもまあ、おかげで交渉なしでエミリーさんを救い出せたんだ。もしこの予想が当たっていたら、マリオン達には感謝しかないね」

 リシャールさんはそう言いながら、後方を――進行方向とは逆の方向を、一瞥しました。
 予想? なんでしょうか……?
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